第32話 街で買い物をしよう 前編

市長と別れた後、俺達はまず宿屋を探すことにした。買い物には時間が掛かるからね。夕方帰ったら着くのは深夜に為っちゃうし、夕食もさすがに船では大したものが出来ないからなぁ。


ヘディが先頭に立ちラーニャは最後方で周りを警戒しながら歩く・・・だから其処迄の用心が必要なのか?


周りのみんながビビってるぞ!「鬼のヘディ副隊長だ」とか言われてるし・・・有名人だな!

おかげで前回来た時の様な、人に囲まれる事は無いけど・・・


俺は気を取り直してクララに聞く

「クララ、どの宿屋が良いのかな?お風呂が付いてるのがいいな、それと皆で泊まれるくらい広い所かな」


 「やはり、川沿いの宿屋は人気が有りますの。お風呂のあるスイートルームなら、リバーサイドクラウンが良いと思いますの。国王もお泊りになるくらいですの」


クララの御薦めはリバーサイドクラウンか、王族が泊りに来るくらいなら相当良い宿なんだろうな。


「クララが薦めるなら行ってみようか」

 「はいですの。此方ですの」

クララに付いて行くと、本当に豪華な宿屋?てかこれホテルだよなどう見ても・・・


うちの迎賓館も凄かったけれど、こっちも引けを取らないな・・・

中に入るとシックで落ち着いた雰囲気のホールがあり、床は大理石の様だ・・・


「ラヴォージェさん、此の床は大理石だよね?うちの森の中に大理石なんて取れる場所ないよね?」

 「大理石ならベル様の山脈に切り出し場が有りますな」


あんな遠くから持ってきたのかよ!どんだけ金が掛かってるんだ・・・


俺達はカウンターに近付くと受付を頼む。俺の身長だと受付カウンターからやっと顔が出るくらいだけどな!


仕方ないのでラヴォージェに頼む。

 「ケミン様、あちらのラウンジのソファーでお待ちください」


俺はラウンジのソファーで皆と一緒に待つことにした。俺達が座るとホテリエの女性から紅茶と御茶菓子がもてなされた。


アフタヌーンティーの時間帯か・・・


俺は、金貨をチップとして渡すとホテリエの女性は、吃驚していた。多すぎたか?金貨しか持ってないんだもの・・・

「凄いホテルだねぇ」


 「ケミンの方が凄いわよ!普通チップで金貨って有りえないわよ!」

「仕方ないだろ、金貨しかないんだもの」


 「多ければ良いって物でもないのに・・・」

キュリアが何か言ってるけど無い物は無いのだ。


「クララ船を買うのは何処に行ったらいいの?」

紅茶とお菓子を食べながら俺は聞いた。


 「今ある船を買うのでしたら船着き場に展示場が有りますの。新しく作るのでしたら市庁舎の工業組合船舶課で船大工を紹介してもらえますの」


「服を仕立てるのは?」

 「服の仕立ても工業組合裁縫課で、お店を紹介してもらうのが一番ですの」


「何方にしても作るのは、工業組合を通すのか、市庁舎って如何しても行かないといけないのな」


 「目的の決まっていない買い物なら商業地区を廻るのが一番良いですの。買うものが決まってる場合は、組合で紹介してもらった方が、良い職人さんや商人さんを紹介してもらえますの」

「そうか分かった、有難う、宿が決まったら先ず船の展示場に行こうか」




俺達が話し終るとラヴォージェが此方に向かってきた。支配人のような人も一緒に付いて来ている。

 「ケミン様、お部屋が取れました。支配人が話がしたいそうです。」

俺が頷くと支配人は話し始めた。


 「ケミカリーナ様、本日は当店をご利用頂き誠に有難う御座います。私は、当店支配人のグリエルモと申します。お部屋は、最上階のスイートルームを用意して御座います。最上階には露天風呂も用意して御座いますのでご利用くださいませ。お風呂は終日入浴可能で御座います。お食事は、当店のシェフが最上階まで出張いたしますので、お部屋でお食事可能で御座います。またホテリエも数名御付致しますので、御用の際は何なりとお申し付けくださいませ」


至れり尽くせりだなぁ・・・


「解りました。有難う御座います。此れから買い物に出掛けるのだけど食事の時間は何時からですか?」


 「通常は日没後からですが、スイートのお客様には、お時間を合わせますので、何時でも呼んで頂ければ結構で御座います」

「日没前には帰って来れそうだから通常の対応で良いですよ。宜しくお願いします」


 「お代の方は無料に・・・」

「「其れはダメ!」」


全員の声が揃ったので支配人さんは吃驚していた。何でも無料にされたら金貨が無くならないだろ・・・


 「解りました。若干の値引きはさせて頂きますのでそこはご容赦願います」

「それでは出掛けてきますので宜しく御願いします」


俺が立つと支配人さんはサッと道を開けて「行ってらっしゃいませ」と言った


俺達は、船の展示場に向かった。クララの案内では一度船に戻り、船で展示場まで行く方が早いとの事でラヴォージェに操船してもらい移動した。


展示場に着くと真新しい船が沢山展示して有り目移りがする。

「ラヴォージェが作った船と同等のサイズが良いよね?」


 「乗り心地も良かったしね。」

 「僕はもう少し狭くても良いと思うけど?この船だと広すぎないかな?」

キュリアとベルは意見が分かれた。


「確かに少し広い気がするけど・・・でもまだ来ていないお嫁の事も考えるとね」

 「ああ、そうか、あと四人増えるんだよねぇ。それを考えると丁度良いのかな」


「ハニーは如何思うの?」

 「其れはもう、わたくしは、大きければ大きいほど嬉しいですわ、わたくしならあの水上バスが欲しいですわ!」

ハニーが無茶振りしてきた・・・


「支流に入らないから!其れはいくら何でも無理だって!」

 「解ってますわよ、わたくしだって冗談くらい言いますわ」


冗談だったのか。ハニーの冗談って初めて聞いたかも。

そんな話をしていた時に、1艇のヨットに目が止まった。


船幅はラヴォージェが作ったヨットと変わらないが全長が長くスマートに見える。船首部分から1/3くらいにデッキが付いており広々としている。


停泊中は、デッキチェーアーも数台は置けるだろう。勿論キャビンも付いていて中で15人くらいがゆったり過ごせる構造に為ってる。


今はマストが外されているので脱着可能なのかな?そして不思議な事に船尾の中央に凹へこみがあるのだ。此れってツインエンジンのモータークルーザーになるのではないだろうか。夢が広がってきたぞーー!


 「ケミン何興奮してるのよ」

キュリアは不思議そうな顔で俺を見ている


「キュリア、俺此のヨット欲しい買って良いか?」

 「ケミンが気に入ったなら買っても良いけどこれって高いわよ?」

え?高いの?金貨10万枚で足りるか?


 「貴方馬鹿なの?そんなに有ったら船処か家を10件買っても十分余るわよ!」

「お金の価値なんて知らないもの、今日初めて使うんだし」


キュリアは呆れたように俺を見ている。そんな顔をしなくても・・・ショボン

 「良いわよ!交渉しましょ!」

「無理に交渉しなくていいよ?向こうの言い値で」


 「本当に貴方馬鹿なの?なら貴方が交渉してみなさいよ。船番号は42番よこれを相手に伝えてね」


「分かったよ・・・」

俺達は渋々取引事務所に向かう42番って「死に」かよ!


取引事務所に入ると綺麗な受付の女性が相手をしてくれた。

 「いらっしゃいませ、船をご希望ですか?船番号は確認されましたか?」


俺はおずおずと答える。

「はい、42番の船を購入希望です」


 「え?42番ですか?少々お待ちください」

受付嬢は奥の部屋に入って行った。ことのほか戸惑っているように見えた。暫くすると戻ってきて言った。


 「お待たせいたしました。42番の購入価格は、4,000金貨で御座います。よろしいでしょうか?」


4000金貨か・・・


(4000金貨ってえらい吹っ掛けて来たわね。落とし処は2000かしら・・・って貴方そのまま買うつもりなの?)

「解りました。其れでお願いします」


 「それならば・・・って えええーーーー? 少々お待ちください!」

受付嬢は本当に吃驚して慌てて奥の部屋に行った。


「キュリアあのー、如何なってるの?」

キュリアは呆れた様に言う


 「貴方の馬鹿さ加減に吃驚したんでしょ、もうお手上げね」


其処まで言わなくても・・・










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