第2話 22時の襲撃
思わぬ訪問に俺は慌て、パジャマのまま玄関を開けてしまった。そこには、美しい少女が立っていた。少女と言っても年齢は高校生、つまり俺ぐらいだ。美人だが、凛とした感じの美人さではなく、もっとふんわりとした優しい雰囲気だ。目鼻は整っており、髪はミディアムボブといったところだろう。と彼女を観察していると、
「あの、向かいに越してきた岡崎、岡崎奏と言います!これから、よろしくお願いします。」
と丁寧にお辞儀をした。俺はよろしくお願いします。と答えることしかできなかった。すると、彼女は質問をしてきた。
「お名前は何というですか?」
自分も名乗ることは当然のことだろう。俺は、なにやってんだよ俺!と自分を叱りながら
「斎川直樹です。明日から桜坂高校の1年です」
そう答えた。すると彼女は
「私も明日から桜坂高校の1年なんです。同じですね!じゃあ敬語じゃなくてもいいよね?」
と嬉しそうに話す。俺は「ああ、いいよ」と返す。しかし、俺はここで一つ不思議なことに気づいた。俺は彼女のことを入試で見ていない。限界集落の高校でこの町に住んでいない見ず知らずの生徒が受験していたら、確実に目立つであろう。すると、彼女は
「こんなやつ、入試で見てねーって思ったでしょ?私、人の考えてることがわかっちゃうんだー。私は推薦入試だからね。斎川くんは一般入試だよね?だからだよ」
謎は解けた。そして、驚くべきことに岡崎さんは本当に人の考えてることがわかるようだった。俺にはどうしてもこれが偶然ではないような気がしてしょうがなかった。
それから少し世間話をした。時刻は22時半を回っていた。岡崎さんは
「あ、もうこんな時間!もう帰らないとお母さんが心配しちゃう。また明日ね」
と言い、帰っていった。その数分後、俺の家の玄関には岡崎奏がいた。彼女は俺に引っ越しの挨拶と菓子折りを持ってきたのにもかかわらず、菓子折りを持って帰ったのだった。家に帰ってからそれに気づき、今に至る。
「あの、これ、面白いものです。ぜひ食べてください」
俺はどういうことだよと思いながら
「普通は面白いものですって自分で言わなくない?」
と聞いてみた。すると岡崎さんは
「これは亡くなったお父さんから教わったんです!つまらないものですがって言うより、面白いものだって言った方が、貰う人も嬉しくなりませんか?」
俺は「気持ちだけですが」とか言っとけばいいんじゃねと思ったが、彼女はそれが気に入っているなら、そのままでいいかと思い、口には出さなかった。
「じゃあ、本当に帰りますね。おやすみなさい」
とだけ言い、帰っていった。その後、俺は布団に包まれて寝た。
朝起きると、登校時刻の5分前だった。
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