第5話 最凶のベビーシッター登場。

???:

「御館様。何故、暗部の私が子守りなのでしょう」


アシュレイ:

「言いたい事は分かる。だが、お前が適任だと考えた」


???:

「何故です?理由は教えて頂けるので?」


アシュレイ:

「お前が素早さと危機察知能力が高い事。そして、多少なりとも一般メイドより防御力が高く受け流しも出来るからだ」


???:

「………御館様」


アシュレイ:

「何だ?」


???:

「これっぽっちも意味が分かりません」


アシュレイ:

「だろうな。だが、娘の子守りをすれば私の言っている事が自ずと理解出来るだろう」


???:

「左遷…と言う訳ではないのですね」


アシュレイ:

「寧ろ、娘の、いや一族の守護者としての任を全う出来る筈だ」


???:

「……かしこまりました。御館様からの任務、承りました」


アシュレイ:

「うむ。頼んだぞ。やり方はお前に任せる」


???:

「……良いので?」


アシュレイ:

「ああ。妻にも了承を得ている」


???:

「かしこまりました。誠心誠意取り組ませて頂きます」


アシュレイ:

「頼む」


???:

「は!」



 ◇◇



 ああ、遂に暗部の方がいらっしゃった。

 だからと言って私のする事が変わる事は一切ないのが悲しすぎる。


「暗部が子守りとか。フリージアちゃん、まさか暗部入りしないよね?」


 普段は伯爵令嬢。

 しかして、その正体は闇に生き、闇を裁く暗部ヒロイン!とか何処の厨二病患者だよ。


 ちょっとカッコイイかもとか思って無いんだからね!


 私のツンデレなど誰にも得にならんな。


 まあ、明日の仕事に行けばその後2連休なので、ガッツリ進めたいところ。


 頑張れば後2年位進めるかな?


 そう。


 もうすぐフリージアは1歳になるのだ。


 こうして確実に乙女ゲーでイチャラブ出来る歳に近ずいているのを実感出来るのは素晴らしいな。

 達成感が湧き上がるというものだよ。


 もしかして、プレイヤーにヒロインへの感情移入を大きくする為にヒロインと一緒に人生を追体験させるのが目的なのかな?


 だとしたら、幼い頃に攻略対象に出会うイベントがある可能性が大いに出てきた。


 確か攻略対象がブックレットに載ってたよね。


「ええと、お約束の王子様に、宰相の息子、騎士団長の息子と学院の先生に…幼馴染の庭師の息子?」


 いやいや、庭師の息子は立場的に無いだろ。

 あ、駆け落ちEND的な感じのなのかな?


 それはそれで美味しいわね!


「あ、テンプレな悪役令嬢もいるのね」


 悪役令嬢エルザ・バード・フレグス。

 フレグス公爵家のご令嬢様である。


 但し、攻略サイトがないので、どの攻略対象で絡んで来るのかは不明。

 それとも、全ての攻略対象で絡むのかな?


 流石に庭師の息子は無いか。

 接点が無さすぎる。

 学院にも通わなそうだし。


 等と思いに耽っていたら、イベントが勝手に進行していた。


 ◇◇



???:

「お嬢様。新しく子守りになったマリアです。よろしくお願いします」


フリージア:

「あぁ〜」


マリア:

「ん〜?これってコミュニケーションとれるのかな?どうなんですか?お嬢様」


フリージア:

「ぶぅ〜」


マリア:

「ん〜?まあ、いいか。お嬢様!お嬢様は大分首が座ってきているんですよね?」


フリージア:

「あぁ〜う」


マリア:

「そうですか。それはよう御座いました」


フリージア:

「うぅ〜あ」


マリア:

「そうですね。私もそう思いますよ」


フリージア:

「きゃは〜」


マリア:

「そうでしょうそうでしょう」


フリージア:

「あ〜?あ」


マリア:

「あ〜可愛いいなぁ〜」


フリージア:

「う〜あ〜う?」


マリア:

「うぅ。手足バタバタしてる。本当可愛いなぁ〜。う〜ん。これって抱っこしてもいいのかな?」


フリージア:

「あ〜う。きゃは」


マリア:

「御館様も奥様も許可されてたし、良いよね?」


フリージア:

「きゃ〜う」


マリア:

(抱っこしたった)


マリア:

(めっちゃくちゃ可愛い上にめっちゃ暖か柔らかい!しかもええ匂い!)


マリア:

「可愛ええ」


 その時、危機察知能力が発動し、顔を仰け反らせる。


マリア:

「な!」


 お嬢様からのパンチが、顔面を掠める。


フリージア:

「きゃはきゃは」


マリア:

「元気ですねぇ。お嬢様は〜」


 それからも危機察知能力が何度も発動し、その度に回避する。


マリア:

「なるほど。これが御館様がおっしゃっていた理由ですか」


 お嬢様は何度も抱っこから抜け出そうとキックとパンチをして合間に指ちゅぱするを繰り返し、ついに疲れたのかそのまま私の腕の中でスヤスヤとお休みになられた。


マリア:

「ヤバい。この子お持ち帰りしたい!!」


フリージア:

「ん〜にぁ」


マリア:

「うっは!鼻血出るわ!」


 名残惜しくもベッドに戻しその寝顔を堪能しつつ、御館様様に定時報告へと向かう。


…………


アシュレイ:

「おお!そうかそうか!やはりお前に頼んで正解だったな。これからも頼む」


マリア:

「はい。お任せ下さい、御館様」



 澄まし顔で内底から溢れそうな感情を抑える。


マリア:

(ヤバいよね!これって天職ってやつじゃない?天使のお守りが天職で無くてなんだと言うのだ!ビバ!天国!)


 ◇◇


 私はテキストに流れる暗部ベビーシッターのマリアの心情を読みながら目が据わっていく感覚に襲われる。


「なんだろう。合わせちゃいけない奴と合っちゃった感がヒシヒシとするのだけど。大丈夫なのか?此奴。なんだかフリージアちゃんの未来が心配だよ」


 そうして、私はゲームをそっ閉じ強制終了したのだった。


「よし、寝よう」


 私は頑張る事を諦めた。


 明日、朝イチでやろ。



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