狙われた男とサイボーグなボディガード

 その男はまるでサイボーグのようだった。

 年齢は種内賢都とさほど変わらないらしいのだが、その濃い髭とガタイの良さのせいか幾分か年上に見える。

 しかも無口で感情の籠らない顔は否応なく種内は居心地の悪さを感じていた。


 なぜサイボーグのような男が種内のすぐそばに張り付いているのかというと、彼がボディガードとして雇われたからだ。もちろん、種内の意思ではない。種内になにかと世話をやく同僚の潮崎美玲の差し金だった。潮崎は種内よりも3つ年上の女性で高校生の息子のいるシングルマザーだった。


 なぜ種内にボディガードをつけようとしたかというと、一通の脅迫状が種内のもとへきたことからはじまる。もちろん、ただのイタズラだと無視していたのだが、その数日後種内の勤める事務所の窓ガラスは割られるし、郵便物に刃物が入っていたり、暴走車に追いかけられたこともある。


 あるときは鉄砲をもった怪しい奴等に追いかけ回されたこともある。なんとか生き残っているのだが、これでは仕事どころではない。


 そこで潮崎はボディガードをつけることにしたのだ。


 そして、やってきたボディガードというのがいま種内の目の前にいる無口な男だった。


 名前は鍵山警護という。


 その名前を聞いたときはまんまかよと思った。


「あんたさあ。なんで話さないんだ?」


 種内が訪ねるもなにも答えない。


「なんか話せよ。俺としては気まずいんだけど」


 そういうがちらっと視線だけを向けただけで話そうとはしなかった。


 空気悪い。


 ずっとこのサイボーグ男がいるのかよ。


 勘弁してほしい。


 この男がボディガードについて3日になるが、いまのところ何も起こっていない。


 もしかしたら、あの組織は種内のことをあきらめているのではないかと思える。



「なあ、ほかのやつにできないの? あいつ、サイボーグだよ」


 種内は潮崎に抗議した。


「だめよ。あの人ほど頼りになるボディガードはいないんだよ。あの人ならぜったいに賢を守ってくれるはずよ」


「うーん。なんか情けないねえ。男としては守られる立場ってのはさ」


「仕方ないじゃない。やつらが君を狙っているんだからちゃんと守ってもらいなさい」


「守ってもらうっていつまでだよ。一生か?」


「解決するまで」


「解決」


「そうだよ。君は考えるの。どうしたら解決するか。そしたら、やつらは壊滅して、君は自由だわ」


「ふーん、解決ねえ」


 種内は頬杖をつく。


「そうだな。解決するしかねえな」


 そういいながら、種内は立ち上がると無表情でたたずんでいるボディガードに近づく。


「まあ、とりあえず、お前巻き込まれていいってことかな」


 そういいながら、種内は鍵山を指差した。


 やはり表現一つ変えない。


 それを見ていた種内は、自分を狙うやつらのことをどうにかするよりも、このサイボーグな男をどうにかしたいと思った。

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