清少納言と紫式部

少納言さんはオーネスト 

「お酒はいいものだけど、お酒を口実にはしゃぎまわる人は最低よね」

「ああ……たしかにそうですね」

「寝てるときにどこかで蚊が鳴いてるのも最悪だと思わない?」

「今も昔も変わりませんね」

「やっぱりそうよね。ほら式部ちゃん。だから言ったじゃない」

「五月蠅い人ねまったく……そういうとこが嫌いなのよ」

「もう、式部ちゃんたら。口を開けば嫌い嫌いって言うんだから」

「あんたも似たようなこと言ってたでしょーがさっきまで」

「そうとも言うわね」

 愉快そうに彼女―清少納言は笑った。




 家に帰ると十二単の女性がいた。しかも、二人。

 ひとりなら完全に浮いて見えるけれど、二人もいれば部屋になじんで見える。一種の錯覚だろうか。

 片方の女性には見覚えがあった。以前も訪ねて来た紫式部さんだ。

「久々ね。主くん」

「どうも式部さん。僕もちょうど会いたいと思っていた頃でしたよ」

「え? やだ。私今誘われてる?」

「まあ、その話はあとで。えっとこちらの方は?」

 式部さんの隣、少し年上かと見える、くせ毛の女性の正体を問うと、彼女は途端に表情を険しくした。

「式部さん?」

落魄らくはくしたさかしら女よ」

「あらあら式部ちゃん。酷い言い様ね。でも賢いだなんて嬉しいわ」

「皮肉ですが?」

「もうっ。つれないんだから」

 嫌がる式部さんに、彼女はすり寄っている。会話してるようでしてないな、この二人。

 式部さんは口にこそしなかったが、その態度で、もう正体はわかっていた。

「春はあけぼの……僕もそう思いますよ。清少納言さん」

「つけあがらせるような言わないの」

 式部さんが眉をひそめる。隣の少納言さんは(単純にも)ぱっと笑顔を輝かせていた。

 それから式部さんそっちのけで、少納言さんは語りまくった。



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