第二話 入学!そして出会い!
「野原さん…だよね?私和田チナツ。車椅子だから隣の席で色々迷惑かけるかもだけどよろしくね」
そう入学初日に声をかけてきた彼女に最初に抱いた感想は、いい人そう、だった。性格がきつい高飛車やうざ絡みしてくるチャラい陽キャではないことに、野原カリンはひとまず安心した。同じ中学の友人がいないどころか、この学校に来ることすら受験日以来だったので雰囲気がわからず昨晩から不安だったのだ。
「ん、よろしく!いやー、なんか高校生だし隣ヤンキーとかだったらやだなって思って不安で夜しか眠れなかったんだよ!優しそうな子で良かったー!」
ちゃんと眠れてるんじゃん、とお決まりのツッコミを入れる和田は、やはり柔らかい笑顔を浮かべていた。
きっと教科書とか見せてくれるんだろうな、休んだら翌日はめっちゃきれいなノートコピーさせてくれそう、などと打算的な妄想をしつつ、車椅子に目を見やる。うさぎのマスコットのぶら下がったリュックが背もたれにかかっていた。
「うさぎかわいいねえ!好きなの?」と当たり障りのなさそうな質問をする。「こういう人」と同じ教室で生活するのは小学校以来で、車椅子の人は始めてだったから多少ぎこちなかったかもしれない。
「すごく好きってわけじゃないけど、お店で見つけて…一目惚れ、みたいな?」
「あーわかる!!ひと目見ただけでなんか運命感じちゃうこと、あるよね!」
そう、ひと目見ただけで運命を感じた。だから野原は今この場にいるのだ。昨年、友人に連れられて見に行った高校演劇秋の大会で、宮藤女子高等学校の演じていた脚本にひどく心を打たれた。本当に高校生が作ったのかと思うほどに重いサスペンスで、クライマックスのどんでん返しには背筋がゾクリとした。そのまま勢いで志望校を決め、今に至る。
やがて「静かにしろー」と担任が話し始め、様々な連絡事項の後、解散となる。
明日の放課後から部活の仮入部が可能で、最低一回の仮入部の後、入部届の提出となるらしい。流石に入学初日からは無理か…と内心落ち込んでいると、和田から声をかけられた。
「野原さん、よかったら…駅まで一緒に帰ろ?」
運動部の掛け声が聞こえる中、二人は下校する。二人のうち、少なくとも野原カリンは、もうこうして二人で帰ることはないと思っていた。
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