隆家さんは救世主? 2
つまり、あの「この世をば我が世とぞ思ふ」と詠むほどに権勢を極めた藤原道長の
長男ではないにしても、本来は関白の子孫として、あるいは天皇の外戚として力を得ていたはずだった。
しかし、働き盛りの最中に父が亡くなってしまったところから歯車が狂い始めた。
日増しに、叔父道長の勢力が大きくなっていったのである。
教科書にはほぼ出てこないが、隆家の従者が
背景には兄の
伊周はもちろん、法皇も世間の目を
しかし、
と、あたかも、以降は道長の家ばかりが繁栄したかのような理解がされており、隆家は忘れ去られてしまったかのようだが、実態はそう単純ではない。
*
「そうでした。隆家さん、目を病んでいたのでしたね」
瞳を閉じたままのジェスチャーの理由に僕は気付いた。
「うむ。今はもう治っておるのだが、つい癖で閉じてしまうのじゃ。開いていなければ病むことはないからの」
「したら見えないじゃないですか」
「そこは臨機応変というやつじゃよ」
「はあ」
一条天皇の死後に即位した三条天皇の皇太子に、自らが期待していた
その直後、事故によって隆家さんは瞳を負傷した。隆家さんが自ら、再びの太宰権帥任官を希望したのはすぐあとの事である。
「既に皇后様も、伊周の兄上も亡くなった後の事。あの頃のまろは、きっと何もかもどうでもよかったのだろうな」
それも仕方のないことだと思う。大きく捻じ曲げられた運命に、正気でいられる人間などいないだろうから。
しかし、歴史は隆家さんを、良くも悪くも見放さなかった。
「と思うたら外からあんな奴らが入り込んできてのう。まったく……」
都を離れた九州で、何もかもどうでもよかったという割には優れた善政を
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