第55話 婚姻の儀 後編

本当にしてやられた気分だ・・・此れなら大聖堂で結婚式してるのと一緒だよ・・・ガクン




大司教が祭壇の前に立って待っている。楽団が讃美歌を奏で始めると婚姻の儀の開始の合図になる。


先ず、俺と国王様が一緒に祭壇の前に歩いていく。俺達が歩きはじめると、拍手が鳴りやみ静かに見守るようになった。




国王様は俺達が祭壇前まで来ると俺に祭壇の上まで行くように勧める。俺が祭壇に立つと花嫁達が、族長にエスコートされてゆっくり歩いてくる。


クララには父親でジェンナー市長のアルフレートさんが、キュリアとベルには俺と同じように王族が担当していた。




ゆっくり一歩一歩進みながら祭壇の前に到着すると俺の隣にキュリアとベルが立ちその下の段に其々10名の嫁達が並び立った。


それを見ると大司祭が、婚姻の儀の開催を告げた。


 「此処に13の神々が、一堂に会しました。そしてこの日、神々の婚姻の儀を開催いたします。婚姻の神々に祈りを捧げましょう」


というと祝詞を唱え始めた。


大司教がそう言うと王族が真っ先に祈りをささげる。それを見た参列者も「おおーぉ」と驚きながらも祈りを捧げていた。


それは驚くよね。国のトップが頭を下げるのだから・・・




此れって国王様、態とやってるよな。なんかあの俯いた顔が薄笑いしているの目に浮かぶよ・・・国王様って思ったより狸オヤジだったな。




てか俺の奥さん達、みんな神様にされてるし・・・


 「それはそうよ、みんな守護精霊を産むのだから聖母になるもの、神の母親は神に決まってるじゃない」


キュリアが小声で教えてくれた。


「それってさ、風が吹けば桶屋が儲かるみたいな理論じゃないか?」


 「そこがね単なる相関関係じゃないみたいなのよ。例えばヘディやラーニャは寿命が150年なのだけど死んだ後も記憶を持ったまま生まれてくるらしいのよ。私達の転生みたいな事に為るらしいわ」


「転生が約束される事に為るのか、そうしたら神にちかづくのかなぁ」


 「まぁ元を辿れば、ケミンのせいなんだけどね」


「えー?俺のせいか?」


 「そう言う事、貴方のお種は、其れだけ強力なのよ」




そんな事を話しているうちに祝詞が終わり、皆立ちあがった。


そして大司教が、続けていった。


 「此処に神々達の婚姻は成立し、列席者を証人とします。此れよりケミカリーナ様より誓いの言葉が発せられます」


そう言うと俺は、ぽわんと顕現体に戻り、誓いの言葉を言う。




【我はケミカリーナ大森林の意思ケミカリーナなり、我、此処に宣言す。ここに居る12の女神達を娶り、生涯愛することを誓う、そしてその身に守護精霊を宿さん。ケミカリーナ大森林及び此の東の辺境を守護することを誓おう。我が大いなる力をこの地にたむけん】




そう宣言すると俺の身体が光り輝き12の妻達を包み込むように光り出した。


え?こんな演出聞いてないけど・・・一気にエナジーも吸い取られてるし・・・




そうして光が収束すると女神の姿になった嫁達がそこに居たのだった。




其の姿を見た列席者達は、全員が跪き 「神が降臨なされた」などと言っていた。




おーい!なんでこうなった!


 「まぁなっちゃったものは仕方ないわね。そのうち直るわよ」


キュリアが呆れ顔で言っていた。




そうして婚姻の儀が終わると俺達はまたパレードに向かったのだった。


夕方までパレードを行い。王都の屋敷に戻って行った。


屋敷に戻ると女神の姿が解除された。




リビングで今日1日の苦労を皆と労いながら俺は言った。


「あの演出はなんだったのかな?」


 「ケミンが女神達って言ったからでしょ!本当に女神に為っちゃったじゃない!」


「だってそう書いてあったんだもの、変更なんて俺には出来ないよ」


 「あれは国王様の策略ね!祭壇の事もそうだけど本当にしてやられたわね!」


「参ったねぇ、これから如何なるんだろう・・・」


 「それは私にも解らないわよ、こんなこと初めてですもの」


「ですよねぇー・・・」




まぁなるようになるしかないかぁ・・・


明日は後夜祭だ。やっと俺達の出番が終わったので少しは楽しめるかもなどと思いながら就寝したのだった。










朝起きて普段着に着替えると朝食に向かう。


やっとお祭りを楽しめそうだな。食事が終わり皆と街に繰り出すことにした。




ヘディとラーニャとカトレアは、いつもの武装で俺達を守っている。おかげで取り囲まれるような事は無い。


俺の隣には、チビッ子二人が手を繋ぎながら歩いていた。この二人は妻というより妹に近い感じなんだよねぇ。


「ケミンより身長が小さいのは得よねぇ・・・」


キュリアが羨ましそうに見ながら言っていた。




広場に着くと色々な出店が並んでいた。アクセサリーを売っていたり、魔道具もある。食事が出来るところもあるな。


皆一応に楽しそうだ。通りすがりの人達が、俺達を見て微笑ましそうな顔をしていた。




「ケミン様、ミラあれ食べたい」


ミラが指していたのは焼き鳥だった。確かに美味しそうな匂いがしているな。串焼きなら歩きながらも食べられるので皆で買う事にした。




そして広場のベンチに座り乍ら、焼き鳥を食べ大道芸を見ている。


火の付いた棒をジャグリングする大道芸やマリオネットで芝居をして居る人、玉乗りやマジシャンなど多くの人だかりが出来ていた。




俺達は、夕方まで後夜祭を楽しんだ。そうして婚姻の儀の全てが終わったのだった。




























そして1年後・・・




奥さん達は子供を産んだ。次々に生まれる子供達は、皆、淡く光り輝いていた。


守護精霊に為る子供達って光ってるんだな。




キュリアとベルの子は、ラヴォージェと同じような精霊に為るらしい。


メリトさんも子供を産んだ。この子はハイエルフになるらしい。族長たちと同じ種族だな。


みんなお母さんにそっくりの子供だ。俺の種の意味って・・・




子育ては大変だったよ。一気に12人の子供だからねぇ。子供は泣くのが仕事だから泣くたびに誰かがあやしていた。勿論俺も手伝ったよ。でも、メイドさん達も居たので手が足りないと言う事は無かった。




そうして慌ただしい日々は過ぎていったのだった

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