第三話 部活に入ろう!

「野原さんは部活とか決めてるの?」

 そう和田から聞かれたことは、野原にとっては意外だった。車椅子だから運動部はきっと無理、殆どの文化部が集まる部室棟は古い建物でエレベーターがないから、こちらも無理。だから部活には興味ないんだろうな、と思っていたのだ。

「私?私はね、もう去年の秋から決めてて!演劇部なんだけど…」

 それを聞いた和田の表情はぱっと明るくなった。

「そうなんだ!実は私も演劇部に入りたいと思ってて」

「へー!実は経験者、とか?」

 入学して早速仲良くなった友人が同じ部活に入りたいと言うので、お互い会話が弾む。演劇部だけは一階のホールで活動しているもんな、と野原は1人納得した。

「全然そういうのじゃないんだけど、受験勉強中にドラマたくさん見て、ハマっちゃって。こういう仕事とまでは行かなくても、部活はしてみたいなって。…そういう野原さんは中学でもやってたりするの?」

「んーん!中学んときはバスケ部だった!でも万年ベンチ組よ。私より上手い子も背高い子も足速い子も力強い子もいっぱいいたから当然っちゃ当然よね」

「すごい、強豪みたいな感じ?」

「そういうのではないかな?まあ、そこそこ?上には上がいるってことよね…世知辛いわ」

「でもそっか、運動部か…すごいね」

「えー!全然すごくないよ!シュートも試合中は入らなくなるから役に立たないし!…和田さんは中学ではなんかしてた?」

 運動部の話は和田を傷つけてしまうのではないかと我に返った野原は、話題を変えようとする。しかし和田は顔色を変えずに、

「何もしてないよ。だから高校から頑張りたいと思って」

と答えた。


「そっか!じゃあ今日一緒に仮入部して、入部届出して、初心者同士頑張ろうね!」


 どうしてか責められているような気分になった野原は、話を切り上げてスマホに視線を落とす。代わり映えしないSNSは今日もセンチメンタルなポエムやキラキラした写真で彩られていた。

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