ござ目

「肩が外れそうだから、そろそろ降りてもらっていい?」


 見た目に反して重みのある唯織に軽く言えば、不気味な笑いが返って来て、口元が引き攣った。


「呪いをかけた」

「え、ああ。九尾の妖狐に結婚を諦めなければ何か発動する呪いをかけたんだ。唯織。実力のある陰陽師だったんだね」

「九尾の妖狐にじゃない」

「はい?」

「おまえにかけた」

「はい?」

「私から半径五メートル離れたら、髪の毛がその時期折々の花に変化する呪いだ。常に虫と一緒だぞ」

「いや。いやいやいやいや。あんたなにしよっとね!?」

「蜂とか虻とか危険な虫は来ないようにしといた。友達だからな」

「いい顔すんなやなんで私がそんな身を挺して止めなくちゃいけないんだ?」

「友達兼婚約者だからだろ」

「その設定いつまで引き摺る気だ?」

「永遠?」

「首を傾げんな可愛い!!」

「どうも当然だけどな」

「はいはいはいはいはい。可愛い唯織ちゃんはさっさと呪いを解いてよっちゃんとこに助けを求めに行ってください」

「よっちゃんとは誰ですか?」

「唯織のめっちゃ仲いい人です」


 力んで九尾の妖狐に幼馴染昔話をしようとした時だった。


「悪魔にスカウトされちった」


 舌を上唇に乗せてウインクをするよっちゃんが、背中に黒い翼を生えさせる、青白くひょろっちい、全身黒づくめの悪魔を携えてやってきた。


「よっちゃんんんんんんんん!?」






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