輪弧

「全身から太陽光線出しそうだし」

「まあな」

「真っ白い歯はあらゆるものをすべて浄化しそうだし」

「まあな」

「俺に担げないものはないってくらいマッチョだし」

「まあな」

「何で私の所に来た!?」

義春よしはるに嫁に行くくらいなら、おまえの方がマシだ」

「本気か?」

「何だ?女同士なのが嫌なのか?」

「恋愛感情あんの?」

「ない」

「ですよねー」

「何だ?あったら前向きに考えてくれたのか?」

「いやー。完膚なきまでに断るけど」

「だよな」

「わかってんなら来ないでしょ」

「いや。結婚を考えたらおまえしか思いつかなかったからな」

「そんなに嫌なの?」

「ああ」

「それは残念ですね」

「そうそう。九尾の妖狐に嫁ぐなんて。最初は最悪かもしれないけど、大抵はハッピーエンドを迎えるって」


 いや私は誰としゃべっているのか。

 声音の違いにやっと違和感を覚え、振り返ってみれば。


「お迎えに上がりましたよ、唯織さん」


 如何にも、敵か味方どちらか判断がつきそうにない、妖しい雰囲気と冷気を惜しみなく吐き出す、糸目で細身の男性がいた。




 いやあの。すごい殺気を感じるのは気のせいですよね?






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る