第6話
失意の底に沈んでいたイザベラはある日、校庭の中庭を腕を組んで仲睦まじく寄り添う男女に目を止めた。
それは王太子のアインハルトと最近身分もわきまえず幅をきかせているアリス・オコンネル男爵令嬢だった。
二人を見た瞬間、イザベラの頭に天啓が閃いた。イザベラはニタァと怪しげに微笑むとミーナを探しに走り出していた。
その道の先が自らの破滅に繋がるなんて思いもせずに...
◇◇◇
「あふぅ...」
アタシは欠伸を噛み殺しながら教室へと足を運んでいた。アリス・オコンネル、それがアタシの名だ。
貴族だけが通える魔法学園リリアスにこの春から中途入学した。その名の通り魔法が使える人にしか入学資格がない。実家は貴族の末端ではあるが、そこそこ裕福な男爵家だ。
男爵家で当時メイドして働いていた母さんに、男爵がお手付きして生まれた子がアタシだ。妾腹ってやつ? 一応、衣食住の心配はなく、贅沢とは無縁だけど特に迫害されることもなく、男爵家の離れに母さんと2人で慎ましくひっそりと暮らしてた。
まぁ、本邸に出入りすることは許されず、居ない者として扱われてたけど、それはそれで気楽だったから別に不満もなかった。
何れはどっかの金持ち貴族の愛人か、裕福な商人の妾にでも押し込まれんだろうなって思ってた。男爵にとっては都合の良い駒扱いだったみたいで、特に貴族としての教育も課せられなかった。
それが一変したのは、アタシに突然魔法の力が発現したからだ。きっかけは男爵家の嫡男が酒に酔ってアタシを乱暴しようとしたから。
無我夢中で抵抗してたら、いつの間にか嫡男がぶっ倒れてた。風の魔法で吹っ飛ばしたらしいってことが分かった時の男爵の喜びようったらなかった。
この世界、魔法が使えるのはほとんどが貴族なんだけど、貴族に生まれたからって全員が魔法を使える訳じゃなく、限られた人にしか発現しないんだって。
だから一家に魔法使いが生まれると、みんな祝福されるらしい。男爵も今まで存在を忘れてたのが嘘のように浮かれて、その場で魔法学園への中途入学を決めた。
アタシが17歳の時だった。
◇◇◇
ビリビリ ビリビリ ビリビリ...
教室に入ると、そこには一心不乱に教科書を引き裂いている女子生徒が居た。
え? なになにこの人? 怖いんですけど!
「あの...」
アタシが恐る恐る声を掛けると、
「あら、おはようございます」
と、とっても良い笑顔で挨拶する、ミーナ・バーネット伯爵令嬢が居た。
「えっと...なにをしてるんです?」
「ご覧の通り、あなたの教科書を引き裂いてます」
うん、そりゃ見れば分かるけど...ってか、それアタシのかいっ!
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