第7話 王の素顔
異世界召喚から一週間がたった。ハルヤは毎日ダンジョンに行き、今ではレベルは2に上昇していた。大抵、1から2に上がるのに一ヶ月かかるというのだから上昇ランクは伊達に高いというわけでもないようだ。
所持金は相変わらずの浪費っぷりの影響でほぼない。一週間そこらで治るものではないものとしても学習しない男である。
ある日スミラからこんな話があった。
「あ、そうだハルヤ、今日は私と一緒に行動してもらうからよろしくね」
「スミラと?どこへ行くんだ?」
ハルヤは今日もロゼとダンジョンに行くつもりだったが、スミラが譲れない様子だったためスミラを優先することにした。
「私の本家、王城に来てもらってそこで今の王政について知ってもらうつもり」
よくよく考えてみると、現状ハルヤが知っている情報といえばダンジョンや商店街のことばかりで肝心の王政についてはかなり疎かった。
仮にも王家へ婿入りする立場なわけで、到底こんな覚悟じゃやっていけないのは重々理解しているつもりだ。だが、わからないことが多すぎる。文化はもちろん、屋敷に住む人の人柄、ここにいる経緯ですらわからない。唯一知る方法が人に尋ねるということなのだが・・・・なんせスミラはあまり自分のことをよく思っていないのか、少し避けられている。とはいえ、ロゼでも王家の詳細は知らないらしくスミラに聞くしかないと思っていたのも事実。
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王城――王が住んでいる。この国では政治の中心地となっており、周りには王族関係者の屋敷が建て並ぶいわゆる都心部である。日本で言えば当然東京に当たる場所であろう。城自体は丘の上にあり、警備のためか塀が周りを囲っている。
王国の政策は王国というだけあって極端な独裁政治。貧富の差が激しいため、国民の4割が貧困層、5割が一般層、1割が富豪層になっている。その極端な政治から、一般層医家の人々から顰蹙を買うこともしばしば。今回の王権継承にも反対派は少なからず存在している。
「ここが王城よ」
スミラに連れられきた王城は、大きいという言葉で片付けるのはもったいないほど豪華な建物だった。高さは50mほどあり、周りの屋敷の倍――いや、それ以上ある城が白い壁で成り立っている。
ここまで来ると建物と言うよりは中にもう一つの世界があったりしても納得できる。
無駄に豪華ででかい入り口を通ると王の側近と思われる人が立っていた。
「ようこそいらっしゃいました、お嬢様、ハルヤ様。わたくし、バレット家99代目大王、オズワルド様の側近をやらせていただいております、ファントムと申します。」
ファントムは身なりがしっかりとした、イメージどおりの側近だった。身長は180cmほど、スタイルも抜群のイケメンで、対応もしっかりしていた。
開始早々劣等感でやられそうなハルヤをファントムは王の部屋へと案内する。
「ここがオズワルド様のお部屋となっております。ハルヤ様、くれぐれも失礼のないようにお願いいたします」
――王・・・・王かあ、想像もできないけど独裁って言っていたし、怖い人なんだろう。
ハルヤは行く前こそ、余裕の笑みを見せていたが緊張のせいか、王城についてからは震えっぱなしだ。
キィィ・・・と音を建てて大きな扉が開かれる。
「おっ、キタキタ、いらっしゃいハルヤきゅん」
中にいたのはロゼと同い年ぐらいの少年だった。
「えっと、王様?」
「うん!そうだよ」
明らかにショタにしか見えないこの少年が王だと言うのだ。
どうやら、王は10年ほど前に魔法使いに見た目だけ若体化できる魔法をかけてもらってからこの見た目らしい。
ハルヤは驚きとともに裏切られた気がした。独裁の王といえば極悪非道ないかつい見た目をしていると思っていただけあって、とてつもないギャップを前に大切な何かを失った気がした。
ちなみに喋り方は王の趣味だそうだ。
「まあまあ、座って座って。オズワルドだよよろしくねハルヤきゅん」
――この見た目できゅん付して来られると近所のクソガキを思い出すな。
「お父さん、またお酒飲んでるの??前に失敗したからやめるって言ってたのに?」
「あの酒の誘惑には勝てないんだよねえ許してちょ」
寒いおふざけをしているのはおいておいたとしても、王族とはいえ普通の家庭と変わらないようだ。
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