第8話 アプリゲーム課金
「ヤオ~!」
「ん~?」
「おこづかいちょ~だい!」
「いや、俺に言わなくても自分で稼いだ金を使えばいいだろう」
「でもでも!いっぱい課金したら捕まっちゃう!」
「はい?」
「あぁ、この記事見たのか。いや、この人の場合は自分の親の金で課金をしたから新聞に載っただけだ。あと、捕まってはいない」
「でも、ゲームに依存していると課金するって」
「変な考え方を学んできたみたいだな」
「ゲーム課金は基本的に趣味の一つだ。本を買うか、旅行をするか、絵画鑑賞や映画鑑賞、ネイルやエステに金を使うのと同じで、別に課金自体は悪い事じゃない」
「え?じゃあ、なんでこんな悪く言われるの?」
「趣味の範囲を超えて課金をする人が表に出てきたからだと思うぞ。食費を削って課金したとか、稼いだ金のほとんどを費やしたとか」
「でも、それって同じような事をして本を買う人とか、旅行をする人とかいるんじゃないの?」
「探せばいるだろうな」
「じゃあ、食費を削って映画見る人が増えたら、映画なんて!って言われるようになるの?」
「それはどうだろうな」
「え?」
「映画は極端なモノを除けば短くても60分とかあるだろ。んで、一回に使うお金はだいたい1,800円だ」
「うんうん」
「けど、アプリ課金はガチャを回すだけだから、10分~20分程度で数万消費する」
「あれ?」
「つまり限りなく短い時間で、ものすごい量の金が流出するんだ」
「ごくり……それは美味しい商売だね」
「まぁ、会社側はそれだけ先行投資してるって事だけどな」
「でも、自分で稼いだお金を何に使っても誰にも迷惑かけてなければいいんじゃないの?」
「誰にも迷惑かけてないならな」
「どういうこと?」
「よく問題視されているのが、親の金を使い込む子供だ。子供は金の価値なんぞ知らん。働いていなくても寝床があって、飯が食えるからな。だから、親のクレジットカードで課金しても罪悪感すら湧かない」
「子供はそうかもしれないけど、大人は?」
「家族がいるのに”自分が稼いだ金だから好きに使う”ってのはどうかと思うが、その辺は家族が課金に対してどう思うのかで分かれる」
「じゃあ、一人暮らしで、家賃とかもキチンと払ってたら周りにもブーブー言われないの?」
「一回、悪印象が付いているからな。課金をしていると言うと印象は悪くなるかもしれない」
「えぇ~、理不尽~」
「どの程度、課金しているかなんて言わないし、それこそ月に三万課金しているだけで多いって思う奴もいるだろうな」
「なんで?自分で稼いだお金なのに?」
「趣味に使われているお金って感覚よりも、アプリゲームへの課金ってまた別のくくりになってるんだよ」
「えぇ~、理不尽~」
「ちなみに、こんな質問をされた時どう答える?旅行で一回数万かけたAさんと、同じ金額分のガチャを引いたBさん。お金の使い方で印象の悪いのはどっちだ?」
「え、どっちかで答えなきゃダメ?」
「そういう回答が出て来るだけマシだ」
「どういう意味?」
「ちゃんとアンケートを取ったわけじゃないから想像の話になるけど、その両方を提示した時に印象が悪いのはアプリゲーム課金の方だ」
「意味がわからない」
「でも、同じお金を同じ金額分使って、使い道で印象が違うっておかしくない?」
「だから、そういう印象が付くような事件や話題が多かったんだよ。一部の馬鹿が馬鹿な事をやって、同じことをしている奴ら全員も同じ馬鹿だ。みたいな考え方だな」
「うっわ……」
「そういう感覚にならないで流される奴が多いの。まぁ、だからと言って流されてるだけの奴らを責めてやるなよ」
「じゃあ、ゲーム依存は?」
「んー、俺の考え方だが生活の中の余った時間で楽しむのが趣味。その趣味のために生活を変化させると依存だ」
「うん?」
「例えば、飯を食って休んでいる時間にテレビを見ようが、本を読もうが、ゲームをしようが人それぞれだろ?」
「うん」
「逆に飯を食う時間を減らして、ゲームの時間を捻出するみたいな考え方になったら依存だ」
「あー……、なるほど。ご飯を食べてるよりもゲームしたいんだ」
「そういうこと」
「そういえば、さっきも言ってたけどご飯食べないでゲームに課金するってそんなに楽しいの?」
「それはやってるお前にしかわかんない話だぞ。俺はアプリゲームはやってないからな」
「そっかー」
「新聞で見た限りの話だと、ガチャで狙ったキャラが出てこないとか、これだけはどうしても欲しい!って感じで数万入れ込むやつが多いらしい」
「あー!よく聞く!この間もみっちょんがマーリン?に五万円使ったって言ってた!」
「そういう話だ。そのキャラクター一人を手に入れるために食費を削ったんなら、依存。趣味に使える範囲内での課金額なら趣味って分かれる」
「なるほど~」
「じゃあ、アタシが課金しても大丈夫なんだよね?」
「それは別に構わないぞ。というか、お前は貯金してばっかりだからな」
「えへへー」
「何が欲しいんだ?」
「え、別に?」
「うん?」
「欲しいとかないけど、課金してみたかった」
「本当にお前は趣味の範囲内でしか使わなさそうだな。ちなみに五万円出して、目当てのモノが出なかったらどうするんだ?」
「運営会社に文句言う」
******** ********
【アプリゲーム/ソーシャルゲーム】
スマホなどの電子機器で遊べるゲームの新しい形態。
読書や旅行、グッズ収集、絵画鑑賞などの趣味の一つ。
このゲーム内でお金を使う事を【ゲーム課金】、略して【課金】という。
間違って欲しくないのはあくまで趣味の一つという事。
基本的には本を買うのと、旅行代金を払うのと、美術館の入館料を払うのと同じ。お金を使って消費している事に変わりはない。
有名どころになるとゲームプレイヤーの中に廃課金者(月に30万以上課金をする者)が出ているため、やり玉に上がることが多いが本人(もしくは家族)の生活を圧迫していなければ、他の趣味と変わりない。
だというのに、車や家の購入でローンを組み、食費を減らしても世間からの評価はそう変わらない(上がる場合もある)が、課金のために食費を減らすと途端に白い目で見られるのが面白いところ。
イメージ先行で悪印象を持たれているため、課金をしている=悪みたいな考え方の人は多い。
ちなみに、課金をしている事は割と公言した方が良い。
なぜなら、テレビや雑誌などで印象操作されている面も強くあるため、まともな趣味の範囲で課金をしている人たちこそ「どの程度の課金をしている」と言った方が印象回復につながるからだ。
それと課金をしたことのない人は、課金をしている人に対して月の課金額を聞くことも忘れないように。
自分の趣味に使っているお金と比べてあまりにも高ければ、その相手を白い目で見ても致し方ないが、同金額程度だった場合は認識を改めよう。
アナタと同じ趣味の範疇かもしれないし、アナタも別のナニカの依存者かもしれない。
王華の中の結論
「あ、お金かけなくても出た。ほらほら見て!星五の可愛い女の子!」
「なるほど……他人が持ってて、自分が手に入らないとそりゃあ欲しくなるよな。よく出来てるわこの商売」
「あ、えっとね。課金は趣味の一つです。無理せずそれぞれの趣味を楽しみましょう!」
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