網目

「僕身体が弱くて。今日もいつもみたいに座り込んでたんだけど。義春君が声をかけてくれたんだ。できることはありますかって。だから言ったんだ。ナイスバディな君に後継者になってほしいって」

「頼まれたら引き受けるのが人情ってもんだろうよ」

「あ。義春君、歯を隠して。浄化して天使になりそう」

「おお、すまない」

「ほらみろ。義春は頼りがいがありすぎて、何でも面倒事を引き受けるからな。こいつと結婚なんてしてみろ。苦労飯を食うだけの人生で終わるぞ」


 目を輝かせる悪魔に、あっはっはと快活に笑うよっちゃんに、こいつの結婚相手は見た目に騙されやすいやつか、夢見ちゃんだろうなと憫笑する唯織に、悪魔が好敵手ですかと微笑を浮かべる九尾の妖狐。


 カオスなこの場に私は相応しくないですよね。いてはならないですよね。

 離脱しましょうそうしましょう。


「はいはい。必要なキャストが勢ぞろいした所で、私は退却しますね。そろそろ喫茶店「ババンバ」に行く時間ですし」

「なんだ、かれん。まだ行ってたのか?」

「あっはっは。かれんちゃんは小さい頃の誓いを有言実行していてえらいぞ!」

「そうなんですよー。だから、唯織。早く呪いを解いて、天使と悪魔の性質を兼ね備えたパーフェクトヒューマン、よっちゃんにすべてを任せなさい」


 最終兵器。

 にこやかの裏に絶対譲らない意志を織り込んだ笑顔を繰り出した。

 次の瞬間、私は悲鳴を上げていた。






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