第54話 婚姻の儀 前編

とうとう4月18日が来た。朝目覚めると外のほうから音楽が聞こえてきている。


朝から完全にお祭り騒ぎになっているな。今日から3日間は城の門も解放されている。


広場では大道芸が行われていたり、出店が出ていたりしている。食べてみたいなぁ・・・




朝食を食べながら皆と話す。


「今日は、王宮で最終の打ち合わせをした後は時間できるよね?皆で広場に行ってみないか?」


 「何言ってるのケミン、時間なんて出来ないわよ!打ち合わせの後は、大広間でお披露目会だって言ってたわよ。今日一日は、大広間よ・・・私も行ってみたいんだけど後夜祭迄おあずけよ・・・」


キュリアがなんで忘れてるの?みたいな顔をして呆れながら言った。




「マジかー。出店に行ってみたかったなぁ。」


「今日は、不味いと思うよ僕は・・・囲まれたりしたら大変だし」


ベルも行きたそうな顔をしながらも首を横に振りながら言った。




確かに囲まれたりしたら大変だよね・・・仕方ないか・・・


そんな会話の後食事が終わり王宮に行く事に為る。




俺達が、外に出ると門の周りには、かなりの人だかりが有った。門番が整理するのが大変そうだ。


俺達の出待ちの民衆の様だな・・・ここまでとは思ってもみなかったよ。




門が開くと道が出来ていく。そして騎士たちが、護衛してくれる事に為った。


護衛騎士たちの後ろをゆっくり歩いていく。人々の歓声が上がり。


「ケミカリーナ様。キュリア様結婚おめでとう御座いますーー」


などと口々に声が掛かる。


「ああぁ、女神さまー」


キュリアも女神言われてるし




これもうパレードだよね?


そう思いながらも手を振ったりしながら王宮に入って行った。


 「ケミン様は人気者ですな。ふぉふぉふぉ」


「いやいや殆どキュリアだから!女神さまーとか言われてたし」


 「もー止めてよ!女神じゃないの!女神はベルよ!」


 「ちょっ。いきなり僕に振らないでよ!僕は見た通りの普通の女の子だよ!」


ベルは真赤になってキュリアに抗議していた。




「俺は両方女神だと思うけど・・・」


 「「うるさい!!」」


パッカー―ンと二人からスリッパで殴られた・・・ガクン




 「相変わらずですなぁ、ふぉふぉふぉ。まぁ落ち着いてくだされ、打ち合わせを始めましょう」


国王様にそう促されて打ち合わせが始まったのだった。




打ち合わせが終わると今度は謁見の間に移動する。


大広間は、婚姻の儀に使うので、俺達のお披露目の謁見は、謁見の間を使う事に変わっていた。突然変更されても・・・とは思ったが、俺達は正装に着替えて椅子に座ると愛想を振りまいて手を振る。




何時もは国王様や王族のいる壇上に13の椅子が準備されそこに俺達が座って国民にお披露目されるのだ。


婚姻の儀に参加できない国民に謁見の間に順番に来てもらい俺達は見世物に為っている。


1時間もすると疲れてくるな・・・それでも愛想を振りまいてるけどねぇ




「なあキュリアこれいつまで続くんだ?」


俺は小声でキュリアに聞いてみた


 「日没までよ、もう少しだから頑張りましょうよ。其れよりケミン明日の誓いの言葉、覚えたの?」




俺は、国王様から1枚の紙を渡されていた。明日の婚姻の儀に誓いの言葉を言う事に為っているのだ。


その原稿の事をキュリアは言っているのだろうな。




「これ本当に読むのかよ・・・どこの中二病だよって内容だぞ・・・」


 「それは仕方ないわよ。一応、貴方にも威厳があるのだからそう言う内容になっちゃうわよ。ぷぷっ」


キュリアは肩を震わせながら口元を押さえて俯いている。此奴、絶対笑ってるよな!


 「まあ、しっかり覚えなさいよ!明日は、原稿なんて無いんだからきちんと覚えておかないと間違えるわよ」




「解ってるよ。でもこれ読むの嫌だなぁ・・・」




そんな事を考えながらも愛想を振りまいて居るのだから俺もこんな状態に慣れてきているのかも・・・


そうして空が夕日に染まるころやっと解放されたのだった。


今日はそのまま王宮に泊まり明日の朝からパレードを行う事に為る。




前夜祭はまだまだ続いている。王宮から外を見てみると王都は煌びやかにライトアップされキラキラと輝いて見えた。あの灯の下には、今もお祝いムードで騒いでいるのだろう。




俺は、久々に顕現体に戻り、上空に昇っていく、天空の星空は今日も美しく輝いている。天の川も天空を縦断する様にその輝きを誇っている。


ゆっくり上空に留とどまると星達を見上げた。


 「ケミン、如何したの?」


 「ケミン君、何かあったのかな?」


ぽわんとキュリアとベルが現れた。あぁ?ベルの顕現体って初めて見たな。ベルも分身と変わってないね。


仄かに光る顕現体は、可愛い少女の姿だった。




「あぁ、すずちゃんとみくちゃんか?如何もしないよ。明日は結婚するんだなぁと思ってただけだよ」


 「独身最後の夜だよね。てかなんで僕を前の名前で呼んだの?」


 「ケミンは顕現体だと何故か前の名前で呼ぶのよ・・・」




「俺もそうだけど顕現体って前の姿のままだろ?それなら前の名前の方がしっくりくるかなって思ってるだけだよ」


キュリアの分身が違いすぎるとは言えないからな!


 「全然違わないでしょ!プンプン!」


 「成程ねぇ・・・」




「やっと結婚式だね、生前も独身だったから初めてなんだよねぇ」


 「「そうだねぇ、初めてだね」」


「結婚してもいつも通り仲良くやって行こうね。みんな愛してるよ」


 「うふふ、有難うケミン愛してるわ」


 「ケミン君、大好き此れかも仲良くしようね」




そんな話をしながら夜は更けていった。
















次の日パレードが始まる時間には、皆着替えて準備をした。12人の妻達は、美しいウェディングドレスを身に纏っている。


「みんな本当に綺麗だね。惚れ直すよ!」


 「ケミンも男前よ!似合ってるわ」


俺達が王宮を出ると歓声が上がる。周りを騎士に守られながらゴンドラに移動した。




パレードは、王宮から出発し、主要の運河をゴンドラで移動する。運河の周りにはたくさんの人々で溢れている。運河は交通遮断されて俺達のゴンドラだけが移動していく。




運河には紙吹雪が舞い俺達の結婚を祝福している。人々の歓声も聞こえてきている。運河沿いの建物のあらゆる窓からも身を乗り出すようにして運河を見て手を振っている。




主要の運河3本をくまなくパレードしていく、広場に近い運河では楽団が音楽を奏でていた。


運河の上に掛かる太鼓橋がいくつも有るのだが、すべての橋が人で埋まっていた。俺達を正面から見えるのが橋の上からでしかない。其の特等席を皆狙っていたのだろうな。


俺が橋の上の人達に手を振ると、皆嬉しそうに手を振り返していた。キャーとか言ってたな。




パレードも終盤に為ってくるとさらに人が増えてきた。此れだけ人が居ると歓声なんだか悲鳴なんだか分からなくなってくるな。国民全員が熱狂の渦の中にいるようだった。




そして城の近くの船着き場に戻り、ゴンドラを降りる。


そしてゆっくりと王宮の大広間に向かっていく。


大広間に続く長い廊下を歩いていく。




大広間の前に付き扉が開かれると盛大な拍手が鳴り響いていた。


そして中を見ると、1本の赤い絨毯が敷かれた道の先に昨日までは存在していなかった巨大な祭壇があったのだ。




えええ?あそこに立つの?話に聞いてないけど・・・


キュリアもヤラレター!みたいな顔をしていた。

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