三角木馬

バブみ道日丿宮組

お題:破天荒な自動車 制限時間:15分

三角木馬

「また随分と変わったデザインの車を描いたね?」

 彼女のディスプレイを覗くと、タイヤのない変わった車が写ってた。

「三角木馬ですよ。知りませんか?」

「いや……知ってるけど」

 車……そう車は、三角木馬だった。

 かつて拷問器具として利用された、いわゆる大人の木馬。

「人が乗れるようにできてるんだから、一般用に解禁してもいいと思うのです」

 ほらと、彼女はいろいろな木馬を見せつける。

「カラーバリエーションと、様々な用途に対応できるよう多機能です」

「人が乗れるようにできてないから、拷問として使われてたんじゃないかな? カラーは……」

 色の違いは意味があるのだろうか?

 青い木馬、赤い木馬、黄色い木馬。どれも同じにしか見えない。

「上下運動、目が光る、馬が雄叫びを上げる。とってもいいと思いませんか?」

 実際に3Dで動かしてみるといって、それをレンダリングする。動きは間違いなく馬だった。ただ……上に乗ってる人は股間とお尻に大ダメージだろう。高速移動するとかくんかくんと木馬の上に設定された人データが動いた。

「だいたい運転できるようなものじゃないよね?」

 何度も言うが三角木馬は乗るために作られたものじゃない。もちろん、運転なんてするようなものでもない。

「この三角の頂点にリモコンがあるんです。そこから身体を動かして操作するんです」

 そういって、レンダリングした木馬から人をどける。

 たしかにそこにはゲームのコントローラーでよく見る十字のボタンがある。木馬の側面には足を置くところがある。おそらくそこがアクセル、ブレーキ。

「画期的な車です!」

 笑顔の彼女に悪気はない。

 彼女は昔から自分がいいと思ったことは悪いものであっても取り入れる癖があった。

「これ、提出したりしないよね?」

 学校の課題は、斬新的な車というテーマ。

「ん? もう提出したけど」

 これはまた……僕が呼ばれて怒られるんだろうなぁ。

 せめて……、せめてと、

「普通の車のデザインも見てみたいな」

「うーん、あんまいいものじゃないよ?」

 そういって違うファイルを開くと、かっこいいデザインの車が画面に写る。

「おぉー。いいじゃん。これも提出しておこうよ」

「えぇー、木馬が一番いいから送ったのに、これ送っちゃ意味ないじゃん」

 そりゃ彼女にとってはそうだろうが、教員からしたらたまったもんじゃない。

「君のデザインはどれもいいから、きっといいことになるよ」

 そうかなと彼女は頬をかくと、わかったといってファイルを送信した。

 これで僕のおしかりも多少は減るだろう。

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三角木馬 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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