マブダチ


「チャッチャチャラララーラーラーラッラー・ラッララーラーラー♪ スペシャルトムクルーザーマグナムトム定刻通りに只今参上! そしてぇ始まるウルトラショーーターーイム!! は〜い、ダ・ン・ナァ〜♪ あっぶなかったね〜 でもでもでもでもでも、このハイパートムレックスダイナマイトトムが来たからにはもーう、ダイコンテロガ級に乗ったつもりで安心してちょーーーーーーだい! ピア○売ってちょーーーーだい!」



「ただただ、うっざいニャン……」


「……ワン」


 初代ツイ○ビーの曲じゃん。


“名BGMですからね。でもトムレックスってアスベストのことですけどいいんですかね” 


 似たようなもんだろ。


 

 硝煙を立てる背中に露出する一丁のトンプソンは長銃身のヘビィバレルを持ったまさかのスナイパーライフル形態。岩壁の上でそれを誇らしげに、照りつける太陽に掲げてアピールするガゼル。そして隣にいるのはうんざりした顔の二体の機獣、ポチとタマ。

 出合いに錫乃介は口を開くことなく、笑みを溢すことなく、駆けることなく、三匹のお共が歩み寄るのを座して待つ。そして先程まで一人で騒いでいたトムソンガゼルに向かって発せられた言葉は、感謝の言葉か、再会できて昂ぶった感情の発露か。



「なんでお前タケモ○ピアノなんか知ってんの?」


「一声目それっ⁉」



 トムのツッコミにやっと笑みを溢したかと思うと、ポチとタマの頭を撫でてやる。



「ポチ、タマ助かったぜ」



 久しぶりでもないが、こうして会えたことをお互い本当に喜んでいるのが伝わる。



「トムにも!」


「おまえら、どうしてここに?」


「ナチュラルに無視ぃ!?」


「冗談だよ」



 と言いつつ照れ隠しにトムにはデコピンを与える。

 ポチの話ではあの砲撃の後、地上に出るのは危険と判断し地下都市を進むことにしたそうだ。日頃探索しておいたとはいえ、地下に広がる迷宮は広大かつ複雑。機獣としての能力を持ってしてもなかなか調査は終わらなかったそうだ。その際、今いる一帯の地下に大きな空間が幾つもある、以前いたカッパドキアとはまた違った趣きの地下都市を発見したそうだ。そこまで遠くはなかったので、これ幸いとここに一次避難してきたのだという。ただこの場所非常におかしな特徴があるという。



「壁という壁とか柱とかモニュメントが人骨でミイラも山の様にあったニャン」


「人数にして数百万人単位、それも数百年前の骨だワン」


「ものすごい広い地下大聖堂もあったトムね〜」


「なぁ、それってカタコンベじゃねえか?」


“人骨で出来た壁や柱はフランスのカタコンベ・ドゥ・パリ。大聖堂というのはおそらくイタリアのサンジェンナーロ・カタコンベでしょうね”


 ってことは何か、この地下にヨーロッパ中のカタコンベが広がってるのか?


“今までのスクラッチの傾向からヨーロッパどころエジプトもあるかもしれません”


「錫乃介、とりあえず皆んなに会いに行くワン」


「そうだな、ワシャワシャして挨拶するか」

 



……………………

 


 ジャノピーを隠し、岩山にぽっかりと空いた穴から地下に降りた錫乃介は機獣達と戯れという名のフルボッコにされながらもカタコンベを見渡せば、そこはまさに冥界(ネクロポリス)の名にふさわしい人骨で出来た地下世界が在った。

 

 「すんげぇなぁカタコンベ! ビバカタコンベ! 骨だらけだわ! 骨の洞窟! 骨の世界! これ全部アンパン○ンのホラー○ンだったら相当うるせぇだろうな」


 「あ〜わかるわかるトム。こいつら全員ホラーホラー言ってたら、オイラ達眠れねぇトム」


 「何で語尾まで知ってんのお前?」


 「人間の残したアニメはそりゃもうドハマリで、たぶんそのせいで覚醒? ってやつをしたんすよ〜 あと関係ないけど、変身とかもトムならできる!って信じてやってたら出来るようになったんすよ〜 かめはめ○はまだなんすけどね〜 それで思い出したトム。サンドスチームどうなったトム? 親玉ぶっ潰してきたトムかぁ? もう、オイラも体調さえ戻ってたら一緒に行ってサンドスチームで大暴れしてやったトムよ〜。でも、今回はちょーーっと初回飛ばし過ぎちゃったトムねぇ。もう少し新人達活躍させてやればよかったトムよ。あぁ、でも地下都市の警備や防衛もあったし新人君にはまだ早かったかもしれないトムね。あ〜ダンナに見せたかったトムよ。トムの真の力を。私はまだ後一回変身を残している、この意味がわかるか……? とか卍○とか、ってやりたかったトムね〜あ、言っちゃった。これトムの秘密だったのに言っちゃったぁ。ダンナァ内緒にしといてくださいよ〜トムのとっておきだからトム」


「トムの変身なんて皆んな知ってるニャン。ロケット弾形態になれるって知られたらどーしよーって皆んなに吹聴してたニャ」


「あーーー! 言っちゃ駄目トム!」


「でも、口径までは大きく出来なくて火力が全然出ないにゃ。ガトリングの方がマシニャ」


「これから大きくなるトム!」



 ……なぁナビ、実はこいつ天才なんじゃないか?


“変身一回だって今までお目にかかったことないのに、トンプソン、シックスマシンガン、ガトリング、スナイパー、ロケット弾で五形態ですからね……ユニオンでも別機獣扱いにしてることを考慮しますと否定できませんね”


 認めたくはないがな。



「す、錫乃介、肝心なことを聞きたいワン」


「おう、サンドスチームだな。俺の抜群の交渉力を持ってしても現状維持が限界だったわ。つまり、これ以上の殲滅はもう行われない。とはいえ討伐リクエストや賞金稼ぎのハンターは来るだろうし、交易をするにはまた街を造って認めてもらわなきゃならない」


「それでも充分だ、また少しずつ積み重ねればいい。丁度この地下都市を利用すれば隠れながら街を造れる」


「でも、建造物は難しいトムよ。細かい作業は小型機獣がやるとしても、大型資材とかどうするトム?」


「適任者いるニャン」


「そうか、ジョディとアレキサンダーがいるワン」 


「そうだトム! 最近会ってないから忘れてたトム!」


「なんだ? 凄い奴らなのか?」


「バケットホイールエクスカベーターの機獣ニャン。ウチ達が来る前から夫妻でこの周辺にいたニャンよ」


「ふ、夫妻、だと……あの化物が……」


「会ってるワンか?」


「ああ、この前街道に1体陣どってたぞ」


「たぶん子供も近くにいたと思うワンよ」


「子持ち……だと……」


「街道にいるなんて珍しいニャン。夫婦そろって恥ずかしがり屋だから、見つからないようにいつも街から遠くにいるのニャ」


「恥ずかしがり屋だと……あの図体で?」


「夫妻は身体は大きいけど、とても優しいニャ」


「そ、そうか……なら懸念だった他のハンターの襲撃とか大概は大丈夫そうだな。なんせあの巨体だ、狙うやつはそうはいないだろう。無駄な争いは無い方がいい。サンドスチームの艦長もマブダチになったから報告しておく」


「宜しく頼むワン」


「よし、俺ができるのはここまでだ、あとはお前たち次第だ。街の建造と発展を心から祈っている」


「ケモナーの未来のためワンね」


「そうだ、わかってきたな。 ケモナーに黄金の夜明けを!」


「……何で万歳してるトム?」


「お前らもやるんだよ」


「四足歩行だからできないワン」


「できるけどやりたくないニャン」


「トムでも恥ずかしいトム」


「いいよ……じゃあもう行くから。あばよ」



 せっかくの再会であるのに不完全燃焼な別れをするがいずれまた出会う時が来る。その時は余計な挨拶はなくヨウやオウといったひと言だけ。古い友人とはそんなものだ。彼らとは会って間もないがそれくらいの絆が既に出来ているような気がしてならない。サンドスチームに戻る道のりで錫乃介はそんな感覚を久しぶりに味わうのだった。



戦果

 野良ドローン1体×50=50

 カラシニャコフ4体×200=800

 ラスティスネイル4体×250=1,000

 ウォン釘バット2体×100=200

 M2ホッパー1体×500=500

 

 ゴリゴリラーテル1体 10,000c


 計12,750c


 レンタル荷台 1日400c×2日間=-800


 持金1,928c


 収支13,678c




サンドスチーム編一部 終

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