いたって平凡なおうち時間
私のおうち時間というものは、とりあえずトイレにいくことからはじまる。
排泄をして、手を丁寧に荒ったあとにアルコールで消毒。
それから、顔を洗って化粧水をつける。
うがいをして、髪に櫛を通す。
身だしなみが整ったことを鏡で確認するとお風呂場の脱衣室にある洗濯機に汚れた衣類を入れる。スイッチを押すと洗濯機が動き出した。
それを確認すると台所へいって朝食の準備を始める。
食パンをトースターにいれて、焼いているうちに旦那を起こしにいく。
「早く起きてーー。朝ごはんよ」
ベッドで寝ている旦那にそう声かけをしている間にチーンと食パンが焼けるおと。
それを取り出して、食パンに大好きなブルーベリーのジャムをぬる。パン皿にのせて、テーブルに置く。
インスタントのコーヒーをカップに注ぎ、その上から牛乳を注いだ。
そんな作業を終わっても旦那はまだ起きてこない。
「ごはんできたよーー。え? まだ寝てるって? ちょっとーー。休みだからって寝てばかりいないでよー」
無理やり起こそうかとも思ったけど、まあ日曜日だから仕方がない。
朝が弱いのはいつものことだ。
そういうわけで私はひとりで朝食を済ませた。
それから、洗濯が終わった衣類をベランダに干して、部屋の掃除をする。
ふいに窓の外を見ると、雲ひとつない。
本当に天気がいい。
「あなたーー。はやく起きてよーー。散歩でもしましょうーー。え? でちゃだめ?
そうよね。いまは感染症が広がっているから、おうち時間を過ごさなきゃいけないのよね」
仕方がない。
わたしは掃除を終えると、日差しが照りつける窓辺で本を読むことにした。
夢中になって読んでいるうちに、お昼になった。
「お昼、ラーメンでいいわねえ。あなた」
旦那に承諾をえるとインスタントラーメンを作る。
「あなた、できたわよー。え? 食べない?
ちよっとーー、朝も食べていないでしょ。もう、寝てばかりね。わかったわ。もう、わたしが二人分食べるしかないわね」
わたしか仕方なくひとりでラーメンを食べたい。
それから、なにもすることがないので貯めていた分のドラマを一気見をする。
あっという間に夕方になって、夕食の時間になった。
「あなた、夜ご飯はあなたの好きなカレーよ。はやく起きてよーー。え? カレーも食べない? めずらしいわね。どうしたの?
具合でもわるいの」
わたしは不安になった。
どうかしたのかしら?
熱でもあるのかしら?
もしかして、感染症にでもかかったの?
わたしは、ベッドに寝ている旦那に近づこうとした。
そのとき、
ピンポーン
チャイムがなった。
だれだろう?
こんな時間に
わたしは、玄関の扉をあけた。
「あの、どちらさまですか?」
見たことのない男性が二人いた。
「警察のものですが、この部屋から異臭がしたという通報がありましたので、ちょっと調べさせていただけますか?」
なにをいっているの?
異臭?
そんなものするのかしら?
わたしは、ピンとこなかった。
─────────────
「次のニュースです。○○市のアパートにて、男性の遺体が発見されました。死後二週間がたっており、妻である○○容疑者を死体遺棄の容疑にて、連行されました。殺人についても追及する見込みです」
おわり
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