第38話 ラブ・ストーカーは突然に


「まっ、待ってフリージアちゃん」


「お姉様!早く早く!」



「ふふっ、サキ様は少し運動不足ですわね」


「くっ、これが若さ…ですか」




 大吉山の展望台までの坂道をひたすら登ってくったくたになっていた私は、フリージアちゃんとエルザちゃんのエネルギッシュな体力に慄いていた。


 いや、これでもね?結構、体力使う仕事を毎日のようにしてる訳ですよ。




 まあ、私としては数年前までJKしてた訳ですから、ここまで体力が衰えているとか思わないじゃないですかぁ〜普通に。


 …おい!そこ!数年前とか言っても年数に随分と振り幅ありますよね?とか、どうやら記憶を飛ばされたいようですね。



 ふっ、いいでしょう。



 っていいのは、殺らうたれる覚悟のある奴だけだ!とは名言ですわね。



 フフフ、ならば戦争だ。





 氏ね!!



「お姉様?」


「サキ様?」


「はっ!!」



 いけないけない。


 危うくダークサイドに堕ちる所だった。



 あ?


 もう遅い?


 堕ちるところまで堕ちきってる?



 アビスの深層からは人として戻れない?


 やかましい!誰が成れ果てだ!!


 壺ミーティ可愛いですね!



「お姉様?」


「サキ様?」


「あ、はい!なんで御座いましょう。お嬢様方」



「お姉様?どうされたんですの?言葉使いがおかしくなってます」


「疲れ過ぎて脳が混乱しているのかしら?」


「本当に何も御座いませんよ、お嬢様方。さあ参りましょう」



(`・ω・´)キリッ


 佇まいを整えて、手を胸に添えて一礼し、展望台へと促してみた。



「きゃあ!お姉様!素敵ですわ!」


「な、な、な、な、ふ、ふしだらですわ!」



 ふしだら?一体何が?等と遊んでいると、他の観光客が登ってきた。


 学生のグループの様だ。



 男子3人に女子1人とは、とんだ姫プ…んんっ!


 失礼!



 変わったグループだなと思いつつ見やる。



「つ、着いたぁ〜!」


「お?流石に有名聖地。俺らの他にも人居んぞ」



「お?ホンマや」


「あ、ほんとに…が、外国の人かな?綺麗な子達」



「え?……マルクスのねーちゃん?」



 じっと舐める様にうちのフリージアちゃんを見ている男子高生に気が付き、そいつの視線を遮る様に私は前に出る。



「…不躾な」


「あ、あれ?サキさんも?」



「……は?」



 唐突に自分の名前を呼ばれ、誰だこいつ?をあからさまに顔に出すと、その男子高生は突然、近づき馴れ馴れしく話しかけてきた。



「いやァ〜お久しぶりです。てかびっくりなんだけど!マルクスのねーちゃんらって、こっちにも来れんのな。いや、画面で見るよりもリアルで激可愛とか、ギャルゲーマーとしてはマジで滾るんですけど!!」


「ちょっと!それ以上、近寄んないでくんない?」



「え?」


「それ以上近寄れば、こちらも実力行使に移らさせて頂きます」



「サキさん、何言ってんの?」


「何処の馬の骨とも分からない輩に近寄んな!って言ってんですよ」



「…………」


「お、おい!丸!何やっとんねん!」



「いきなり軟派とかすげぇな、丸」


「えとえと、あのその…」



「こっちも女子おんねんで!いい加減にしいや!」


「あ、すみません。コイツ直ぐに連れてくんで勘弁してやって下さい。丸!行くぞ!」



 そう言って一緒に来てた学生達が不審な男子高生の腕を掴んで連れて行こうとしたけれど、その男子高生は微動だにせず、何やら考え込んでいるようだった。


 すると、突然何かに気付いたのか、唐突に声を上げる。



「ああ!!なるほど!」



 そして、これまた唐突に謝ってきた。



「すみません!そういえば、俺が一方的に顔知ってるだけでした!」


「はあ?何?ストーカーなの?」



「違う違う。って誰がストーカーだ!俺はギャルゲーマーだ!」


「……は?」





 一瞬で場の空気が凍った。











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