好きな色なんて関係ないだろう

「ねえ、甲斐くんってみのりちゃんが好きなんだよ」


 それはお昼御飯の時間だった。突然、友だちがそんなことを告げた。


 私は思わず、甲斐くんの方を見る。甲斐くんは、困惑した顔をしながら私の視線をそらす。


「甲斐ーー。そうなのか?」


 そう尋ねられた甲斐くんはただ黙ったまま、冷やかしてくる男子を見ている。


 正直、どっちなのかわからなかった。肯定も否定もせずに、ただ俯く甲斐くん。


 元から大人しい性格の甲斐くんには、どう答えて言いにかわからなかったのだろう。


 私も同じだ。私は甲斐くんと話した記憶がほとんどない。とにかく、甲斐くんはまったく目立たない男の子だったから、好きらしいといわれても、ピンとこない。


「でも、みのりちゃんって、盛岡くんがすきなんだよね」


「はい?」


「まじで? おれ」


盛岡くんは、首を傾げただけの私とは違い、オーバーリアクションをする。


「そうなのかーー。おれ、もてもて」


「いやいや、ないから」


 調子に乗る盛岡くんにおもいっきり否定したのだが、まったく聞いていない。


「みのりちゃん。けっきょくどっちが好きなの?」


「だからーー」


「そうだ。質問かえるよ」


 全然話を聞かずに話題を変えるわが友。

 まじで絶交しようかさえ思った。


「みのりちゃん。けっきょくは、緑と黄色、どっちが好き?」


 なぜ、突然そんな質問するのかと思ったが、黄色と答えた。


「そっかーー。やっぱり、盛岡くんがすきななのね」


 はあ? なぜそうなる!?


「えーい。おれ、もてるーー」


 お前は調子のるな!


 やたらとハイテンションになる盛岡くんの着ている服は、黄色というかやまぶき色のトレーナーを着ていた。


 暗い顔をする甲斐くんは、白いシャツの上に緑色のストレッチジャケットを纏とうというスタイルだ。


 どうやら、友だちは彼らが着ている服の色のどちらが好きかと聞いたらしい。


 いやいや


 服関係なくない?


 好き色も関係ねえよ!


 そんなことを突っ込んだ記憶はある。


 あれから、まあ

 いろいろあって


 結局、ふたりのどちらかの名字を名乗っている私がいる。


 さて、そのどちらの名字なのかは

 ご想像におまかせする。



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