第46話  ヨットの改造 後編

キュリアとの1回戦が終わり、受精魔法の準備に入る。俺は起き上がりジャージに着替える。いつもの白衣でないのは、受精魔法を使うと眠くなるからだ。


「キュリア大丈夫かい?」


キュリアは頬を赤く染め荒い呼吸をしている。まだ動けないようだ。


「はぁ、はぁ、ケミン待って・・・落ち着くまで時間をちょうだい・・・すぐにされたら私・・・」


キュリアの身体が、汗やら何やらで凄い事に為っているので、タオルを持て来て丁寧に拭いてあげる。そしてタオルに清浄!!と魔法を掛け綺麗にする。


 「えー?そっちなの?私に清浄をかけてよ・・・」


「キュリアを拭いてあげたかったんだよ」


そう言い乍ら軽くキスをして髪の毛を撫でるとキュリアはうっとりとした顔になった。


 「もう・・・」


お腹の準備文様は、まだ青い光のままだった。


暫く待つと落ち着いたのか、キュリアは起き上がり下着を着けた。


俺はシーツに清浄!!と魔法を掛け綺麗にしてキュリアを仰向けに寝させる。


「もう大丈夫かな?いけそう?」


 「ええ、何時でもいいわチャージ忘れないでね」


おお!そうだった魔法使ったからな、俺は両手を自分の胸に当てる、そして目を閉じるとダイヤモンドダストのような小さな光の粒子が俺に集まって吸収されていく。数分で収まった。


「それじゃー始めるからね」


 キュリアは頷く、そして恥ずかしいのだろうか、顔を両手で覆った。


今度は両掌をキュリアの準備文様に当てて掌に体の中にあるエナジーを集める。


全身から掌に向かって血液が流れるような感じでエナジーが集まっていく。掌は青白い光からエナジーが集まるに従って少しずつ赤が加わり青紫に変化、さらにエナジーが溜まると紫の光になり、体中のエナジーが、集まると赤い光になり輝きが増していった。


俺は受精するイメージを頭の中に浮かべ、エナジーと一緒に一気にキュリアの身体に流し込んだ。


 「ううううぅぅぅ」


其れは一瞬の出来事であるが、キュリアには長く感じられるのであろう、呻き声が続きヒクヒクしている。


キュリアが収まると俺は掌をキュリアの身体から放し準備文様を確認する・・・今回も外れの様だった。準備文様は、青い光のままだった。  


キュリアはそのまま寝てしまう。俺も眠気が来てそのまま一緒に眠るのだった。










あれから俺とミラは、金属工房に行っている。俺は、1日おきだがミラは毎日通っている。


船外機の製作は順調に進んでいるが、俺でなければ分からないことがあり、設計図を確認しながら部品の説明をする。


部品の加工はミラと工房の職人にすべて任せている。俺が手を出しても邪魔になるだけだしね。


粗方の部品は、工房の職人が作るが、精密な仕上げはミラが行っていた。


ベアリングに使うボールの加工など最たるものですべて均一に揃えている。俺が作ったら果たしてきちんと回るのか怪しいものだ。


ギアなども綺麗に加工されている。問題はオイルなのだが・・・ここは魔法で代用する事になった潤滑という魔法が有りすり合わせ部分の摩耗を防ぎ冷却するという優れもの!勿論、防水の必要な場所には,撥水魔法を掛ける。


ギアは、前進と後進の2種のベベルギアが有り、船外機を2台設置するので其々の回転を逆にしておく。


プロペラは3枚羽で中央に排水管が付いている。減速比は2.59 スリップ率を考えると時速70kmくらいになるように設定した。35ノット~40ノットくらいが最高速になるはずである。


まあここまでは良いのだけど・・・風魔法で6000rpmを出せるかどうか・・・


とりあえず組み立ててエンジンの代わりに風車ギアを取り付け風魔法で回してみることにした。


小さな竜巻を起こすと風車ギアが回り始めるドライブシャフトを回転させピニオンギアからベベルギアに伝わりプロペラシャフトを回す。プロペラの回転もスムーズに回っている。


風はきちんと排気管を通りプロペラ中央の排気口から出ている。


「おおー!成功だよ!やったね!ミラ見て、ちゃんと回ってるよ!」


 「うんうん!ミラも嬉しい!頑張った甲斐が有ったね!」


俺とミラそして工房の職人達と手を取り合って喜んだ!


エナジー量を少しずつ増やし竜巻の回転数を上げていく。それに比例してプロペラの回転も上がっていく、この調子なら6000rpmでも大丈夫だろう。


そして竜巻のスピードが6000rpmに到達しても壊れる事は無かった。


 「ヨッシャ―――!出来たぞー!」






約4週間かかって2台の船外機が出来上がった。1台が終わった所で俺は船の方の改造に移った。


セイルとマストは取り外しが簡単だったので割愛する。


操作方法をハンドルタイプからジョイスティックに変更、ジョイスティックを任意の方向に倒してエナジーを流すと自動的に船外機の方向や回転数を調整して倒した方向に船が移動できるようにする。


この場合スロットルは切り離し最低スピードで8方向に移動できる。船着き場で出航や停船するのを楽にするためだ。


前進する場合ジョイスティックを押し込み固定するとスロットルに繋がり船が前進する様にした。逆にジョイスティックを引き上げると後進になる。


魔法石を運転席に置き、手を触れてエナジーを流すと竜巻の風魔法が船外機にの中に発生し風車ギアを回す。エナジー量を増やすと竜巻の回転数が上がるようにしてある。


此れが一番苦労した。運転席の魔法石と船外機の風魔法石を繋げる方法が手探りだったのだ。


これを解決してくれたのもミラであった。


エナジーは、ミスリル鉱が効率的に流れるらしく、ミスリル鉱でワイヤーを作り魔法石と船外機の風魔法石に繋げたら良いと言われた。試に簡易的な魔法石とミスリルワイヤーと風魔法石を繋げて作り魔法石にエナジーを流すと風魔法が発動した。


此れを邪魔にならないように配線し船の準備も終わったのだ。








8月もあと4日で終わりを迎える日、とうとう進水式となったのである。


予めラヴォージェに操作方法のデータを送っておいた。


今日は奥さん達、全員が、船に乗っている。


マストのないヨットに皆、訝し気な表情だ。其れはそうだろう。マストとセイルのない船なんて初めて作ったのだから・・・


 「ケミン・・・これ本当にモーターボートになったの?」


「ちゃんと船外機も付いてるだろう。テストしたから大丈夫だよ!ミラと一緒に作ったしね!」


 「ミラ頑張ったよ!キュリア様、安心していいよ」


「そうだよなぁミラ、泥船に乗った心算で安心して欲しいよな!」


 「ケミンそれなら安心ね!って!泥船なら沈んじゃうでしょ!」


キュリアの見事なノリツッコミである!ベルが笑いながら言う


 「あははは、キュリアもあんがい乗りがいいよね。船だけは、沈まないから大丈夫だよねぇ、ケミン君!」


「船は俺が作ってないからね!てか何気にディスってない?」


 「ケミン君は平常運転だね!」


俺は、軽くディスられながらもラヴォージェに指示を出した。


「ラヴォージェ、王都に向かって出航!」


 「アイアイサー」


ラヴォージェはジョイスティックを操作し船着き場から離れる。ゴボゴボと船外機が運転を始め、斜め後ろに船が動き出したことにお嫁さん達は皆驚いた。


船が王都の方に船首を向けると前進し始める。


「ラヴォージェ少しづつ速度を上げて全速まで持って行って、其の時のエナジー量を教えて欲しいのだけど」


 「解りました。まずスピード1に設定します。」


スピード設定はスロットルを5段階に分けてある。無段階にしたかったのだがエナジーの調整が微妙で解らなかったのだ。そこで1000rpmずつ増える様にしてあるのだ。


スピード1は2000rpmで1段階上がるごとに1000rpm上昇する。5段階目で全速の6000rpmである。


「スピード1のエナジー量は?セイルに風を送る時のどの位かな?」


 「感覚的ですが、速度に対して半分くらいでしょか?」


「おおー!節約できてるね!どんどんスピード上げていって!」


ラヴォージェは、2・3・4・5段階と次々に上げていき全速になった!


 「ケミン様、こんなスピードではセイルを張って航行できませんよ!3段階くらいが限度です!」


「今のエナジ―使用量は?」


 「セイルを張った船の全速の半分くらいですね!これは画期的ですよ!」


ラヴォージェから「画期的」頂きました!作った甲斐が有ったよー!


早船でも王都迄一昼夜かかるところが、半日以下で着いてしまった。


この船なら王都迄日帰りで行けるようになったな。


ただ来ただけなので蜻蛉返りでジェンナーに戻る。


王都の住人達は皆一様に驚いていたが・・・




お嫁さん達はあまりのスピードに唯々唖然としていたのだった。


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