少納言さんはオーネスト 3
「何でそんなに嫌ってるんです。会ったことないんでしょ? 当時」
「そうだけど……気に食わないのよ」
「何が」
「……言ったってわからないわよ」
「言われなきゃわからないです」
「ああ……もうっ!」
式部さんは髪の毛を毟って、
「あんたに言ったって、絶対に、絶対にわからない!」
彼女は重たいであろう衣装を、いとも簡単に引きずって部屋の外へ駆けて行ってしまった。
「あっ! ちょっと式部さん!」
「ほっとけばいいじゃない。そのうち帰ってくるわ」
「でも……」
「この屋敷からは出れないんでしょ?」
「そう、ですけど……」
「ならいいじゃない。一人で思いを巡らせる時間も人には必要だわ」
それ今言う台詞だろうかと思うけれど、まあいいかと思い直す。
初めてここに来た少納言さんをあまり置き去りにするのもよくないし、一階には涼がいるはずだから、なんとかなるだろう。
「そうですね。待ちましょうか」
そう言うと少納言さんは手のひらを口元にあてて静かに笑った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます