魔法使いにはなれなかった
宇宙人の技術は電脳の他何ができたんだ?
"色々です。反物質生成と制御 恒星間航行 生体有機コンピュータ メカトロニクス 薬学 バイオノイド 高性能自律思考AI 亜光速飛行 etc"
うーんどれも、果てしなく先の技術ってわけじゃ無いんだね。実験段階や理論上はできていたりするものばかりだね。
"この辺りが当時の工学技術の限界といったところでしょう。江戸時代にパソコン作る技術や知識持っていても作れないでしょう?"
まーな、先ずは真空管からだろうな。
"これ以上先の技術を理解するとなると、結局は地道な基礎研究の積み重ねが必要でした。しかし道先は与えられたわけですから、地球の科学の伸びは飛躍的に進歩するはずでした。その矢先です"
第二の人類史を揺るがすことが起きたと。
"そうです、ではまた明日"
え、おいおい引っ張るなよ。
"もう、3時間もカンバセーションしてますよ。少し休憩しましょう。知恵熱がでますよ"
え!もう昼か!色々やる事あったんだよ。
ドンキーホーム行って、ゴダイゴ行って、ハンターユニオン行って、サウナ行って…
そう言って立ち上がった錫乃介は、とりあえず服を購入する為に、ドンキーホームへと向かった。
お、いるねサイクロプスバイザーさん
「これはこれは、昨日は電脳のご購入ありがとうございました。早速使われてますね。具合はいかがでしょうか?」
「思ったより性能が良くて驚いたけど、ナビが個性的ですね。」
「それはようございました。個性的なのは高性能な証拠ですよ。」
「ものは言いようですね。それはそうと、服買いに来たんですけど。いいのあります?」
「どのようなものが?」
「もう昨日夜寒くてさ、とりあえず防寒着と、砂がひどいからマント見たいなやつと、下着下さい」
「まさか、昨日はその格好でずっと外歩いていたんですか?」
「そうなんですよ、ゲルには泊まったんですけど寒くて」
「ゲルに泊まらなかったら、下手をすれば凍死してましたよ」
バイザーは驚きながら、あれやこれやと服やらなんやらを持って来てくれた。
「これがフード付きマント。ケブラー繊維でできていますので、防刃はもちろん、防弾にも多少効果あります。柄はご覧の通り砂漠迷彩です。
それから、ベージュのロングオーバーのシャツに綿パン。後ボクサーパンツ5枚。防寒用にパイロットジャケット。靴もそんなコックシューズじゃいけません。はい、コンバットブーツと日常履き用のサンダル。それにカバンもお持ちで無いようなので、これらを全部詰める用にシングルショルダータイプのキャンバスバッグ。
はい、全部合わせて1,000cです!」
「すげぇ!こんなカオスな売り場から迷わず持ってきて、尚且つ言ってないのまで全部揃ってる!買った!」
「まいどあり!」
残金2,414c
「そういえば、うちの"トーキングヘッド"にはあって行かないんですか?」
「トーキングヘッドって、事務所にいる社長のこと?」
「会社じゃ無いんで、社長じゃないんですが、まぁそうです」
「いいです、あの扉開けたくないし」
「ごもっとも」
「それじゃあね」
「ありがとうございました。またお待ちしております」
ドンキーホームを後にすると、次は隣にあるハンターユニオンに向かった。ハンターユニオンの建物は正面の入り口を中心に左右に50mほど施設が伸びている。打ちっぱなしコンクリートで重厚な造りであるが、所々破壊されており中がむき出しになっている。銃痕も数大きく見受けられる。
ここでサバゲーやったら面白そうだなぁ、とくだらないことを思いながら中に入ると、3階まで抜けている吹き抜けの広いホールだった。そこには銃器を担いだ優男や超人ハルクのような筋骨隆々の者が談笑していたり、ミーティングをしたりしている。
入り口すぐ右手にカウンターの受付が二つあり、アニメ調の顔をした等身大のメイド服を着た可愛らしい人形、アンドロイドだろうか、がそれぞれ中に居た。アニメ調の顔をしてなければ、リアルに人間かと思うくらい精巧だ。
こいつが受付嬢か?と思いながら、濃茶のショートカットのメイドに声をかける。
「あのーハンターユニオンはこちらで?」
「はいそうです。ようこそハンターユニオンへ。ご用件はなんでしょうか?」
おお、喋ったよ。一応瞬きとか笑顔とかするんだな。
そういや俺なんでユニオンに来たんだ?この世界のことを知るためだったけど、ナビに聞けば大概のことは解るようになったしな。
まぁ、ハンターの事でも聞いておくか。日銭を稼ぐ手段を見つけなきゃならないし」
「色々聞きたいことがあってね」
「え、駄目です」
「は?」
「プライベートな事は今夜2人っきりの時にしてください」
今夜って、いきなり遠回しに誘われてるよ俺。
「いや、あのハンターについて知りたくてね、何処行けば良いかな?」
「私について知りたくて?ですからそーいう事は仕事の後にして下さい。今は人の目があるから不味いです。あ、何でも無いんですウララちゃん!」
なんか、隣の青髪ロングのメイドロボに誤魔化してる。
「君の事はいいからさ。ハンターについてね…」
「酷い!私の事なんてどうでも良いなんて!
私がセクサロイドだからって、またそうやって捨てるのね!」
セクサロイドなのかよこいつ、自分から暴露しやがった。
「そうやって何人にも何人にも何回も何回も捨てられ、あなたもまた捨てるのね!」
「いや、捨てる前に拾ってもいないから。使用済みダッチワイフなんて、いくら可愛いくても拾わないよ」
「な、な、なんてこ、と、を……」
「さっきから聞いてれば、おじさんなんなの!エミリンが可哀想じゃない‼︎」
ウララちゃんも参戦してきたーー!
さっきから聞いてるならどっちがおかしいのかわかるよねー君。
「そうやって、自分が楽しむだけ楽しんで、飽きたらポイっとゴミを捨てるよりも簡単に放置するんだから。エミリンみたいな良い子を!これだから男って!」
「ウララちゃん、いいの、何人か何十人かもわからない男に抱かれた、汚れた女の子はこれが末路なの。あーーーん!」
「よしよし、エミリンは悪く無いからね」
なんか、背中ポンポンしてる。
「じゃあ、俺からも言わせてもらうがな、何人も何十人にも抱かれている、セクシー女優だって結婚して子供いるやつだって大勢いるんだぜ。別にそんなの気にしない男だって沢山いるんだよ。エミリンの男の扱いがダメなんじゃねーのか!」
「なんですって!」
「俺わかっちゃうんだからね、エミリンあれだろ、自分に言い寄ってきた男何人もいるだろ?そのくせ"自分はこの人じゃなきゃ駄目なの"とか言って借金とか持ってるDVのロクでも無い男の方いくタイプのダメ男好き女だって」
「なんでわかるのよぉーー!」
「俺ね昔バーテンダーだったせいか、そーいう奴いっぱい知ってんだよ。自らキリングフィールド突っ込んでいく馬鹿。ある女なんてさ、可愛いから言い寄ってくる男沢山いてよ、まぁチャラい奴ももちろんいるよ。でもその中に男から見ても良い男だって奴さえも鼻にもかけないの。
んで、その子が付き合っていた男ってのが、オレオレ詐欺と闇金グループのリーダーで妻子持ち。俺聞いたのよ、彼のどこが好きなの?って。そしたら、
"他の人には恐いみたいだけど、私に凄く優しいの"
だって!
終いにはその男パクられて刑務所入れられて、それ知った女は
"なんであんな優しい人が〜"
とかって泣いてんの。もう、大爆笑だったね」
「エミリンそれって、2人前の彼氏じゃ…」
「あーーーー!けんちゃーーーん」
「ほーーらみろーーー!少しは自分の男の見る目を養えよー!ダメンズエミリン!」
「大丈夫だよ、エミリン。どうせこいつは、鼻にもかけられない側の1番下っ端の、男と女のやりとりのステージにすら上がれない、モテない童貞なんだから」
「んだとコラーーー!やんのかてめぇ!!あぁそうさ、モテないさ!世界モテない男ランキングやったら上位に食い込む自信あるわ!だがな!童貞は30になる前に捨てたわ!29歳10ヵ月だったがな!」
「怒り狂って何暴露してんのかしら、変態ね!」
「貴様ぁ!ウララって言ったな!お前は自分より不孝な女の友達の味方をすることで、自分の自尊心を保つタイプだろ!不孝な奴の横でほくそ笑んでいる、そういう陰険な女だろ!」
「ウ、ウララちゃん?」
「な、そんな…エミリン信じちゃ駄目よ!この虚言癖!」
錫乃介が受付嬢達と戯れていると、背後に近づく影があった。
「すいません、うちの受付が何を…」
「何じゃねーよ、この馬鹿女どもと己の存亡をかけた戦いをしてんだよ!」
「そういうことでしたか、すいませんご迷惑を。偶に乙女回路に変なスイッチ入って妄想モードに入っちゃうんです」
「どこが乙女じゃ、アバズレ回路だろ!って、貴方どなた?」
ひどすぎるーーー!大丈夫エミリンただの変態童貞虚言癖の戯言だから、という声が聞こえる中、迷彩柄のスーツを着こなし、センターラインで髪を分けた痩せギスの男が立って居た。
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