第14話 もう一つの分解魔道具
「なあ、もう一つのスキルってなんだ?」
からあげを頬張りガントが聞いた。エストキラが嫌そうな顔つきになる。
「いや、普通は聞かないんだけどな。MP1で使えるならどんなスキルでも役に立つ気がしてな」
「……オプション」
「うん?」
あまりの小さな声にガントは聞き直す。
「オ、オプションです」
「オプションって言ったのか?」
そうだと、エストキラは頷く。
「うーん。聞かないスキルだな。まあ使われないスキルなら仕方がないか。もうこれ以上は検索しねぇよ。何かあっても紹介だからな」
自分は責任を負わなくていいのだからというガントだが、バカにされなかったのが嬉しくなった。
「あの実は、今日1レベル上がったんです」
「おぉ、さすが消費量MP1だな」
「はい。しかも3000超えました」
「はぁ? 超えた?」
「はい」
「嘘だろう?」
「本当です。ほら」
見せた水晶玉を食い入るようにガントは見る。そこには3050と表示されていた。
「本当に1レベルか? あ、二つのスキルともレベルを上げたのか?」
本当かと問われうんと頷くエストキラ。二つとも上げたのかと問われ、少し考えてからまた頷いた。連携して上がるのだから二つともになる。
「うーん。二つ上げたとしてもそんなに上がるのか?」
ガントはぶつぶつと言いながら、グラタンを平らげた。
普通は、レベル3ぐらいまでは上げやすいが、それ以降ぐーんと上げづらくなる。MP消費が1なので、数をこなせばすぐにレベルを上げる事も可能だと思うが、一回に上がるMP量が半端なかったのだ。
1レベル上がっても300~400程度しかMPは増えないのに、1000以上一気に上がれば驚くのも無理がない。
「よし、明日、宜しく頼むな」
「あ、はい。でも別に3000まで上げなくてもMP1しか使わないから、凄い数こなせると思うんですけど……」
最初に言われた200個のノルマから比べれば、前のままでも9倍くらいこなせるのだ。
「あ、そっか。そうじゃなくてな。明日、ちょっと試してほしい事があるんだ。消費MP3000というとんでもない魔道具あるのだが、それでも消費MP1なのか試してほしいんだ」
エストキラは、それを聞き目を丸くする。
「普通は、枯渇すれば昏倒するだけだが、消費が大きい魔道具を使った場合にMPが足りなかったらかなり体にダメージがあるんだ。だから3000以上ほしかったって事だ。まあ一気に3000も減ればへなへなだろうけどな」
”そんな凄い魔道具もあるのか。一体何をする魔道具なんだろう”
エストキラには、見るものすべてが物珍しいものばかりだった。食べ物も村では食べられないものばかり。
”お母さんやお父さんにも食べさせてあげたいなぁ”
きっと喜ぶだろうなぁと想像するだけで、顔がほころぶ。
その夜は、寝泊りしていいと言っていた部屋で毛布を借りて包まり寝たのだった。
◇
「さあ乗れ」
鉄の板に棒がついた不思議な乗り物に乗れと言われ、エストキラは目をぱちくりとする。
「これなんですか?」
「本来は重たい物を運ぶ台車だ。車はついてないけどな。これも魔道具で、少し浮く事によって重さを感じる事無く運べるってわけだ」
「へえ」
立って乗るのには恐ろしく座って乗った。
ガントは、エストキラを乗せなんと門の外へ出た。そして外壁伝いにしばらく行くと建物が見えそこの前で止まったのだ。
「ここって?」
「ここは倉庫だ。土地代は取られないがモンスターに壊されても何も保証されないがな」
「え……」
「まあどうせ分解する魔道具が置いてあるだけだ」
そういうと何か光る石の様な物を扉の前にかざすとかちゃんと音がした。
ロックを解除したようだ。
「ほれ、見ろ。魔道具の山を」
がらがらと言いながら開いた扉から見えたのは、数えきれないほどの魔道具。それがずっと奥まであった。
「これ、全部鉱石に戻すやつですか?」
凄すぎると魔道具の山を見上げる。
「まあな。でもこれ、全部が壊れているわけじゃない。新しいのがでていらなくなったものが半分以上だ」
「それって使えるのが半分以上って事ですか?」
「そうだ。使い勝手が悪いから捨てるっていうのもあるな。さて、こっちだ」
ちょっと奥に行くと、大きな四角い箱があった。高さは背丈ほどで広さは2メール四方もある。
「何これ……」
「これが分解の魔道具だ。これとセットだ」
「え~」
”でかすぎだよ~”
大きな大きなハンマーがセットだった。
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