じゃんけん

 私のクラスは、じゃんけんから始まる。


 毎朝、教室前の廊下に数人が輪になるように集まると、だれからともなくじゃんけんの合図をし始めるのだ。


「今日こその負けない」


「今日はぜったいに勝つ」


「あーあ、もう少し遅くくるべきだったなあ」


 それは無理だ。


 私の学校は集団登校。


 毎朝決まった時間に集合場所に集まり、同じ時間に出発する。


 だから、いつも同じ時間につくのだ。


 故に毎朝、じゃんけんするはめになるのは同じメンツだった。


「いくよお」


 「最初はぐー。じゃんけんぽん」


 数人が一斉に手を出す。


チョキの子が二人


パーの子が三人


グーの子が二人


「もういっかい。あいこでしょー」


今度は


チョキの子が三人


パーの子が一人


グーの子が三人


「あいこでしょー」


チョキの子が五人


パーの子が一人


グーの子が一人


「あいこでしょー」


チョキの子が一人


パーの子が二人


グーの子が四人


「あいこでしょー」


チョキの子が二人


グーの子が三人


パーの子が二人


「あいこで……」


「おはよう」


 そのとき、後からきた子が挨拶をすると、そのまま教室へ入っていった。


 私たちがその子に視線を向けると、その子が窓を開け始めた。


 窓から抜けた風は教室を通って、廊下の窓なら出ていく。


「早く入ったら?いつまで、じゃんけんしているんだよ」


 窓を開けたその子が扉から顔を出した。


 私たちは困惑の顔を浮かべながら、ぞろぞろとはいっていく。


「別にじゃんけんしなくてもよくない?窓あけるだけだよ。一番の子が開ける決まりだからって嫌がる必要ないよね。バカじゃないの?」


 窓の開けた子がため息まじりにいう。


 確かに最もな意見だ。


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