第2話
役場に戻って明子ちゃんに連絡すると、即座に山中さんの施設移送決まった。抵抗するだろうが仕方ない。親族に見放された老人は悲惨だ。山中さんはまだいい。親族から身ぐるみ剥がされたあげく放置され孤独死というのも珍しくない。
カカシ村と呼ばれた村がある。子供が生まれず消滅が確定した村で、村民たちが慰めにカカシをつくっては廃校や廃屋においたのだ。
減るばかりの村民よりカカシのほうが多くなり、今はカカシだけがのこっている。
カカシをつくろうという提案もあったのだが、村長は断った。先祖代々引き継いできた美しい村をカカシで汚してどうなるのか。
老いていくばかりの村でいったい自分は何をしているのだろうか。
「すみません。西大和村役場はこちらでしょうか。」
ふいに入り口から声がした。
訪ねてきたのは、スーツをきた色黒の男であった。
男は、地方創生のNPO法人の代表だという。
地方創生、計画だけつくらされ何も産まなかった大騒ぎ。東京のコンサルに金だけ取られておわった苦い記憶が蘇る。
「地方創生なんていまだにやってるんやなあ」
少し挑発気味にいうと、男は少し恐縮した顔で、
「西大和村が苦境にあるのは存じております。少しでもお手伝いしたいと思いまして」
男の提案はシンプルだった。都会で家賃が払えなくて困っている若者に廃屋を貸してほしい。村長がやっている見回りなどの手伝いをやらせる。その代わり、住民税や固定資産税を減免してほしい。
仕事をしてないなら生活保護世帯として税金は減免できる。生活保護費の予算が少ないから扶助費はほとんど払えないが。
「それで十分でございます。食料や光熱費は自力でなんとかするでしょう。」
若者たちは来週連れてくるという。
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