北条義時

義時さんはフィアレス

「武士のおじさんがきてたよ」

 家に帰ると涼が声をかけて来た。

「誰?」

「話題のあの人だよ」

「はあ?」

「まあ行ったらわかるって」

 煎餅を頬張りながら涼は楽しげに笑った。

「なんだよ」

 不自然さを抱きつつ二階に昇ると……部屋から、生首が飛び出ていた。

「っ……!」

 僕の姿を捉えると、その生首は瞳を輝かせて口を開いた。

「やっと帰ってきたかー」

「あっ……なんだ寝転がってただけ……」

 部屋に入ると、直垂のうし姿で髭をこしらえた男の人が胡坐あぐらをかいて座っていた。あたりには涼が出したのであろう煎餅を食べ散らかした後が残っている。式部さんや隆家さんとは違って荒々しい。

「色々聞きたいことはあるんですけど、まずどちら様です?」

「うむ。我こそは執権北条義時よ」

 話題のあの人と涼が言った理由がようやく分かった。たしかに彼はここ最近急に名前が浮上した人物だった。理由は言うまでもないだろう。

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