相手は誰だ

 近所に暮らすお姉さんが妊娠してしまった。まだ15歳で、高校も決まっているというのに妊娠が発覚したことで、お姉さんの家は大騒動になっていた。しかもだれの子どもなのかわからない状態。


 親たちは必死に中絶をしてほしいと説得していたようだけど、お姉さんは産むと聞かなかった。


 15歳で妊娠。あと二年後の私が妊娠しているなんて想像もつかない。まだ子供でそんなことにはほど遠い話だと思っていた。けれど、妊娠できるんだ。


 十代のころにはいつでも子供を作ることのできる態勢ができているのだから、相手さえいれば妊娠なんてあっけなくしてしまう。


 問題なのはその後だ。まだ中学生。


 これから高校へも行く。いろんな将来の夢を描いていたはずだ。それなのに妊娠したことでお姉さんの世界は一転した。少なくとも私にはそう思えていた。


 少なくとも、お姉さんがえらく大人に見えた。


 元々かわいい顔をしていたお姉さんがいっそう美しく思えて、すでに母親になる準備をしていたのだ。


 ただ問題は山積みだった。


 さきほど言ったようにお姉さんは15歳。


しかも相手がわからない。


 何度も聞いても答えてくれないのだ。


 いったいどうやって育てるつもりなのか。


 お姉さんは自分一人で育てるつもりだといっていた。けれど、不可能だ。


 親のお金で暮らせているお姉さんがいきなり収入を得るわけではない。いやおうなく親に頼るしかないではないか。


 いや親に頼らず方法がないわけではなかった。


 父親だ。


 もしも、その父親らしい人が子供ではなく、ちゃんとした大人だったとしたならば、ぜったいに収入元があるはずだ。


 そいつを捕まえて無理やりにでもお姉さんと結婚させる。


 それしかない。


「大人ては限らないぞ。同じ中学生かもしれない」


「そうかもしれないけど、もしかしたら大人かもしれないじゃない」


「どうして、そう言い切れる?」


「女の勘よ。お姉さんは、年上好みだもん、ぜったいに相手は大人よ」


 私はなぞの確信を持っていた。そのことに弟があきれかえったのはいうまでもない。


「そういうことでお姉さんのお腹の赤ちゃんの父親捜し手伝ってね」


「えええ」


「ちゃんと、お菓子あげるから、お願いね」


 そういうことで、私と弟による近所のお姉さんの相手探しが始まったのであった。

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