限界集落で始まるラブコメ(仮)

水無風

第1話 斎川 直樹の過去

 俺、斎川直樹は、母親の命を犠牲にして今生きている。

 俺が3、4歳の時、母は亡くなった。事故死だった。猫を追いかけて道路を渡ろうとした時、向こうから来た車に気づかず、車にはねられる直前に母親が俺を庇ってくれたのだ。妻を心から愛していた俺の父親は、会社で勤勉、そして未来の部長候補と言われていた。だが、妻の死のショックにより、酒とギャンブルに依存し、会社にもいかなくなった。その為、幼くして俺は上仁田町の母方の祖母に引き取られることになった。

 

 

 俺は母を殺し、父の将来を奪ったのだ。

 俺は両親に対し、許されざる罪がある。





 そんな中、祖母は俺に対してとても良くしてくれた。本当に祖母には感謝しかない。その祖母がこの前亡くなった。死因は老衰だ。1番良い亡くなり方をした。祖母が眠っているのは、畑の近くにある先祖代々の墓だ。これから、俺は一人暮らしとなる。いろいろと大変そうだ。金銭的な面では、祖母の残してくれた貯金でなんとかなりそうだが。

 そんな俺も今日から桜坂高校の1年生だ。だが、俺の住んでいる上仁田町は限界集落と化してる。つまり、高校生なんてものは数えるほどしかいないのだ。そのため、小、中、高と附属校みたいになっていて、良くも悪くも顔ぶれも変わらなく、安心感がある。

 そして、明日は高校の入学式。


「寝坊しないようにそろそろ寝るかぁ」


と独り言を言ってみる。無論答える人は誰もいない。まだ22時を回った頃だが、寝ることにした。そして、電気を消そうとしたその時、


「こんばんは!夜分遅くにすいません。引っ越しのご挨拶に来ました」


と若い女の声がした。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る