第12話 来ちゃった。

 あれから仕事だったのでめっちゃ気になったけど仕事にいった。


 お昼休み


「真島ちゃん、お昼行こ?」


「うん?社食?」


「私はお弁当だけど…そうだね、食堂ならお茶タダで飲めるし、いいよ」


「おけ。うーん、今日はカレーでも食べるかな」


「真島ちゃん、あんま外食ばかりだとその内、身体壊すよ?」


「いや、カレーは薬膳料理だから問題ないでしょ!それに私、家では普通に作るよ?唯、一人暮らしだと料理が趣味とかじゃないとお弁当までは作らんでしょ」


「そうかなぁ?でもお弁当とか作ってくると女子力上がって男が寄ってくるかもよ?」


「いや、営業とかなら分からんでもないけど、ウチの部署、男おっさんだけじゃん。しかも全員、既婚者」


「まあ、そうなんだけどね」


「そんなところで女子力アピっても意味ないでしょ」


「いや、もしか合コンとか同期飲みとかに誘われるカモじゃん」


「いや、めんどくない?そんなん誘われても」


「なんでよ!それじゃあウチらの出逢いは何時まで経っても訪れないじゃん!ウチらもう22だよ?彼氏の1人でも作んなきゃ、すぐおばさんだよ?」


「え〜?そんなに結婚願望あんの?木下さんは」


「真島ちゃんはないの?」


「いや〜どうだろう?なんか母親に電話でつ突かれる度に冷めていくというかなんというか。まあ、男性が嫌いとか言う訳ではないんだけどね?寧ろイケメン大好きまである」


「なら、出逢いを求めなきゃ!結婚して子供産んで幸せな家庭築いて、な夢持とうよ!真島ちゃん!」


「う〜ん、子供ねぇ。フリージアちゃんならウェルカムなんだけどなぁ〜」


「フリージア?誰?」


「え?知りたい?「カレーでお待ちの33番の方」あ!は〜い 」


 ………


「頂きます」


「で?」


「あ〜ん。んぐんぐん?」


「そのフリ何とかちゃんって何?」


 ゴクン


「フリージアちゃん?」


「そう、それ」


「あ、お茶サンキューね」


「どういたしましてって!ちょっと、真島ちゃん。そんなに話、引っ張っておいて面白くなかったら、はたくよ?」


「いや、なんで面白い話、前提になってんの?別にすべらない話とかしてなかったじゃん」


「いいから!気になるでしょ」


「いや、別に大した話じゃないよ?単なる乙女ゲーのヒロインって話だし」


「なんだ、ゲームの話なの?」


「まあ、そうなんだけどね。ちょっと聞いて下さいよ、奥さん!」


「誰が奥さんじゃ!こちとら彼氏募集中だよ!」


「いや、なんでそんな激しいツッコミ入れた?…必死過ぎて逆に引いたわ…じゃなくてフリージアちゃんのことね」


「そう!それな!」


 ビシッと指差ししてくる木下さん。


「いや、何なん?さっきから。まあ良いけど、そう、フリージアちゃん。なんて言うかぁ〜まあ、一言で言えば、むちゃくちゃ可愛い上にめっちゃ癒しなんよ、これが。乙女ゲーなのにイケメンそっちのけでヒロイン落としたい位まである!的な?」


「ん?何?真島ちゃんってもしかして百合の人なの?ごめんなさい私ノーマルなんで、貴女とは付き合えないわ」


「いや、なんで私、今、木下さんに振られてる的な事になってんの?違うから」


「あはははは!」


「いや、あははって…」


 ………


「あはは、ごめんごめん。いや〜でもなんか久しぶりにツボったわ」


「なんだかなぁ〜」


「ごめんって」


「はァ、まあいいけど」


「で?」


「で?」


「真島ちゃんはイケメンそっちのけでそのフリージアちゃんを愛しちゃって百合の世界にどっぷりな訳だ」


「だから百合じゃねぇって!私はフリージアちゃんが好きなの!フリージアちゃん以外の女に興味はないの!」


「……ねぇ真島ちゃん。それヤオイ本の常套句よ?男が好きなんじゃねぇ!お前だから好きになったんだって……ぷっ」


「なっ!」


「あはははは!もう、辞めてよ!あははは笑い死にさせるき〜?あはははは!お腹痛い!あはは」


 私はその後、羞恥に耐えつつ木下さんの笑い声を聞きながら無言でカレーを口の中へと駆け込むのだった。



 …………



「はあ〜もう今日は散々な目にあったよ。全く木下さんめぇ〜」


 グチグチと愚痴を呟きながら自棄酒用のウイスキーを何本か購入する。


「うーん。あ、そーだ鶏鍋にしよう。確か日本酒で作るとお肉柔らかくなるとか聞いたことが…」


 と言う訳で鍋用の白湯スープと鶏肉と日本酒パックを購入。


「野菜とかは実家から送られてきたのがまだあったよね。よしよし」


 意気揚々と自宅のマンションに辿りつき、玄関に入って第一声。


「たっだいま〜!愛らしくて優しい愛しのフリージアちゃん!今日も私に癒しをくんなまし!」



 ガチャりと廊下を抜けてリビングのドアを開くとそこは桃源郷だった。




「あああ、貴女、また酔っ払ってますの?そ、そういう恥ずかしいセリフは禁止です!」



 そう言って顔を赤らめて照れプンしているツンデレフリージアちゃんに私はハートを撃ち抜かれたのだった。

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