ホームシックガール 第2話

” ねぇ、朋ちゃんが言ってたのってあの人でしょ?”勇人がそっとさした指の先には、私の好きな人がいた。何も言わず下を向く私を見て、勇人は何も言わずにニヤリと笑う。

「それにしても、朋ちゃんにしてはやるね。桜葉高の松宮一樹でしょ。やるなぁ」

驚いた顔で勇人を見ると、「あれ、知らなかったの?バスケで有名な桜葉高のキャプテンじゃん?」と言い、スマホでネット記事を見せてくれた。

「桜葉、キャプテン松宮の活躍で119−13…すごい人だね」勇人が座り直す。

「で、朋ちゃん。お礼すんの、しないの?松宮くん次で降りちゃうよ?」

悩んでいるうちに、松宮くんが降りる駅に着いた。開く扉、立ち上がる松宮くん。気がつくと私は席を立っていた。


「あの…!」私の声を聞いて前を歩いていた背中が振り向く。

「あ、俺に何か用ですか…?」かなり驚いている。それもそうか。面識のない人にいきなり声をかけられたんだから。

「少し前に、めまいで倒れた私を支えてくださって…お礼を言えなくてすみませんでした。ありがとうございました!」深々と礼をすると、シーンとした空気が流れた。やりすぎたか、引かれただろうな…そっと顔を上げると、松宮くんが口元を押さえて笑いを堪えていた。

「ごめんごめん。あまりにもお辞儀が深かったから…」笑顔が眩しくて、何も言えず固まってしまった。

「わざわざお礼までしてくれてありがとうね。」電車が発車する音が鳴る。

「じゃあ、また…!」松宮くんは何も言わず笑って手を振った。


「どう、ちゃんと話せた?」

「話せた、松宮くんかっこよかった…」

「そっか、よかったね。次会ったらちゃんと連絡先聞くんだよ。」勇人は、何も言えずに頬を赤らめている私の頭をポンポンとした。

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