鍵が開かない

 わたしは介護施設で働いている。

 月曜日~金曜日までの午前中だけの短時間パートである。けれど、朝は早い。毎朝、7時には来て、食事の準備からはじまるのだ。


 その日もいつものように7時少しまえ職場に到着した。さて、中に入ろうかと施設の玄関の扉を開けようとしたが、まったく開かなかった。普段ならば、私が来る頃には開いている玄関。だから、当然鍵を持っているわけでもない。

 どうしようか。

 わたしは早速携帯で玄関を、開けてもらおうと施設に電話した。

 つながらない。

 何度も呼び足し音をならしてもだれもとろうとしていないようすだった。

 おそろく、忙しいのだろう。


 あー

 どうしよう。


 どうしよう。


 しかも、サムーい


 雪降りそうな天気


 いやいや、


 雪降るといっていなかったか?


 言っていたよね?


 早く気づけーーこらーー


 そんなこと言っている間に、7時が過ぎてしまった。


 遅刻?


 これって、遅刻扱い?


 給料減らされるううう


 そう嘆いていると電話がなった。


 職場からだ。


「あのお、今日早出ですよ」


 なにのんきにいってんじゃい。


 早くあけろよ。こらあ



「わかってます」


「は? どうして、こないんですか」


 こないじゃねえよ!


 てめえが開けていないのが悪いんだろうがこらあ


「すみません。開いてません」


「はい? なにがですか?」


「玄関が開いてないので入れません」


「ああああああ!すっすみませーん」


 ガチャンと電話を切る音が響いた。


 そして、慌ててあけにやってくる夜勤の職員の顔が真っ青。


 しかも、まだまだ一年にも満たない新人。


 玄関を開けるなり、何度も何度もあやまるものだから、怒る気にもならない。


「いいのよ。今度から気を付けてね」


 わたしは優しくそういいながら、遅刻の五分をどうしようかと考えていた。



 まあ、結局は遅刻の五分間の分を帰宅時間よりも五分多く働くだけでよかったのだが、その五分貴重じゃないのか?

 たった五分


 されど、五分


 かえせーー


 私の五分



 かえせーー


 待たされた無駄な時間



 余談だけど、


 その日、


 仕事から



 帰ると玄関の鍵閉まっていた。


 もうすでに家族はかえって来ているのはバレバレなのにしまっているとはどういうことだ?


 おーい、


 早くあけろーー


 鍵はもっているが、

 どうせ中にいるから、チャイムを鳴らしてやった。


 すると、玄関をあけたうちの旦那が、「閉めてないぞ。閉めた覚えないぞ」といいだした。


 あんたが閉めないでだれが閉めるんだよ。


 ボケ


 うちの玄関はオートロックじゃないんだよお。


 なぜか、


 鍵に弄ばれた1日だった。

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