しがんからひがんへのみちのり

 僕は死んだ。


 僕は死んで他の子たちともに荼毘にふしたのだ。


 なぜ僕が僕だけでなく皆と一緒に火葬することになったのかというと、僕を育ててくれたお母さんが寂しくないように皆と一緒に荼毘にふさせてくれとお坊さんにたのんだからだった。


 だから、僕はみんなと一緒に此岸から彼岸へと旅立つことになった。


 確かに寂しくはない。


 けれど、僕と一緒に旅立つことになったものたちはみーんなはじめましてのモノばかりだった。


 大丈夫だろうか。


 こんな見ず知らず同士で彼岸までいけるのだおるかと不安でならなかった。



 不安はある。


 けれど、彼岸へいけば、僕の家族にあえるらしい。


 彼岸の向こうに家族がいるのだとお母さんがいっていた。でも、僕はその家族。なぜなら、その家族はみんな僕があの家に引き取られる前にはすでに。


 僕はうまく彼らを見つけることができるのだろうか。


 不安で仕方がない。

 そんなことを考えていると、僕に話しかけるものがいた。


「どうしてそんな不安顔をしているの」


「だって、うまくいやっていけるか不安なんだ」


「みんなそうさ。不安で仕方がない、でもさあ、昔よりもいいよ。昔はぼくたちのようなものにお経をあげる習慣もなくて、ただ埋められるだけだったんだからさあ。たくさんの魂が彼岸にたどり着くまでにものすごく時間がかかったらしいよ」


「そうなんだ」


 ふいに僕は僕がくる前に死んだ家族のことを思い出す。そういえば、その子たちはお経をあげてもらえなかったみたいだった。ただ冷たい土に埋められて終わり。もしかしたら、彼岸にたどり着いていないのかもしれない。


 もしそうならば、家族にあえないのではないいか。

 僕はずっと先まで続く整備された道を見る。

 

 そこにはたくさんの魂が彼岸へと向かう。


 人間の魂もあれば、動物の魂もある。


 その整備されていない道からずれた場所に魂が漂っているのが見える。


 舗装された道をとおる魂はただまっすぐに進んでいるのだけれど、道をはずれた魂はただあっち来たりこっちきたりとさまよっているようだった。


「あれがお経をあげてもらえなかった魂?」


「そうだよ。たぶん」


 僕はさ迷い続ける魂を見つめる。


 あそこにいるかもしれない。


 僕の家族があそこにいるかもしれない。

 もしも会えたならば、彼らもこの道を歩かせることができないのか。


 僕はそんな気持ちでいた。


 するといくつもの魂が僕のほうへと近づいてきた。


「ああ、懐かしいご主人様の臭いがする」


「ほんとうだ。ご主人様の臭いだ。」


「もしかして、僕の家族?」


 僕が訪ねた。


「そうだよ。きみもご主人様に育てられたんだね。なんかずるいなあ。僕らもお経あげてほしかった」


「そんなこといわないでくれよ」

 

 ぼくは困惑した。


「ごめん。ごめん。でも君お陰でその道歩けそうだよ」


 気づけば、僕と同じご主人様をもつ魂が道のなかへはいっていた。


「うん。君が供養されたことで僕らも供養されたみたいだよ。本当にご主人様はしんでもぼくらのことを思ってくれていたんだね。これで一緒にいけるね」

 いこうか。彼岸へいこう。そして、いままで会ったことなかった四匹だったけど、仲良くしてくらそうね」




 僕は有意義な犬生をあるませてもらった。


 今度生まれ変わるときは、ご主人様のような優しい人間に生まれ変われたらいいなあ。


 そんなことを考えながら、同じご主人様にかわいがられてきた犬たちとともに歩いていった。





 

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