第13話 夜景を2人で眺めた。

「え〜と、フリージアちゃん?」


 はァ〜と突然フリージアちゃんは溜息を吐き出す。


 私が疑問に感じているとフリージアちゃんは語り出す。


「貴女、なんなんですの?私、これでも使用人にはそれ程、厳しい態度は取らない様、心掛けてきたつもりですが、だとしてもいくら何でも無礼が過ぎませんこと?」


「へ?無礼…ですか?」


「そうです!先程から貴女、私の事をい、愛しいフリージアちゃんとか!使用人ならお嬢様と呼ぶべきではなくて?」


「え?」


「私、間違った事言ってるかしら」


「あ〜なるほど。え〜とそうですねぇ」


(どうしよう。ここで使用人のフリを続けるか?否か)


 私は悩んだ末、正体をバラす事にした。

 だって、もしかしたら休日にフリージアちゃんとお外デート出来るかもだし!


「?」


「え〜と、フリージアちゃん」


「!貴女!また!」


「落ち着いて私の話を聞いて頂けますか?」


「な、何?急に真面目な顔して!」


「フリージアちゃん、私は貴女の家の使用人ではありません。そしてフリージアちゃんは今、ホワイト伯爵家にも居ません」


「は?どういう事ですの?」


「ホワイト伯爵家どころかロンバルド王国、いえ国どころかフリージアちゃんは別の星に来ています」


「……貴女、頭は大丈夫?」


 うん。フリージアちゃんはジト目も可愛いな。

 だからといって見蕩れている場合でもないか。


「いえ、これは冗談ではありません。証拠もあります」


 そう言ってリビングのバルコニーのカーテンを開き窓を開ける。


「どうぞ、ご覧下さい。フリージアちゃん」


 そして、フリージアちゃんをベランダへと招く。


 少し肌寒い外気に晒されつつ、フリージアちゃんは素直にこちらへと来てくれた。


「なっ!」


 そこは一面に広がる光の海と高層ビル群が見渡せる一角だった。


「な、な、な、なんですの?どうなってますの!」


「落ち着いて下さい、フリージアちゃん」


「これの何処が落ち着けますの!」


「フリージアちゃん!貴女は1度、此方に来てまた元の場所に帰ってます。だから自分の意思で何時でも帰れるはずです」


 フリージアちゃんの両肩を掴み、目を合わせて宥める。



「そ、そうなんですの?」



「前回のパターンだと、お休みになってもお帰り出来るみたいですけどね」


 そう言ってフリージアちゃんにウインクする。



「そ、そうなんですね」


 落ち着いたのか、また高層ビル群の光の海を眺めはじめた。



「綺麗ですわ」



 フリージアちゃんの方がずっと綺麗だよと叫びたい!

 ご近所迷惑になるから叫ばんけど。


 フリージアちゃんにずっと観させて上げたいところだけど、冬場の10階は流石に寒い。

 すぐにフリージアちゃんを部屋に戻さねば。



「フリージアちゃん。夜風は身体に障ります。そろそろ部屋戻りませんか?また一緒に温かい物を食べましょう」


 フリージアちゃんは夜の帳に、ほゥと白い息を吐くと徐ろに頷く。


「そうですわね」



 そう言って部屋の中へ入ってくれた。

 私は2人で中に入ると窓とカーテンを閉める。



「う〜寒、中に入ると外の寒さが身に染みるね」


「本当ですわね。ふふふ」



 にこやかな笑みを向けてくれるフリージアちゃんにまたしてもハートを撃ち抜かれる。


 私は今日何度フリージアちゃんに萌え殺されるのだろうか。



「お、お鍋の準備しますね。今日は鶏鍋です。期待してて下さい。あ、フリージアちゃんはそこのソファにでも座ってテレビでも見てて下さい!」


「てれび?なんですの?」


「あ、その四角いモニターです」


「こんなものを眺めて何か楽しいんですの?」


 私は、徐ろにリモコンでテレビの電源を入れ画面を映す。


「わ!わ!なんですの!人が箱に入ってますわ!しかも小人ですわ!」


 なんかベタベタなリアクションだなと感じ苦笑いしつつフリージアちゃんに説明する。


「フリージアちゃん、中に小人は入ってないですよ。これは離れた場所を眺めたり情報を得る為の媒体です。使い方は…」


 とフリージアちゃんにリモコンを渡し、チャンネルの変え方と音量の調節を教えて、私は鶏鍋の準備をはじめた。


「うっしゃ!めちゃんこ美味か鶏鍋作ったるでぇ〜!」



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