第7話 SNS を通じての再会
それからしばらくして、ここに帰ってきてはじめて SNS で名前検索をかけてみた。
向こうにいたときにでもできたかもしれないけど、そういった考えがまずなかった。
玲香「あったわ」
未咲「わたしも見つけたよ、全員分」
同姓同名をはじいていくと、見事に全員その SNSにアカウント登録していて、ほっと一安心。
玲香「これで召集かけられるわね」
未咲「そうだねっ」
場所は思い出の学校の近く。そこでなら花開く話もあるんじゃないかと考えた。
玲香「日時は今度の金曜日、いいわね?」
未咲「がってん承知!」
さて、どんな話が飛び出るか……。
♢
場所は最近学校の近くにオープンした、値段がリーズナブルなカフェに決まった。
そこで集まっていちばん変わったのは、やはりとも言うべきか、両角純夏だった。
未咲「あれっ、眼鏡かけてない!」
両角「そうなの〜。眼鏡ってけっこう跡つくし大変だから、手術で視力もどしてもらったんだ〜」
未咲「そうなんだー、変わったねー」
両角「未咲ちゃんはどうだった? 元気してた?」
未咲「もちろんだよー。あ、でももうおしっこは飲まないでね?」
両角「えっ? どうして?」
玲香「話すと長くなるわ。とりあえずお店の中に入りましょう」
少なくとも店の中でそのような話はできない。そう踏んだわたしはさっさと店の中に入れたほうが早いと考え、そう言った。
それに話がわたしのところに飛んできたとき、被害にあうこともあると考えてしまったから。
そんなこと、考えすぎなのかもしれないけど。
♢
玲香「千秋・千冬ペアはあいかわらずね」
二人「なにそれー」
千秋「それにその言いかたってなんかラケットスポーツのダブルスっぽい」
千冬「そーだそーだっ」
未咲「なんかあの頃もこんな感じの掛け合いしてたような……」
そーだそーだの部分に関してだけではあるけど。この仲良しさから鑑みるに、いまでも交流を欠かしてなさそう。
玲香「……なにしてんのよ」
真琴「これか? これは血圧計だ。わたしの中では常識なんだが……皆はしないのか?」
未咲「まだそういう歳では……ねぇ?」
真琴「何を言っている。これからもずっと一にも二にも健康が重要視される。こういったことが習慣化されてないととびきり痛い目に遭うぞ?」
玲香「どうだかねぇ……」
真琴「はぁっ……まったく話の通じないやつらだ……」
思いっきり大きいため息をつかれてしまった。
両角「で、さっきの話なんだけど……」
玲香「ねぇ、その話ここでしないでトイレにでも行ってしてきてくれないかしら」
両角「玲香さんがさっきからうるさいですね……わかりました、行きましょう、入野さん」
未咲「えっ? うん……」
そうして人ひとり入るだけでも窮屈な女子トイレに、無理やり大人ふたりして入った。
両角「どういうことなんですか、入野さん?!」
未咲「声が大きいよ……とにかくそういうことだから……」
両角「わたし、ずっとあなたのおしっこに励まされて生きてきたんですよ……?!」
未咲「そうなんだ……でもごめんね、これからは玲香ちゃんの……」
両角「あの人のおしっこを?! ムリムリムリ……でもいま入野さんのそれを飲んだとしてもマズい、ですよね……?」
未咲「まぁ、そうだね……試しに飲んでみる?」
両角「いいえ、結構です……わたしの清き思い出まで貶されてしまいそうになるので……」
未咲「どうしてもってことになったら、最初は恥ずかしがるかもしれないけどわたしにもっとも近い玲香ちゃんに頼むしかないんじゃないかなぁ……」
両角「新しい関係、ってことですか……?」
未咲「うーん……あまり関係関係って言いたくはないけど、きっとそういうこと、かもしれないね」
両角「わかりました、がんばってみます……」
未咲「応援してるからねっ」
信頼してる人に言われて背中を押されたのか、案外すんなりと受け入れてくれてよかった。
両角「玲香さん!」
玲香「……なによ」
互いに汗を(玲香ちゃんはひかえめに)かきながら、間合いをとる。
両角「僭越ですがお尋ねします。わたしのために、おしっこを出していただけないでしょうか……」
となりの人がびっくりしてこちらを見ている。それだけでも公開処刑ものだが、次に出たことばもまた衝撃的だった。
玲香「わたし、あなたのこと大っ嫌いなのよね」
両角「んなっ?! こんなことを頼んだわたしがバカだったってことですか……?!」
玲香「そうは言ってないわ。ただ……」
両角「ただ……?」
玲香「……」
両角「なんですか……?」
玲香「あぁもう、こうなったらこうするしか……」
両角純夏を膝立ちさせ、次にはわたしの口に彼女の股間にきていた。大人としてなんとも恥ずかしいけれど、すぐさま形にしてしまわないともうなにかが変わってしまうと感じてしまったようだ。
玲香「こういう関係は許すって言ってんの」
両角「そ、それって……」
玲香「どこまで付き合えるかわからないけど……あなたもちゃんとついていらっしゃいね?」
両角「よ、よかったれふ〜……(泣)」
安堵の涙。よほど玲香ちゃんが怖く映ったのだろう。ただ、周りの視線がとにかく冷たい。
玲香「何よ、文句でもあんの?」
そう言うとたちまち視線をそらす。みな一様に何か深く考え込んでいる様子だ。
未咲「よかった〜、これでひと安心だねっ」
二人「ほ、ほわぁ〜〜〜〜っ?!」
真琴「静かにしたまえ……健康チェック表が埋まらないではないか……」
そういう真琴ちゃんは少し落ち着きがない。大人だから一見しておしっこだと瞬時に判断できたけど、問題はここからどうするか。
真琴「うぅっ……もう、がまんできないっ……」
股をおさえながら不格好にトイレに向かう。周りの視線を集めてからのこれはなかなかできたものではない。
真琴「はぁっ、うっ!」
トイレのドアノブに手をかけようとしたとき、あきらかにやっちゃったという感覚があった。
排泄欲が完全に勝ってしまい、ここまでくるともはやごまかしようのないほど濡れている。
真琴「やってしまうのか、ここで……」
そう言わずまっすぐ向かえばいいのに、いざ自分がもらすとなると実感がわかず、頭は完全にまっしろに。
真琴「うそだろ……いやいやいや、信じたくないぞわたしは……いけ、いくんだ真琴っ……!」
言ってるそばからあふれだし、止まることはなかった。
真琴「はぁ……きょうはついてない……」
いくら健康に気をつかってるからといって、それとこれとはまったくもって別問題だった。
真琴「それにしても玲香どのの排泄音は未咲譲りか?! あの音はどうやったって出ないぞっ?!」
人生経験がすべてそこに詰まっているのだ、とも考えたが、もはやこれは、玲香どのの生まれ持った性質が表に出てきたにすぎない、と考えるのが線といったところか。いやはや敬服。あとで健康グッズでもくれてやろう。
真琴「さて、戻るとするか……」
トイレから戻ると、なぜかそこは祝福モードに。
全員「おめでとー」
両角「やめてくださいみなさん総出で……なにもケーキまで用意してくださらなくても……」
玲香「ありがたく頂戴しておくわ」
未咲「お代は結構ですって言ってたよね?! いいの?! わたしたちまで?!」
二人「おめでとー」
千冬「わーいケーキだー!」
千秋「おいしそうだね、千秋ちゃん!」
幸せな時間は流れていき、多少の軋轢は残りつつとてもよい夢を見させていただきました。
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