第53話 ドレスとプレゼント

3月はかなり順調になった。




昼の部も夜の部も月末までに全員が赤色の文様に変わったのだ。これで一応の役目が果たせて良かったよ。




然し、順番を入れ換えただけでこうも簡単に確定するとは思わなかった。


今までの苦労は、何だったのか・・・




まあ出来たのだから良しとくとくか。今までの積み重ねの成果だよねぇ。此れでやっと解放されるよ。


みんな出来たので安定するまでは、解放されるはずだったのだけど・・・


約1名、解放してくれない人が居たのだった。




「ケミン様のお相手をできるのは、もうわたくしだけですわ!今からまいりましょう!」




そうハニーが言うとちびっこ3人は、一寸、羨ましそうに見る。キュリアやベル達は、俺の事を可哀そうに思ったのか、頑張ってね、みたいな顔をしてからスッと目を逸らした。


俺は、ハニーに抱きかかえられるとそのまま寝室まで連れていかれたのだった・・・ガクン










そんなこんなで4月に入ると王都には人々が集まり始めている。俺達の結婚式を祝い、参加するためだ。


王都は元から人が多いのだが、毎日何処から来るのかというほど人が流入してくる。


勿論、街や村の長達や種族の長たちも集まってきていた。


王都は、俺達の結婚式一色に染まっていった。




結婚式まであと2週間と迫った頃、ロザリンドさんからドレスが出来たと連絡があり、翌日に納品する事になった。




 「ケミン様、ご機嫌麗しく、ドレスとタキシードの納品に伺いましたわ」


「有難う御座います。お金の方は、いくらになりますか?」


 「うふふ、もう国王様から預かってますわ。婚姻の儀の衣装ですから王国が出すと言われまして、ケミン様からは絶対頂くなと言われておりますわ」




「やっぱりそうなのか・・・でもお金を使う所が無いんだよねぇ」


 「それならうちのローレンスが新しい企画を考えてますわ。ケミン様に頼まれたと頭を抱えてました。うふふ」ロザリンドさんは楽しそうに笑っていた。俺も何となく想像できたので笑ってしまったよ。ローレンスさん御免ね。頑張ってね。




奥さん達は、ドレスを試着する為、ロザリンドさんと別の部屋に行った。結婚式まで秘密なんだそうだ。


俺も確認の為、タキシードを着てみた。襟元とベストに刺繍が入っている黒のタキシードだが・・・




俺が着ると七五三みたいだったよ・・・


「此れさぁ、似合ってるかなぁ?」


そう言うとお針子さん達は、「良く似合っていますよ」と口々に言ってくれた。何となく微笑ましいものを見る目だったのは言うまでもない。お針子さん達も七五三みたいだと思ってるんだろうなぁ・・・ガクン


サイズは、ばっちり合っていた。まあ当たり前だけどね。俺は汚したくないので直ぐに着替えたのだった。




俺が着替えてリビングに戻るとロザリンドさんだけが戻っていた。


 「ケミン様、もう奥様方に指輪のプレゼントはされたのですか?」


「いや、式の当日にしようか迷ってた所なんだよ」




 「婚姻の儀では、バタバタしますから渡すのを忘れる可能性も有りますわ。先に渡しておいた方が宜しいと思いますよ」


「有難うロザリンドさん。今日丁度良いから渡すことにするよ」


 「それが宜しいですわ」




そんな事を話しているとお嫁達がリビングに戻ってきた。口々に綺麗だったとか言っている。


 「ケミン凄く素敵なドレスだったわよ。楽しみにしててね」


キュリアがうっとりとした顔をしながら言った。




「うんうん、楽しみにしているよ。それでは、みんな座ってくれるかな?」


俺がそう言うと不思議そうな顔をしながらも皆がソファーに座っていく。


「全員、眼を閉じて?良いと言うまで開けちゃだめだよ!」


俺がそう言うと全員素直に目を閉じてくれた。




俺が、指輪ケースを開けながら皆の前に指輪を置いていく。全員の前に置いた処で・・・


「さあ眼を開けて!」


目の前の指輪を見て全員、暫し固まっていた。え?そんな反応?


「皆の結婚指輪なんだけど・・・」




俺がそう言うと今度は嬉しそうにしながらも皆の目に涙が溢れてくる。


 「ケミン有難う・・・」


キュリアがやっと声を出す。




俺は一人一人に指輪を嵌めてあげ抱きしめてあげる。そしてキスをした。皆嬉しそうに指輪を眺めている眼に涙を矯めながら・・・




最後にキュリアの指に指輪を嵌めて「愛してるよ」と言いながら抱き締めると


 「愛してるわケミン」


と言って異次元収納から指輪ケースを出し俺に渡してきた。


「これは?」


 「私達からケミンにプレゼントよ」




俺が開けると12個の小さな宝石が散りばめられた結婚指輪だった。


「ええ?本当に?」


俺は吃驚した。まさか逆サプライズされるとは思ってもみなかったのだ。


 「つけてあげるわ」


そうキュリアが言うと俺の左手の薬指にその指輪が嵌められた。


 「うふふ、結婚式みたいね」


そして二人でキスをしたのだった。




 「うふふ、大変良いものが見れましたわ、では私達は、お暇致します」


あああー!ロザリンドさんが居たのを忘れてたーーー




めっちゃ恥ずかしかったが、平静を装い・・・


「あ・ありがとうロザリンドさん。またよろしくお願いします」


 「はい、今後ともご贔屓にお願いします。それでは失礼します」




そう言うとロザリンドさん達は帰っていった。






そして婚姻の儀の前夜祭を迎える事に為る。


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