14、お帰り

GM:冒険者たちは、ディガッド山脈を下り、ハーヴェス王国の門をくぐる。門番が君達のことを見ると慌ただしく動き出し、何やら報告に行っただろうことがわかる。そのおかげか、〈青空の船出亭 ブルーノーズ〉に着いたときには既に、ロレーナが応接室で待っているという状態になっていた。


イヴ:一人露骨にテンション低いやつが居ます。


エリック:二日酔いが……。


GM:ロレーナは、甲冑越しでもわかりそうなほどに嬉し気に君達を迎える……が、一人沈んでいるイヴを見ると、大丈夫か……? というような顔で見はするものの、事情は聞かず。


ベルジ:聞かなくていいです(笑) 「黄金の兜のデュラハン自体は討伐しました。結果的にデュラハンはアンデッドで、蛮族ではありませんでした」という話と、……デュラハンの正体は、近衛兵の魔法剣士の遺体だったことを伝えよう。ダイケホーンからまた遺体が輸送されてくるだろうということも。弓使いに関しては、スケルトンアーチャーとして作り替えられていたから、遺骨になるけれど。


エリック:「これがその、デュラハンの被っていた黄金の兜だ」持って帰ってきたものをロレーナに渡そう。「奈落の魔域シャロウアビスが発生したという報告は、既に聞いてるか?」


GM:「ああ、ダイケホーンの方から。しかし、奈落の魔域シャロウアビスが現れたとなれば、冒険者に依頼を出さなくては。あるいは、我々の手に余るものでなければいいが……」そこまで呟いて、はっとしたように背筋を正した後、「まず、ありがとう。私たちの手が回らぬ仕事を解決してくれたこと、有難く思う。本来なら、ハーヴェス王との謁見の機会を設け、其処で報酬を渡すものなのだが……」何やら苦々しい言い方をした、と思うと、応接室の扉が勢いよく開け放たれ、誰もが知っている顔が飛び込んで来た!


ナタリー:うわー!


イヴ:ま、まさか……!


GM:「ご苦労! このヴァイス・ハーヴェスが手ずから報酬を与えよう!」


ナタリー:なんだこのフリーダム国王!


エリック:思わず「マジかよ……」って口に出すよそんなの!


ナタリー:「やば……」


イヴ:「ぶっ飛んでるね」


ヨル:思わずびっくり顔。


ベルジ:「うわ本物だ! 本物の王様だ! こんな距離で見るの初めてだ~!」


GM:そんな反応にフフンと嬉しそうにしながら、「よくぞやった勇者たち、望みの金額を述べよ」……とは言うんだけれど、ヴァイス・ハーヴェスは片手に、お金が入ってるんだろうなあという具合の袋を抱えている。


エリック:そんな雑なことある?


ベルジ:望みの金額とか言われたら、顔しわしわにして「こまるよー!!」


イヴ:王の前で酔っ払いやってられないから、頑張って顔をきりっとさせました。


GM:ヴァイス・ハーヴェス、『早く言わんか』みたいな顔してるんだけど……ええと、そうだな。ヨルかな。ロレーナがヨルの傍に寄ってって、こそこそっと、「恐らく20000ガメルほど用意しているから、その金額をぴったり言ってやってくれないか」


ヨル:ちょっと戸惑ってから、「……20000ガメルほど、あれば……」


ナタリー:空気を読んだ(笑)


GM:「中々殊勝な心掛けだ」と言いつつ、ヨルの方に寄って行って、貨幣袋を押し付けます。ずしっ。


ヨル:俺が受け取っていいのか……? って顔で他のメンバーを見ている。


ナタリー:可哀相に。(他人事)


エリック:20000ガメルだったかー。


イヴ:20000ガメルはわからん。


ベルジ:なんで王様来てるんだよーしおしお。


ヨル:俺でよさそうだな……。


GM:「さて、お前達。早速だが名前を名乗ってくれるか。特技なんかも、言ってくれれば覚えやすくあるが」


ベルジ:身体がでかいのでちゃんと片膝をついて、すーっと息を吸い込んでから、「……賢神キルヒアの敬虔なる信徒にして、イヴの養子、『ベルジ』と申します。18で未だ成人は過ぎて居りませんが、仲間たちに日々教訓を与えられながら精進しております。……此方の大楯、グレートウォールというものでして! こちらでこう、魔物の攻撃を受け止めてやるのが僕の役目であります!」


GM:「ふむ、ベルジか。其方は?」


イヴ:「今この子……あー、彼から、紹介がありましたが。イヴ……本名を、エーヴ・クリフォード・フルノーといいます。皆には、呼びやすいようにイヴと呼んでもらっています。特技は、……そうですね。魔導機を扱うエルフは私くらいかと思います。一番得意なのは、ナイフを差し込んでブラスト。ダガーブラストが一番得意です」


ベルジ:そんな名乗り方ある?


イヴ:これ以上のことは言えないです。もう足が……。


ヨル:そういえばこの人、二日酔いのまま下山してたんだったな……。


エリック:「名をエリック、見ての通りのリカントです。生まれはこの辺のすぐそこでして、日頃より、閣下のご活躍は耳にしております。リカントという種族がここまでなじめているのは、閣下の政治の賜物でありましょう。得意技は……際立った特技はないもので、手数でそれを人並みに保っているというようなものですね。こいつら4人とも凄いんで、置いてかれないように頑張ってます。へへ」


ナタリー:「私はナタリーと言います。みんなからは一応、ネティと呼ばれております。しがない森林管理人の娘でしたが、思う所があり冒険者をさせていただいております。私に出来る事といえば、この弓を用いて生きるくらいで……。やはり、敵を射抜いてこそ弓使いです」


ヨル:帽子を脱いで、胸に当てる。「……ヨルと申します。見ての通り、ナイトメアの魔法戦士です」


GM:そこで一度話を切るのなら、ヴァイス・ハーヴェスは、「種族の差か。つまらんな。なあ、ロレーナ?」と。ロレーナが視線を受けて兜を外すと、彼女の額には2つの角が生えている。


ヨル:少し驚いた顔をして其方を見る。


GM:冒険者たちが角を見たのを確認すれば、ロレーナはまた兜を被ってしまう。


ヨル:「……これまでは、定住地を持たぬ流れの身であったが、ご用命とあらば、いつでも承りたい」


GM:「ふむ……ベルジ、イヴ、エリック、ネティ、ヨル。覚えた。ああ、覚えたぞ」と頷き、ヴァイス・ハーヴェスは冒険者に背中を向ける。それから……当社比一番格好いい声で、「お前たちを頼ろう。お前たちもまた、必要な時には遠慮なく俺を頼るといい。ハーヴェス王国の有事に……無論、そんな日が無いに越したことはないが、お前たちが英雄となっていることを期待する」……それだけ一方的に言い残して、ハーヴェス王は応接室を出て行く。


イヴ:若い王って感じだな~!


ベルジ:「なんか強そうだね」


ナタリー:「そりゃ、王様だもの……」


ヨル:帽子を被り直しておこう。


GM:ハーヴェス王が出て行ったのを確認すると、ロレーナが改めて敬礼の型を取り、「いつかと言わず、もしかしたら、奈落の魔域シャロウアビスの対策の際もお前たちの力を借りるかもしれない。近衛隊と協力することがあれば、よろしく頼む」


イヴ:ええやん。


ベルジ:「任せて!」


エリック:あまりのビッグネームに唖然としてたけど、ここらで正気を取り戻して、「あ、勿論、お声がけいただければ」


GM:ロレーナは去る前、ヨルに対して一言残していく。「穢れ程度の事、気にする必要は無い。少なくとも彼が、この国の上に立っている限りは」


ヨル:「エリックさん、イヴさん、ナタリーさん、ベルジ。……これから、よろしく頼む。宜しく、おねがい、します」


ベルジ:「これから『も』でしょ?」


ヨル:「嗚呼」


ナタリー:「これからも、よろしくね」


エリック:「今更種族とか身分がどうとかっていう奴はいないでしょ?」


ベルジ:「そうだよ? 種族のことなんて言ったら僕は、リルドラケンのエルフだよ?」


エリック:「……イヴ」


イヴ:「これはもうね、何言ってもやめないから」


ベルジ:「あ! ねえ、折角正式に5人パーティーになったならさ。やることがあるよね?」


ヨル:「やること」


ナタリー:「あら? 何かあったかしら……」


ベルジ:「ふふん! パーティーの名前、決めなきゃ!」




 奈落の魔域シャロウアビスは拡大しつつあるが、今すぐの危険という訳ではない。

 このダンジョンが人族に牙を剝いたとき、立ち向かうのは、成長した彼等かもしれない。


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ソード・ワールド2.5リプレイ 出目弱者達の【金頭闊歩】 篝火の翁 @takeustake

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