まぼろし

バブみ道日丿宮組

お題:無意識の暗殺者 制限時間:15分

まぼろし

 しんしんと雪が舞い散ってる空は、どこか異世界のように感じた。

「……今日は学生さんが多いな」

 駅前の交差点は学校帰りの学生が多かった。

 きこえてくるのはきゃっきゃうふふの青春劇。

 わたしも、学校に通ってたら……こうなってたのだろうか?

 学生の一人に自分をトレースして、脳内で動かしてみる。

 楽しそうに笑う自分たちの姿ができた。

「……いいなぁ」

 そんな世界で生きていけたのならば、きっと楽しいことがいっぱいだった。

「……ん」

 信号が変わり、周りの学生たちは次々と駅の中へと入ってく。

 わたしはその様子を横断道路を渡らず観察した。

 対象となる男子生徒はいなかった。仮にいたとして、今のわたしじゃどうすることもできない。

 ランクD。

 それが国から認定されたわたしの能力者としての評価。

 マーキングーー相手にGPSを投げつけて行動を監視するという地味な能力だ。

 とはいえ、仕事は多い。

 見知らぬ誰かであったとしても、なにかしらの犯罪に携わってる人は多い。その彼らすべてを関しできれば、かなりの数の犯罪を抑えることができる。

 それがこの国が能力者を集めて、作った裏組織。なんとも嘘くさい感じのものだ。

 ただ、報告した人間の反応がなくなってることからして、殺されたり、拷問を受けるなりの対処は受けてるんだというのはわかってる。

 それは間接的な殺人ともいえる。

 

 殺すから、対象をマークしろ。


 そんなことは当然いわれてない。

 いわれてることは、相手を見つけ次第観察しろ、ということ。

 柔らかい言い方が、時として精神をいたぶる。

 

 お前が能力を使えば、死人がでるんだ。殺す準備はできてるんだ。あとは場所さえ誘導してしまえば、なんにでもなってしまう。

 

 あぁ嫌な考えだ。

 こんなことをするために学校を辞めさせられたと思うと、ほんと酷い。

 

 いつまでも、いつまでも、わたしは平和でいたい。

 だから、対象を見つけ、マーキングを疑いもなく発動させる。

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まぼろし バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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