第43話 一日の稼ぎ

 「スキルカルクナレ、スキルカイフク、ペーストセイノウアップ」


 エストキラは、先程と同じように指を重ね魔法陣を構成していく。


 「……エンド」


 ”よし。これ使いたかったんだよね”


 *性能+10/性能が100%アップされる。(マスター効果/一度のみ)

  発動条件:対象に触れながら『ペーストセイノウアップ』と発する


 ”今までのオプションって、1だと1%だったけど、これは1で10%みたいだし。100%アップって事はたぶん倍って事だよね? これを武器に付ければって思っていたんだ。それがさらに5倍になっていれば弱い武器でも強くなるよね?”


 エストキラは、さっそく腰にぶら下げているブロードソードの柄頭に貼り付けた。そして、ソードを抜いて掲げる。


 ”うん。凄く軽くなった。まだ使った事がないからどれくらい強くなったかが、体感できないけどね”


 「それってソード? ところでそれキラに扱えるの?」

 「え……使った事なんてないよ。手にしたのも初めて」

 「大丈夫?」

 「……大丈夫って聞かれても」


 そもそもモンスターでさえ一度しか目にした事がない。


 ”あんなモンスターばかりだと、武器の強さ云々の前に攻撃する前に攻撃されて死んじゃうだろうなぁ”


 「ねえ、アル。モンスターってでっかいのしかいないの?」

 『いや小さいのもいる。それよりモンスターすら知らないのに戦うつもりなのか』

 「うーん。いずれはそうなる可能性があるかなと」

 「私は嫌だわ。できればずっと、薬草摘みをしたい」

 「うん。そうだね」


 ”数をこなせれば、それだけでも暮らしていけそうだけど、あの仕組みだと厳しいかも”


 「じゃ、そういう事で本を見て探そう」


 エストキラが言うと、うんとリナが頷いた。

 二人は、アールの枯れ草を本から探し出す。


 アールの枯れ草:森の至る所に生息する。枯れ草という名だが、枯れ草ではなく枯れた様に見える事からそう名前がついた。


 解説と共にイラストも描かれていた。


 「至る所と言われてもわかるかしら」

 「うーん。イラストと同じようなのを探すしかないよね」


 二人は、草をかき分け探す。


 「あった。これじゃないかな?」

 「そうね」


 二人は、にっこり微笑み合ってアールの枯れ草を摘む。

 アルも探し、ここだと教えてくれて作業ははかどった。


 「ふう。じゃ冒険者協会に戻ろうか」

 「そうね……」


 リナは少し躊躇したが、街に入れば何もしてこないだろうと、街まで警戒して行く。もうフードはかぶらず堂々として、検問をパス。


 「ふう。緊張したわ」

 「でもこれで、バレる事はなさそうだね」

 「アルのおかげだわ」


 抱きしめていたアルにリナは頬ずりをする。


 『だから頬ずりをするではない』


 小さくなっている為、その声はリナには聞こえていない。


 「っぷ」

 「何よ」

 「別に」


 ”リナにかかるとアルも僕と一緒だね”


 リナには勝てない。

 二人は、冒険者協会に入った。あの男はいない。ほっと安堵して受付に行き、アールの枯れ草を置いた。


 「ではここに置いて」


 エストキラがカードを置くと、


 ポイント:10

 所持金:銅貨9枚


 と表示された。


 リナは、ポイント15、所持金銅貨14枚。

 二人は、お金を稼ぐ為また掲示板へと向かう。

 エストキラが、また同じ板にカードを付けた。


 ”あれ? 依頼を受けれない?”


 依頼を受けるとカードに依頼内容が表示されていたのが、何も表示されていない。


 「おかしいわ。依頼が受けられない」

 「リナも?」

 『もしかしたら連続して同じモノを受けられないのではないか? 交換して受けてみたらどうだ』

 「なるほど」


 アルの助言でエストキラは、リナがさっき受けた依頼にカードを付けると、受注する事ができた。


 採取:アールの枯れ草15本


 とカードに表示され、安堵する。


 「もしかして、同じのはできない仕組み?」

 「そうみたい。やっぱり手引きは読まないとダメみたいだね」


 リナもエストキラが受けていたクエストを受けた。


 ”気が沈むから手引きは読みたくなんだけどなぁ”


 とりあえずは、お金を稼ごうと依頼を交互に受け、夕方まで頑張る事にする。

 本当は、お昼も食べたいがお金がないので、夕飯までがまんする事にした。

 普通の食堂で食べればいいが、そんな事をしていたらあっという間に手元のお金がなくなってしまう。

 そして、日が暮れてきたので今日は終了となった。


 それぞれ、50ポイント、銅貨46枚稼いだ。


 「一日でこれだけなんて、私達生きていけるのかしら?」

 「……み、みんな生きていけてるみたいだから、だ、大丈夫じゃないかな」


 なんとも言えない不安が二人を襲うのだった。

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