第13話 苦いのは苦手です

 がらがらがら。


 「よしっと」


 鉱石を缶に入れ、ぱんぱんと手を叩き汚れを払う。


 「大丈夫か……」


 音に気付きドアを開けたガントが、ジッとある一点を見つめ固まった。


 「おい、魔道具をどうした?」

 「え? 全部、鉱石に変えましたけど?」

 「……はぁ? どうやって?」

 「どうやってって。言われた通りハンマーで叩いて」

 「そうじゃなくて、MPの回復はどうしたと聞いているんだ!」


 凄く驚かれて質問された意図がわかり、エストキラはあぁそれねと頷く。


 「実は僕、スキルを使うのに消費MP1でいいとうスキルを持っていて……」


 ぽりぽりと頭をかきながら回答すると、ガントはさらに驚きをみせた。


 「そんな事さっきは言ってなかっただろう」

 「え? それは、これにも有効だと思わなくて、すみません」

 「ちょっと待ってろ」

 「はい」


 ガントは踵を返しいなくなってしまう。


 ”怒らせた!? 僕、首?”


 「ごめんなさい!」


 戻って来たガントにエストキラはがばっと頭を下げて謝った。


 「別に怒ってない。これを取りに行っただけだ、ほれ」


 そう言ってエストキラは小瓶を手渡される。それは、薄い紫色をしていた。


 「これは?」

 「MPを回復するポーションだ。一番安価なやつだが1000回復する。それを飲んでMPを回復させろ」

 「え? これを飲むの?」


 エストキラは、怪しげな色にとても嫌そうな顔をする。


 「ちょっと苦いだけだ。全回復のは凄く苦いぞ」

 「わ、わかりました。それでまた魔道具を魔石に変えればいいんですね」

 

 ”なんて親切なんだ。ただでくれるなて”


 「いや違う。スキルのレベル上げをして、最大MPを増やせ。何日かかってもいいから3000以上まで増やしてくれ」

 「え? またスキル上げをするの?」


 ガントは、エストキラがレベル上げをしたばかりとは知らない。


 「いいか。最低ラインが1000なだけであって普通は、そんな少量のMPでは仕事にならないから雇わない。ここの仕事は、別に少なくても出来るからそれで募集をかけているだけだ」

 「………」


 ”そうだったんだ。でもいきなり3000って……。まあ2レベル上げれば3000いくかもだけど”


 「回復薬はここに置いておくから枯渇しそうになったら飲め。あ、それはまず飲めよ。ちょっくら出かけて来る」


 ことん。

 5つほど回復薬を床に置き、返事も聞かずにガントは出て行った。


 「え……本気なんだ」


 仕方がないと言われた通りビンの蓋を開け、一気に飲み干す。


 「にが~~~」


 涙目になるエストキラだった。


 ”絶対にこれ以上濃いのは飲みたくない!”


 エストキラは、薬の類を飲んだことがなく、苦いと言えば野菜の苦みぐらいだ。野菜とは違う苦みを始めて味わったのだ。


 「はぁ、ひどい目にあった。みんなよく平気でこんなの飲むなぁ」


 床に置いてある回復薬のビンをちらっとエストキラは見た。


 ”あれは返そう。僕はもう使わないだろうし。えーと、ずっと成功し続けても100回以上使わないと上がらないんだけど。先は長いなぁ”


 ため息をしつつリュックにスキルを使う。





 ――重さ-1に上書きしました

 ――オプションがレベル5になりました

 ――マスターがレベル5になりまた


 ”やっと上がった。疲れた。どれどれ……あ、一回で3000いった。よかったぁ”


 水晶玉で最大MPを確認したエストキラは、こてんと横になった。

 ふぁ。あくびをすると、眠たさに負け眠ってしまう。


 「……おい」

 「うーん。お母さん、もう少しだけ」

 「誰がお母さんだ。起きろ!」


 ”うん? お母さんじゃない? あ……”


 エストキラは、がばっと体を起こした。


 「お前なぁ。昏倒する前に飲めって言っただろう」

 「あ、いえ。眠くて眠っちゃっただけです。ごめんなさい」

 「そうか。じゃ今日はここまでにするか?」

 「え? いいんですか?」

 「まあ、今日のノルマは達成してるからな。今日は夕飯をごちそうしてやろう」

 「え! やったぁ!」


 ”きっとお肉だよね? 鶏肉と野菜サラダかな? それとも鳥スープ?”


 エストキラにすれば、鶏肉がごちそうだった。だが、食堂に連れていかれ出てきた料理は見た事がないものばかりだ。


 「何これ!」

 「何って。豚の角煮に、からあげだろう。それからグラタンだ。まあ俺の好物ばかりだが。好みじゃなかったっか?」


 ぶんぶんと首を横に振った。よだれが飛びそうだ。


 ”豚って何? というか柔らかい肉。甘しょっぱくて……こんなに甘い食べ物はじめてかも!”


 泣きながら食べるエキストラに訳ありかと、ガントは感づいた。

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