第8話 王政の問題
「オズワルド様、そろそろ本題へどうぞ」
ふざけあっている二人を見かねてフィリップがそういった。
「そうそう、今日ここに呼び出したのは他でもない結婚の話だよ」
「え?王政の説明をするんじゃなかったの?」
そうスミラが問う。
「本当のことをいうとスミラが恥ずかしがって連れてきてくれないのかと思ったんだよぉ」
どうやらスミラは異性の話となると極端に態度を変えるらしい。その影響か結婚をする予定と知らされてからというものの、スミラがヤケに冷たかった。
「当たり前でしょ、誰のせいでこうなってると思ってるの??」
スミラ父――オズワルド王は娘を溺愛するあまり、幼少期は自分以外の男を極力近づけなかった。スミラはかなりそれを気にしているらしく、しょっちゅう話題に上がる程だ。
「まあまあ、怒んないでよ。それではハルヤきゅん話を始めるよ」
「まずだけど、結婚する必要性については知ってるよね?」
「はい、王族の跡継ぎがいなくてすぐ継承する必要があるからですよね」
「そうだ、その理由というのは女王の場合、既婚が条件なんだよね。僕ちんが結婚してもとか思ったけど、スミラに断られてしまってね」
もちろんこの世界でも親子の結婚は認められていない。スミラは父親の変態発言に、かなり生理的嫌悪を感じているらしく顔を歪めた。
「先週がスミラ17歳の誕生日だったから丁度いいねってことでチミになったんだよ」
17歳初めて会った人と結婚、とか言う軽いノリで結婚相手を決めたのがこの王様というのなら納得は行く。
それにしてもこの王はふざけている。何よりちょくちょく挟む、僕ちんとかチミとかがとてもじゃないが耐えきれない寒さを誇っている。
「それで、結婚してからのことを説明しておこう」
ちなみに今の所、同居ということしか把握はできていない。
「何個か君からの要望を聞いておきたいんだけどいいかな?」
「お、お願いします」
こんな破天荒――おかしな王からの質問など何を聞かれるかわからない、迂闊に素性をさらさないように気をつけたいところだ。
「結婚したら名前はもちろん知られる、顔とか特徴とかの詳細は隠せるけど、どうする?」
「隠します」
ハルヤは食い気味に即答した。ハルヤは不登校気味ではあるがただの高校生、これから異世界で行きたい所、やりたいことは出し始めればつきないほどある。それを鑑みれば、自由がなくなるようなことは極力控えておきたい。
「わかった。つぎは住む所についてなんだけど、この3つから選んでもらえるかな?」
そう言って3つの絵を差し出した。
不動産顔負けの物件紹介をかますオズワルド王に対し、ハルヤは至って冷静だ。当然これが人生初の物件探しなわけで、その大切な初めてを相手のノリと、勢いで決めて後悔することだけはなんとしても避けたい。
物件は3つとも系統は違えど、王城からは同じ距離になっている。
一つ目は「洋!!!」というほど、洋が目立つ家。大きさは現実世界にある豪邸を有に超える大きさ。庭付きで使用人もつくらしい。
二つ目は異世界のイメージとは離れてくるが、案外和風な家だった。どうやら中には和室、襖等もあるらしく若干ホームシックになりかけた。
三つ目は現実世界では見慣れない家だった。家、と言うよりは秘密基地だったり研究施設といったほうがわかりやすいほどのメカっぷり。屋根は開閉式らしく、某野球場を連想させる。
その中からハルヤが選んだのは・・・・
「これにします」
ハルヤが指していたのは2つ目、和風な家、何より現実世界に似ていたところが決めてとなった。
「それでは、家も決まったことだし、ハルヤくんには今ある問題を伝えておこう」
きゅん付を急にやめ、真剣な面持ちで話始めた。
「かれこれ10年ほど前から国民は今の王政に不満を持ち始めている。理由としては、継承者が女王ということ、ダンジョンに具体的な解決案が出ていないことなんだ」
この世界においても、女性がトップになることに対して抵抗がある人は一定数いるらしい。
「ハルヤくんには国民をできるだけ安心させてほしい。やり方はどんなでも構わない。無理言ってるのは重々承知している、でもこの問題は今解決するしかないんだ」
王の言葉からは娘を思う気持ち、国を、国民をより豊かにしたいという決して軽くあしらって良いものではない何かを感じた。
ハルヤには人を思う気持ち、それを裏切られた時の痛みがわかる。決して同情したからという理由ではなく、
「わかりました。必ず俺が解決してやります」
スミラ、ついさっき出会った王にだって受けた恩は数知れない。それを返さずして女王を支える、国を率いる立場は務まらないと思ったからだ。
「ありがとう・・・・ありがとう・・この恩は必ず返すよハルヤくん」
+++++++++++++++++++++++
「はあ、解決したいとは思うけど、何をしたら良いんだ・・・・」
先日、ロゼと見た反王政派の話を考えると到底一筋縄では行かないようだ。
「私も手伝うから、なんでも言って」
「そういえば、今の王って何歳ぐらいなんだ?」
「今年で56歳よ、それがどうしたの?」
「いや、まだ出来そうだけど、やっぱり支持されにくくなったからか?」
現実世界であれば56歳から政府に配属というのは決して珍しくない、まだまだ現役の年齢だが。
「そうね、このままやっていてもうまくいかないだけだから・・・・」
スミラは無理して明るくしようとしていたが、やはり父親が国民から嫌われているというのは決して気持ちの良いものではないだろう。
「明日、作戦会議を開こう、具体的な案はそこで決めることにする」
「わかった、何ができるか考えておく」
+++++++++++++++++++
「ロゼ、ちょっと今日は外で食べてくるわ」
「わかりました、ロゼもご一緒しま、」
ハルヤの表情を見たロゼはそこまで言って止めた。
ハルヤは反王政派と話すことにした。
――何が不満なのか、それをはっきりさせるんだ・・・・
「相席いいですか?」
そうハルヤが話しかけるのは酔っ払った酒臭いおっさんだった。酔った勢いで大声で王政の文句を爆発させていた所を見つけたハルヤは相席することにした。
「おお、良いぞ良いぞ、一緒に飲もうぜ。あんた16歳は超えてるだろ」
どうやらこの世界では16歳から飲酒が認められているらしい。ハルヤは初酒を交わす人は運命の人と決めているため丁重にお断りした。
「やっぱりな、王は国民に優しくないな!!物価も高いしよぉ収入が少ない冒険者にとっちゃ困ったもんだよ。最近はつぎの王は女王にしようとか言いやがる、全くふざけてるのかよぉ!!」
経済的問題というのはどの国――どの世界でも存在するらしく、それによって王政に不満を持っている人は少なからずいる。これは画期的な政策が必要だと考えた。
現実世界は過去に経済的な問題を解決しようと戦争を行った。しかし、あまりにも犠牲者が出たため本来の目的からずれてしまった。
――やはり軍事政権は上手くいかない、民主主義に変えるか・・・・
過去戦争に敗北した国のなかには民主化を行い、またたく間に成長した国が存在する。国民の意見を聞き、一人でも多くの不満を解消しようという考えだ。
翌日
「それじゃあ始めようか」
スミラとハルヤのドキドキ王政高支持化作戦会議、と勝手に題し会議が始まった
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