第56話 8月税収と新しい企画

結婚式の後の8月、俺達はまたジェンナーの街に移動した。税収の確認と8月のみ滞在する事になっているからだ。


俺達のジェンナーの屋敷の周りは一変していた。まさに新興の団地が出来ていたのだ。


それに、何故か屋敷の周りのアパートは、護衛隊の宿舎に為っていた。


護衛隊に多い種族はやはり、ウィローモス種とオセロット種で新しくコモドドラゴン種も増えたらしい。


そして外側のアパート1階には商店が並び商店街が出来ている。ここに来れば何でも揃うようになった。


因みにアパートの名前は、メゾン.ド.ケミカリーナで商店街の名前もケミカリーナ通り商店街だって・・・

勝手に俺の名前を使うなよ・・・ガクン


このアパートに入れた住人達はかなりラッキーだそうで。

毎月10金貨もする家賃なのに入居希望者が殺到して抽選になったそうだ。


なんとその倍率は100.5倍って・・・

思ったよりみんな、かなり裕福なのかな?と思ったら王都からの移住者が、大半を占めていたらしい。


って事でジェンナーの人工は鰻登りに増えている。

勿論、其れは、税収にも反映されるわけで・・・

うん!考えるのは、止めた。


屋敷の方も変わったことがある。メイドさんが更に15名程増えた。

来年から子供達が増えるのでその対応の為だ。

ハニーの子供がいるので交代で慣れてもらうことにした。


俺のお子を生んだハニーは、一緒に子育て中で、ずっとジェンナーにいる。産卵は新しい女王蜂に引き継いだ様で全く問題ないそうだ。

だから通い妻のハニーと二人入る事に為るので現在13人の奥さんって事に為るな・・・

まあ、一人増えてもあまり変わらないけどねぇ。


そんな事で、夜の部は休止中だけど昼の部は続いていたりする。

 「さぁ、ケミン様、行きますわよ。まだお種を頂けていない女王は沢山いるのですから頑張って頂かないと困りますわ」

「まだ朝食が終わって少ししか経ってないよハニー・・・」

そう言いながら俺は助けを求める様に他の奥さん達を見るが・・・皆一様にスッと目を逸らされたよ。


 「何を言っているのですか、わたくしが居られる時間は少ないのですわ。頑張って下さいまし」

そう言うと俺をひょいと抱き上げて寝室にドナドナされていくのだった・・・

意思とか感覚が共有できるのだからお種も共有して欲しいわ!




午前中はそんな感じで過ごし、午後になると時間が出来る。

先ずハニーの子供を見に行く。メイドさん達にあやされたり、ハニーがお乳をあげたりしている。


守護精霊の子供って不思議なもので生まれてからずっと淡い光を纏っているのだ。

それに、ハニーの子供だから卵で生まれるのかと思ったら普通の赤ちゃんだったよ。

ハニーそっくりで翅も生えているし・・・


まぁ人型になったのに未だに卵を産んでいる方が不思議なんだけどねぇ・・・

コモドドラゴンでさえ人型に為ったら普通に出産するらしいからな。


俺が子供をあやしていると来客が有る事をラヴォージェから伝えられた。

 「ケミン様、ローレンス様がいらっしゃいました。新しい企画の件だと申しております」

「おー!出来たのか!どんな企画だろうか?楽しみだねぇ」


俺は応接の間に向かうとローレンスさんが待っていた。

「ローレンスさんこんにちは!硬いのは抜きね。企画が出来たって聞いたけど」

 「こんにちは、ケミン様。その前にですね、今年度の家賃収入です。お収めください」

ああーー!忘れてたよ!家賃収入。税金と手数料を引いた収入が7万金貨だって・・・


「忘れてた・・・こんなに有るのか・・・今年の分割の分と管理費も払っちゃうよ」

俺はローレンスさんにカードを渡すとまず7万金貨を受け取り領収書話出す。そして分割払いの5万5千金貨と管理費1万金貨を支払う。そして領収書を貰った。

5千金貨増えた。てかこれだけで1年は普通に暮らせるんだけどなぁ・・・さらに税収がとんでもない事に為っていそうだし・・・


俺が渋い顔をしているとローレンスさんは心配そうな顔色で聞いて来た。

 「ケミン様、手数料はもう少し下げられますよ。手数料は頂かなくても管理費の方から出せますから要らないのですが?」

「いやいや!もっと貰って欲しいくらいだよ!あと5千金貨手数料増やそうよ!」

 「そんなことは出来ませんよ!今でも貰いすぎなのですから!」

ローレンスさんは大きく手を振り驚いたように言った。


 「それとですね、言い辛いのですが、船外機とボートの改装費の収入も有りますから」

「えーーー?まだ有るのか・・・」

 「はい、ことのほか売れましてケミン様の収入は3万5千金貨程になります」

「マジかそんなに売れてるの?」

 「だから売れると言ったではないですか、マリ川には、最近行っていないので?モーターボートが溢れてますよ」

「そう言われてみれば、セイルの張っていない船が増えてたような」

 「そう言う事ですからまたカードをお願いします。」


「解ったよ、それで企画は如何なったの?」

俺はローレンスさんにカードを渡しながら聞いた。

 「少々お待ちを」

カードの入金を確認すると領収書を渡す。

 「新しい企画の件ですが、ボートのお祭りをしようと思いまして。1年に一度ジェンナー郊外のマリ川でヨットレースとボートレースを開催しょうかと如何でしょう?」

「ボートレース?」

 「そうです!ケミン様の考えた船外機を付けて誰が一番早く操れるかを競うものです。盛り上がりそうでしょう?もちろん既存の帆船の方もレースをしますよ。こちらは早さとテクニックを競うものにしたいと思います。」


「面白そうだね、会場とかの建設は如何するの?」

 「街を挙げてのイベントにしたいと市長からも申し出が御座いまして公共事業として街が負担する事に為っております」

「じゃー其処に今年の俺の収入も乗っけてもらおうかな・・・」


 「それはもう予算が組んであるそうですから無理でしょうねぇ、其処でケミン様には、賞金を準備して頂ければと思っております」

「じゃー10万金貨くらい出すよ!大きな大会にしたら良いだろ!毎年出すからね!税収によってはもっと増えるかもしれないけど!」


 「有難う御座います。準備期間を半年として来年の4月には開催したいと思いますので毎年4月開催になる予定です」

「4月なの?そんなに早く出来そうなの?」

 「勿論、コースの建設ももう始まっておりますので、4月にきっちり合わせてあります」

「なんで4月なの?最初から決まってたみたいな言い方だけど」


 「企画名が、ケミカリーナ様ご結婚記念ボート競走ですから!4月中に予選を行って19日に決勝競争にしますよ」 

「なんでそうなるのよ!俺の名前使わないでー」

 「私に丸投げしたからですよ!名前くらいは使わせてもらいますから!」

ローレンスさんの逆襲に頭が痛くなるケミンであった。


それでも毎年4月には、街に10万金貨を賞金として納める契約をした。自動的に引き落とされるそうだ。

企画したのはローレンス商会だが、開催するのは、街が担当するからだ。


8月の最終の平日には、また税収の集計が出来上がったと市長より連絡があり庁舎に行くことにした。

応接間に通されると市長が待っていた。

「こんにちは、市長、クララのお腹はだいぶ大きくなってきましたよ。もう安定する時期ですから一度いらしたらどうですか?まだ数日は、ジェンナーにいますから会いに来て頂けるとクララも喜ぶと思います」


 「ケミン様こんにちは、会いに行きたいのは山々なんですが、仕事が立て込んでおりまして少し難しいですな。子供が生まれた時にでも行きますよ。それで今年の集計ですが182659金貨です。もう入金してありますので後で確認してください」

「また今年は一気に増えましたねぇ、如何にか使う方法は無いですかねぇ?」


 「増えたのはケミン様のおかげです、アパートの事も有りますがケミン様が滞在する事に為ってるので人口が一気に増えてるのですよ。それに来年以降は、もっと増えますよ。毎年4月に大々的にお祭りが開催されますからね」

「これ以上増えても困るだけなんだけどなぁ」


 「現在の街の経済は年間インフレ率が3%前後で安定してますからケミン様が少しくらい溜め込んでも影響は有りませんよ。それよりももしもの時の為にとって置いたら如何ですか?」

「出来るだけ使うようにはするけどね。溜め込んでも影響ないなら良かったよ」

 「街の収入は、黒字ですからご心配なさらずに、住人達もかなり潤っているようですから大丈夫ですよ」

「解ったよ、市長有難う。子供が生まれたらまってますよ、それでは」

俺はそう言うと市庁舎を後にて屋敷に戻った。







そうして4月になり「ケミカリーナ様ご結婚記念ボート競走」は開催された。

帆船部門と船外機付き部門では3種に別れ大型ボート・中型ボート・小型ボートになった。


そして・・・中型ボート船外機付き部門ではなんと!

俺の船を使ったラヴォージェが優勝したのだった・・・

 「私の操船も中々ものでしょう!誰にも負けませんよ!ハハハハハ!」

「何、競争に出てるんだよ!次回からはラヴォージェは出たら駄目だよ!」


全く何を考えてるんだ!身内は出ちゃだめだろう・・・ガクン

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