第45話 ボーンラビットを切りつけた結果

 「はい。二人ともEランクに到達です。Eランクからは討伐がありますから是非こなしてくださいね。冒険者の仕事はあくまでもモンスターの討伐がメインですので」

 「「………」」


 エストキラは、曖昧にうなずいた。


 ”やっぱり避けられないか”


 翌日、森へ行った時にいっぺんに採取し依頼をこなして、あっという間にEランクに上がった。

 二人は、とぼとぼと掲示板へと向かう。あの男の視線を感じたが無視した。

 Fランクの横にEランク用の掲示板がある。


 「……ボーンラビットだっけ。ここら辺で一番弱いの」

 「狩るつもり?」

 「いつかはやらないといけないみたいだからさ。リナは、採取にしておいて」

 「うん……」


 二人はそれぞれ依頼を請け負う。


 ”というよりは、狩りをしないとごはんを食べられない。モンスターのお肉は食べたくないけど、芋ばっかりじゃ味気ない”


 村にいた時は普通だった事が、普通ではなくなってしまったエストキラは、他の物が食べたかった。


 ”贅沢になったかも……でも昨日、食堂でおいしそうな匂いを嗅いだから食べたくて仕方がない”


 「リナ、街を出たらすぐボードで飛ぶよ」

 「うん」


 あの男がついてきていた。


 『私が懲らしめてやろうか?』

 「いや、いい」


 ”そんな事したら大変な事になる可能性があるから出来るだけ事を起こしたくない”


 エストキラは、べりっと木の皮をボードからはがすと地面に置いて乗り、リナも慌てて乗るとすぐに発進させる。


 「フライ」

 「な、何!?」


 持っていなかったのに急に現れたボードに乗って逃げていく二人に男は、驚き見上げていた。


 「どこに隠していやがった」


 二人は悔しがる男を見下ろし、森へと向かう。

 少し開けた場所で二人は降りた。


 「ここら辺にいると思うんだけど」


 ブロードソードを手にエストキラは、辺りを見渡す。


 「ねえ、大丈夫なの?」

 「たぶん。この安い武器でも倒せるモンスターらしいから」


 ”当てられればね”


 がさ。

 何か白い物体がうごめいている。


 「何かいるわ」

 「あれかも」


 白い物体からは、一本の角が見えた。


 「てい!」


 ブロードソードを両手に持ち振り下ろす。気配に気が付いたボーンラビットが、エストキラに飛びかかろうとするもソードが当たる方が早かった。


 「きゃー!!」


 リナの悲鳴が響き渡る。


 「う……」


 エストキラが、目の前のボーンラビットから目をそらした。

 攻撃力が上がったブロードソードは、ボーンラビットの首をはねたのだ。

 討伐は、倒した証として体の一部を持ち帰る事になっている。ボーンラビットの場合は、特徴的な角だ。だがエストキラは、さわれる気がしない。


 ”どうしよう。討伐はなんとかなりそうだけど、直視できない……”


 スパーン。

 見かねたアルが、角を切り離した。


 『角を拾うぐらいはできるだろう?』

 「ありがとう、アル」


 頭から切り離された角を拾うと、結構ずっしりと重い。

 がさがさ。

 エストキラは、草むらをかき分ける音に身構える。


 「やっぱりいた」


 草をかき分けて現れたのは、水色の髪の男。エストキラ達と同年代ぐらいで、大きく見開いが水色の瞳が辺りを見渡している。


 ”居たって、この人誰?”


 エストキラがリナに振り返り知ってると目くばせをすると、知らないと軽く頭を振った。


 「あれ? さっき女性の悲鳴聞こえなかった?」


 男は、目の前に女性のリナがいるのにもかかわらず、そう言ってエストキラ達に同意を求めている。


 「うん。そうだね……」

 「あ、ごめん。脅かしちゃった? ジャーデンって言うんだ。君は?」

 「え?」


 ”会ったら普通は、こういう風に名前を言い合うの? うーん。無視するのも印象が悪いかな?”


 「僕の事は、キラって呼んで」


 リナはキラと呼んでいるし、本当の名前は教えられないし、偽の名前は呼ばれ慣れていない。


 「そう。で、君達兄弟?」

 「うん。まあ……血は繋がってないけどね」


 設定上姉弟になっているが名前で呼び合っているので、そういう事にした。


 「あのさ、君のお兄さん、俺の事凄い睨んでるんだけど」


 ジャーデンが、エストキラに近づきボソッと耳打ちする。


 ”お兄さん?”


 チラッとエストキラがリナに振り向けば、アルを抱きじーっと怯えた顔つきでこっちを見ていた。こわばっていたので、睨んでいる様に見えたようだ。


 ”うーん。リナが男に見える事はいいけど、僕が弟に見えるんだね。まあ背低いし……”


 「あれ? 俺、なんか変な事言っちゃった? って、首はねたの? すげーな」


 足元に転がるボーンラビットの死体を見てジャーデンが驚く。


 「えーと、初めてだったから力加減がわからなくて……」

 「え? 初めて? じゃもしかしてEランク? 俺も俺も」


 嬉しそうにジャーデンが自分自身を指さし言った。


 ”っげ。出来るだけ他の人と関わらない様にしようと思っていたのに、同じランクなの?”


 人懐っこそうなジャーデンに戸惑うエストキラだった。

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