第4話
これで、自称勇者パーティー(笑)と縁が切れる。
そう思っていたんだが、そうは問屋が卸さなかったようだ。
そう、あの勇者パーティーの斥候役の男に偶然会ってしまった。
なんとギルドに登録して、普通に仕事をしていたのだ。
俺は、転生者である事を隠して、何も知らない【稀人研究者】として彼に近づいて話しを聞き出した。
彼は、他のパーティーメンバーとは元々無関係の人間だったそうだ。
確かに彼は30代で他のメンバーとは年齢が離れていた。
一見かなり落ち着いた、地味なおっさんに見える。
が、此処で安心してはいけない。
早速、ギルドマスターに頼んで【鑑定の魔道具】で彼を【鑑定】してもらった。
確かに彼に犯罪歴は無かった。
称号は【異世界転移者】【異世界商人】【善行を積みし者】【魔法使い】
ギフトは【異世界言語L v3】【異世界通販】【風魔法L v1】【火魔法L v1】【生活魔法】【家事L v7】【アイテムボックスEX】
だが此方の人間には読めない様に、態々日本語で書いてある部分が下の方にあったので読んでみる。
どうやら俺宛のメッセージの様だ。
それによると、
『ジョナサン・F・チェイテス様。
この度は、この世界の人間が起こした【異世界召喚による弊害】を未然に防いで頂き、ありがとうございます。
召喚された者達が其方で犯した罪は、其方側で裁いて頂いても構いません。
地球の神から、
『斥候役の青年(☆ブラック企業勤務)は地球では、不孝続きであった為、せめて其方の世界で幸せに生活させてあげて下さい。』
との伝言がありましたので、宜しくお願いします。
今回ご協力して下さった貴方には、特別に特典として、【異世界転移片道券11枚綴り(個人用、譲渡不可)】を差し上げます。帰りはお好きな時間に戻れます。ただし、異世界転移前の時間には行けません。
勇者パーティー(犯罪者)からは、心から反省するまで罰としてこの世界の言葉がわかる程度のギフト《異世界言語L v1》以外のギフトは取り上げます。
禊がすむまで称号も《犯罪者》にしておきますね。
創造神ヤータ』
神様からメッセージを貰ってしまった。
内容にはいろいろツッコミどころがあるが、貴重な体験だ。
おっさんには、『この【鑑定】で称号に【商人】【魔法使い】があるから、職業を斥候から変えた方が良い。』とアドバイスしたら、微妙な顔をされた。
たぶん、【魔法使い】のところに引っ掛かったのだろうが、俺は知らないフリをしてスルーした。
まだ聞く事があるかもしれないから、暫くは王都近辺に居てくれる様にと頼んでギルドで別れた。
その後、おっさんとは帰国してからも、商人と取引相手として付き合っている。
何しろおっさんの売っている醤油や味噌等の調味料が美味い。
一応、此方の世界にも醤油や味噌はあるのだが、残念ながらそれを伝えたであろう稀人の出身地の影響か、俺の好みの味ではなかったのだ。
お陰で公爵家の食事がかなりグレードアップし、公爵領に作ったレストランと高級宿は大盛況だ。
でも、おっさんにばかり頼っていて、供給が途絶えたりしたら困るのでそのうち共同開発して此方で生産するつもりだ。
まぁ、コレは俺が帰国してからの話になるから、また別の話って事で……
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