第22話 見えた希望
「おぉ、ただいま」
にんまりとしてガントが戻って来た。
ケースを箱にセットする。その後ろにエストキラはムッとした顔つきで立っていた。
「な、なんだ。どうした?」
「どうしたじゃないです。今日はもう叩けないってどうしてですか!」
「さっき説明しただろう」
「そうじゃなくて、2回しかたたけないなら銅貨200枚にしかならないんですけど! というかこれなら最初の200個で銅貨400枚の方がはるかにいいんですけど!」
「……あはは。そう、怒るなって。1回換金するごとに金貨10枚でどうだ? もちろん叩いた分とは別にだ」
”うーん。銀貨30枚で売っていたのに金貨10なの?”
「少なくない? 鉱石って銀貨30枚で売っているよね?」
「お前、見に行ったのかよ。変な事言うなとは思っていたが。あのな、それは売値」
「売値?」
「……そんな事も知らないのか。はぁ……。売値と仕入れ値とあるんだ。いいか。仕入れ値とは、その商品を仕入れた時の値段だ。その仕入れ値と売値が同じだと儲からないだろう」
そうだなとエストキラは頷く。
「で、錬金術協会にしてみれば、俺が売っている鉱石は仕入れている事になるから俺が手にするのは仕入れ値だ。わかるか?」
「な、なんとなく」
「つまり店で見た値段よりずっと少ないって事だ」
「あ、そっか」
「で、そのお金から金貨10枚を分け前として……給金として渡すと言っている。どうだ?」
「それならそれで!」
エストキラは、初めてそういう仕組みだとわかったのだ。
「じゃ、契約に追加するからよろしくな」
「はい」
ガントが新しく追加した契約書を見せる。
〇雇い主は、従業員にケース一回分の作業のつき金貨10枚を給金として支払う。
「「契約します」」
ここに追加の契約が成立した。
「それじゃさっそく、今日の分を支払うな。金貨20枚と銅貨200枚な」
「ありがとうございます」
「俺はいったん、会社に戻るがどうする? ここであのボードの練習でもしているか?」
「あ、そうだった。そうします」
「じゃ、ちゃんとカギかけていい時間帯になったら戻って来いよ。それとこれ」
ぽんとガントが、エストキラに本を渡す。
「これって?」
「やるよ。興味あるんだろう? 色んな魔法陣が載っている。基本から特殊のまでな。好きなら見るだけでも楽しいだろう?」
「……ありがとうございます」
「うんじゃ。夕飯時な」
ガントは、そう言って、スキップでしそうなぐらい機嫌よく出て行った。
”やってみたいと思っただけで好きとかではないんだけどなぁ”
しかし、興味はある。貰った『魔法陣のあれこれ』を読む事にした。
自分が買った魔法陣の基礎よりも色々と詳しく書いてあり、なんと『オプション』でも代替え可能と書いてあるではないか!
「うそ……オプションが使える!」
稀につくオプションを活かそうというものではあったが、魔法陣の描き方でそれが可能なのをエストキラは知った。そして知れば、やってみたくなるもの。
”オプションを複数付与する必要性があるよね。これはレベル上げをして、マスタースキルにかけるしかない”
意気揚々とエストキラは、両手を魔道具につけ詠唱を始めた。
そして、2時間ほどたったころやっとレベルがあがったのだ。
――オプションがレベル9になりました
――マスターがレベル9になりました
”つ、疲れた。段々上げづらくなってきたなぁ”
*マスター
*レベル9:スキル発動消費MPを1にする。また経験値を2倍獲得。アブソープションを取得(レベルアップ時、MP全回復)。成功率+5%。ダブルを取得(両手それぞれ違う対象に限り一緒に発動させる事ができる)。ダブルその2を取得(対象の上に右手を乗せその上に左手を乗せると効果が5倍になる)。鑑定を取得(オプションが付いているモノがわかるようになり、触れて鑑定と唱えればオプションを判別できる)。効果を10倍にする。回収を取得(鑑定したオプションに限り、回収と唱えれば回収し保存できる)。
次のレベルまで:オプションがレベルアップ時に一緒にレベルアップする。
”うん? 回収して保存って何?”
エストキラは、辺りを見渡して近くで光っている魔道具に触れた。
「鑑定」
《動作-3》動作が3%ゆっくりになる。
「回収」
――動作-3を回収しました
「すご! え? どうなったの?」
*オプション
消費MP:1(マスター効果)
装備全般に有効
成功率:60%(マスター効果)
オプションが付いているモノは上書きになる。
*レベル9:素早さ+1/重さ-1/衝撃吸収+1/命中+1/回復+1/柔らかさ+1/硬さ+1/大きさ+1/大きさ-1
*回収:動作-3(マスター効果/使用不可)
次のレベルまで:0P/15000P
成功時4P、失敗時2P(マスター効果)
使用不可って。回収した意味ないじゃないか。
がっくしと肩を落とすエストキラだった。
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