隆家さんは救世主? 3
1019年、
「つくづくツイていないものよ」
「でも撃退したんですよね。僕びっくりしましたよ。貴族の方って戦いとは無関係でいち早く逃げ出しちゃうようなイメージがあったんで」
「突然襲来したなら逃げていたかもしれぬな。じゃが、既に対馬と壱岐が落ちたという報を聞いていた以上、逃げ出すわけにはいかなかった。それに、まろが見捨てれば、あの
「肝が据わっていたんですね」
「うむ……。まあ、都での途方もない争いに比べたならまだ、という意識はあったかもしれぬ。敵は明らか、味方も明らか。ただひたすらに守ればよいのだから」
まだ、「国」という概念がどれほど構築されていたかもわからない。そんな中、安息を求めて九州に赴任した隆家さんは、異国の
元寇の時の北条時宗ばかりがクローズアップされるが、日本の救世主という意味では隆家さんも同じだろう。
「種材が頑張ってくれたのよ」
「たねき?」
「うむ。もうあの頃既に高齢だったが、博多を防衛せねば
調べてみると、確かにその人物の記録がある。
大蔵種材、刀伊の入寇において、既に70歳を超す高齢であったが、大宰権帥・藤原隆家らと共に刀伊に対して応戦する、とウィキペディアにも載っていた。
後に源平合戦で、
「人間、命がかかると普段は出せない力が出るものよ」
隆家さんは、ふふふとまたも笑った。
非業の死を遂げたマリーさんやエリーさんと会話した今であれば、それもしかりと納得できる。
「茶を貰えるかの」
「はい。あ、お湯切らしちゃったんで、新しいの淹れてきます」
「うむ」
史実には残っていないけれど、隆家さんは大の茶好きだったのかもしれない。
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