10.5、ネティ先生のシャロウアビス講座

 皆、奈落ってわかる?

 そう! このアルフレイム大陸の北部にある、異界へ続く穴のこと。


 今から大体3000年前、魔神召喚の儀式が失敗して、この穴が出来てしまったと言われているわ。


「3000年前……って言うと、何時代だ?」


 魔法文明時代の末期、つまりは、コンジャラーやソーサラーの魔法が出来た時代ね。

 このもう一つ後の時代に、悪しきマギテック技能が開発されるんだけれど……。


「先生! それは先生の私怨です!」


 冗談よ、ふふふ。

 まあ、この辺りは教科書ルールブックで復習しておいてね。


 この儀式の失敗によって出来てしまった奈落からは、強力な魔神が絶えず現れて、アルフレイム大陸を恐怖に陥れたそうなの。

 魔神っていうのは異界から現れる者達の総称で、この世界の人々とは価値観の根本から違うから、わかり合うことは出来ないのよ。


 そんな魔神が沢山出て来ちゃ大変、ってことで、その時代にいた『魔法王』と呼ばれる存在が、高さ100mを超える大きな壁を作って、奈落を閉じ込めた。

 この壁は、今は、奈落の壁ウォールオブジアビスと呼ばれているわ。


 (これが、ソードワールド2.5の舞台、アルフレイム大陸の一番大きな特徴でもあるわね)


「成程……奈落の壁のそばって、やっぱり危ないの? エルフの里に戻る前に、見に行きたいと思ってたんだけど」


 ええ、だから、とても強い”壁のウォール守人ガーディアン”が、頑張って壁を守ってくれているわ。

 もし奈落から魔神が出てきた時に、すぐ対処出来るようにね。


「格好いい! すごいね!」


 そうね。

 私達、アルフレイムの冒険者の元になったのも、この壁の守人の存在だと言われているの。

 冒険者ギルドの本部も、この近くにあった筈よ。


「ふむ。……ならば、安心出来るか」


 けれど、そうも行かないの。

 大きな奈落は壁と結界によって封じ込められているけれど、アルフレイム大陸の各地に、奈落の飛び地のようなものが出来てしまうことがあるのよ。


 飛び地として出来る小さな奈落……それが、奈落の魔域シャロウアビス


 アールくんが『オーロラを見た』って言っていたでしょう?

 あれは、奈落の魔域が現れた時に、それを示すように空に浮かび上がるものなの。

 

「あ、僕知ってるよ! 北の空にオーロラが浮かび上がって、其処からオーロラが空を走って行って、奈落の魔域シャロウアビスを示すんだって。ハルーラ様が教えてくれてるんだって、神官様が言ってた!」


 そうね、オーロラが奈落の魔域シャロウアビスを示すのは、導きの星神ハルーラの啓示だと言われているわ。

 

「ネティ先生! ってどんなところなの?」


 ええと、なんていうか……黒くてまんまるよ。


「くろくてまんまる」


 そう、外から見ると、黒い球体にしか見えないの。

 中に入ると広い空間があって……つまり、そう、ダンジョン化しているわ。


 放っておくと奈落の魔域シャロウアビスはどんどん大きくなって、ダンジョンを守るために、強力な魔神を呼び出したりするから、早急に対処しないといけないのよ。

 だから、今回奈落の魔域シャロウアビスを見付けたら、私達の手に負えそうなら解決しないといけないし、もし難しいようなら、ハーヴェス王国に情報を持ち帰って、冒険者に依頼する必要があるわ。


 けれど、黄金兜についての情報を手に入れて、解決してこないと、入国も許されなさそうだから、その……。


 ハーヴェス王国に帰れるように、頑張りましょうね!


「はーい!!」

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