第19話 狂気は朝ちゅんと共に。

 ちゅんちゅん。


 ちゅんちゅん。


 鳥の囀りが聞こえる。


 早く起きなきゃ、今日も仕事が…。

 でも、両手と身体全面に感じる温もりが私をベッドに縛り付ける。


「うぅん」


 甘く甘えた声がする。


 スリスリと私の胸に擦りつける甘い香りの……


「ファッ!」


 勢い良く布団を捲ると私に抱きついたままのフリージアちゃんがイヤイヤしながら更にギュッと抱きしめてくる。


「あ、あれ?フリージアちゃん、帰らなかったの?」


 呆然としながら寝惚けた頭で思考を巡らしているとコンコンとドアをノックしてくる音がする。


「お嬢様、そろそろ起床のお時間で御座います。失礼いたします」


 ガチャりとドアが開く音がして、私は初めて画面越しではないアルミラと目が合った。

 アルミラの目の瞳孔が細まるのが見て取れた瞬間アルミラが叫ぶ。


「曲者!誰か!」


 瞬間、私の首にナイフが当てられていた。


「お嬢様と同衾をされるなんていいご身分でいらっしゃいますね。良い夢をご覧になられましたでしょう?それではさようなら」


 躊躇いも無く喉を切り裂こうとするマリア。


「マリア!!止めなさい!お嬢様の寝所を血で汚すおつもりですか!」


「むぅ〜」


 私、今マリアに殺されそうになった?


 諭されても、ナイフを外してくれないマリア。


「んん〜」


 騒がしくて起き始めたフリージアちゃんが私に抱き着いていた腕を離した動きでマリアのナイフが私の首筋を傷付ける。


「痛っ!」


 血が跳ねてフリージアちゃんの顔を汚す。


「あ」


 マリアのマヌケな声が聞こえる。


 その後からジワリと熱さの後から痛みが広がり首筋から血が垂れる。


「ん〜サキお姉様?」


「あはは、おはようフリージアちゃん、そして、さよなら」


 私はパタリとベッドに倒れた。

 身体が痺れて自分の身体が自分じゃないみたいに動かせない。

 マリアのクソ野郎!

 ナイフに毒でも仕込んでやがったか!?


 私はそのまま気を失った。


 …………



 ザワザワとうるさい。

 頭が割れるみたいに痛い。


 サキ:

「うぅ」


 フリージア:

「お姉様!サキお姉様!」


 薄らと目を開けると涙目のフリージアちゃんが目の前にいた。


 サキ:

「ふ……」


 上手く言葉が出ない。

 喉が乾く。


 フリージアちゃんに大丈夫だよと言いたいのに上手く話せない。


 フリージア:

「マリア!ちゃんと解毒したんでしょうね!サキお姉様が死んだら絶対に許さないから!」


 マリア:

「お嬢様ぁ〜申し訳ございません〜」


 フリージア:

「謝罪なんていらないわ!どうしてこんな事!」


 マリア:

「お嬢様の身の安全が第一優先事項でしたのでぇ〜」


 しれっとした言い方でマリアは言い放つ。


 フリージアは我慢ならないとマリアに指さし言い放つ。


 フリージア:

「マリア!貴女は私専属から解任です。私の見える所には現れないで下さい」


 マリア:

「な!お、お嬢様!そんなご無体な!」


 フリージア:

「他の者達もマリアを私に近付けないように、いいですね」


 メイド一同:

「「かしこまりました」」


 アルミラ:

「ほら、マリア行くわよ」


 マリア:

「そんなァ!納得いきません!」


 アルミラ:

「貴女今回やり過ぎなのよ!お嬢様があんなにお怒りになるなんて初めて見たわ。とにかく今はお嬢様から離れなさい」


 マリア:

「そんなぁ〜」


 落ち込みつつお嬢様をチラチラ見ながら部屋を出ていくマリア。


 そんな様子をサキはざまぁwwwwと思いながら……


 って何?これ。


 なんでテキストが目の前に流れてるの?


 サキは不思議に困惑していた。


 いや、困惑するだろ!

 しない方がどうかしている。


 どうなってんの?


 サキ:

「……しぁ」


 サキは状況確認しようとフリージアに声をかけようとするが声が上手く出せない。


 上手く出せないじゃねぇよ!


 サキは理不尽に文句を…


 やかましいわ!


 フリージア:

「お姉様。もう少しの辛抱です。もう少しお休み下さいませ」


 その言葉にサキはコクリと頷き目を閉じる。


 フリージア:

「ごめんなさい。お姉様」


 そう呟くフリージアの言葉を耳にしたまま、サキは眠りについ……


 瞼閉じても解説してくんじゃねぇ!

 眩しくて寝られねぇわ!


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