第30話 王国からの使者

「ケミン様、ジェンナーの精霊師から通信がきましたの。王国が使者を此方に送るとの事ですの。到着の予定は、八日後の昼だそうですの」


「何で王国から使者が来るの?」

 「ケミン様、キュリア様、ベル様を王都にお迎えし婚姻の儀を執り行いたいとの事ですの」


何で王国が俺たちの結婚式をするんだ?てか結婚確定に為ってるのは何でよ?

頭の上に?がいくつも出てきているようだ。


とりあえず、全員集合!

俺は、リビングに全員を集めた。


俺は王国(王都)に行くのは極力避けてきた、何故かって?ジェンナーの街に顕現体で行っただけで騒ぎになったのに王都なんて行ったら大騒ぎになるのは目に見えているからだ。


それが向こうから攻めてくるなんて・・・

「ラヴォージェ・・・行きたくないな・・・何とかならないか?」


 「逆にこう考えては如何ですか?使者が来て一緒に王都に行けば護衛も有るし、騒ぎになる事はないかと、まあパレードくらいはするでしょうが・・・」


 「其れに此処では式も挙げられませんし」

「前の広場でやればいいだろ?」

 「ケミン行かないの?け・結婚式だよ」


キュリアは勿論、乗気で真赤になって結婚式・結婚式と呟いてる、ベルは俯いたままだ。此方も顔から湯気が出そうだな。


「抑々、何で王国が俺達の結婚式を行うんだよ?てか俺、結婚するって発表したっけ?」


「「「えーーー?今更それ言うの―――?」」」

全員から突っ込まれた!そう言われるとは思ったんだけどな・・・


 「キュリア様はケミカリーナ王国の初代国王です。六百年経ってやっと結婚するのですから、王国が婚姻の儀をしたいと言うのも尤もな事でしょう。然も国教の女神ですから猶更です」


ラヴォージェの正論攻撃・・・ダメージを受けた体力が30%減少した・・・

 「ケミン君、昨夜僕にあんなことしておいて結婚してくれないの?」


ベルの俯き真赤上目づかいもじもじ攻撃炸裂・・・ダメージを受けた体力が30%減少した


パッカーーン!痛いよキュリア!体力が10%減少した。


 「あんな告白しておいて、け・結婚式しないつもりなの!?」


キュリアの地雷を踏んだ自業自得攻撃炸裂・・・体力がゼロになった・・・ガクン

他の花嫁候補たちも一斉にジト目攻撃してくる・・・今回は流石にハニーの擁護も無いよ・・・




「結婚式をしたくない訳じゃ無いよ、王都で結婚式を挙げたら大騒ぎなるのが嫌だし、花嫁さんは、キュリアとベルだけじゃないもの此処にまだ来ていない花嫁さんだって居るんだよ?式を挙げるなら全員一緒が良いんだよ。花嫁さん皆、平等なの・・・」


俺の持論、皆平等を掲げる、途端に皆の目がウルウルし始めた。

 「私も結婚式出来るのか」


 「ん、やっぱりケミン様にゃ」

 「私恥ずかしいですの」

 「あぁぁ、ケミン様」

 「「私達はケミン様に従います」」


皆頬を赤らめ嬉しそうに言った。やっぱり、皆言わなかっただけで結婚式ってしたいんだなと思った。


 「ケミン様、それなら大丈夫だと思いますよ」

ラヴォージェが言う


 「婚姻の儀の日付を決めるのは、ケミン様とキュリア様ですから、今回使者が来るのは、王国が準備して良いかの許可を貰うためだと思います」


「其れは早く言おうよ!行ったら直ぐに結婚式だと思ったよ!」












あれから7日目の夕刻にまた、ジェンナーからの通信が来た。


 「ケミン様、今日の昼にジェンナーへ王国の使者の方々が、到着したそうですの。明日の朝ジェンナーを出発し此方に向かうとの事ですの」


「明日の朝出ると昼過ぎに船着き場あたりかな?誰か迎えに行かせた方が良いかな?」


 「まあ一本道ですから、迷う事も無いでしょうが、エルフを向かわせましょう」

「ラヴォージェ、宜しく頼むよ。クララ本当にありがとう」


 「ケミン様の御役に立てて嬉しいですの」

本当に嬉しそうにニコニコしている。ラヴォージェは、畏まりましたと言って出て行った。


夕食と風呂が終わり、リビングで歓談する。

俺がソファーに座ると何時もの様に子猫ラーニャがちょこんと座り俺に凭れ掛ってくる。子猫ラーニャ可愛すぎだろ!


俺が軽く自分の太ももを叩くとコテンと頭を乗せて上目遣いで見てくる。頭を撫でろって催促されてるな。


頭をゆっくり撫でてやると目を細めてサイレントニャーをしている。めっちゃ可愛い!


 「ケミン君。ラーニャちゃんがホント好きだよねぇ、僕、少し妬けちゃうな」


ベルが、少しむくれた様に言った。この子猫の可愛さは認めるが、愛は平等ですよ!

 「ケーミーンー!今日は私の番!」


キュリアがわなわな震えながらこっちを見て言った。そうだった。夜のお仕事が有ったんだ・・・

俺は、子猫を起こすと立ってキュリアの所に向かう。


「キュリア行こうか」

俺はキュリアの手を引いて行く、毎回、小さな子供がお姉さんを連行する図みたいに為ってるが・・・


自室に入るとエルフメイド達が挨拶をして出て行く。




二人で寝室に向かい

「キュリア、服を脱いで仰向けに寝て」


キュリアは、服を魔法で消すとベッドに仰向けになった。今回はちゃんと下着を付けてるな!


俺はキュリアの横に正座してお腹に両手を当ててエナジーをゆっくり少しずつ流した。

 「ちょっ、ケミン、なにこれ、前回と違う・・・んんんんぅ」

キュリアが真赤な顔をして言ってきた。


「え?やってる事は前回と一緒だよ?痛いの?」

どう見てもお医者さんが触診している図にしか見えない。淡い青白い光が掌から出ているのも一緒だ。


 「違う、痛くないけど・・・だ・め・・・」

(あぁぁぁ、みんなが凄いって言ってたのは此れの事だったの・・・こんなの耐えられない)


「駄目って言われても・・・ラヴォージェに止まるまでエナジーを流し続けて下さいって言われてるんだよ」


キュリアは、両手で顔を隠し荒い息をしてる、かなり辛いのかな?時々、「うっっ」とか言ってるし・・・


今回も40分ほどでエナジーが止まった。準備文様はまだ出ていないな。

「キュリア、終わったよ。大丈夫かい?」

 「だ・め・・・動け・な・い・・・」


そう言うとキュリアは脱力して気を失っていた・・・


これ大丈夫なのか?・・・


俺は布団を掛けてあげて、ジャージに着替えて布団に潜り込んだ。












今日は、王国の使者が来る予定になっている。朝から迎賓館では、使者を迎え入れる準備が進められていた。使者を迎えるエルフ達も選抜され船着き場に行ってもらっている。


俺達が、迎賓館のリビングで寛いでいるとラボージェから声が掛かる

 「ケミン様、使者が到着したようです。応接の間に御案内しておきます」

俺達が、応接の間に入り席に着くと使者の者は、跪いて言う。


「ケミカリーナ様、キュリア様、この度は我々を向かい入れて頂き誠に有難う御座います。私は、マイケル・ドルトンと申します。ケミカリーナ王国の宰相をしております。以後お見知りおきを宜しくお願い致します」


ぴしっとした礼服を着ていて格好良いな。ロマンスグレーの髪の毛で髭も蓄えている。護衛は五人か。

宰相なら王国のNo.2だな、さすがに使者で国王は来ないよな・・・


「其処まで畏まらなくていいですよ。ケミンと呼んで下さい。そして、お掛け下さい。それで、今回の来訪の目的は何でしょうか?」


宰相はソファーに座るとメイドより紅茶が出される。俺は一口飲んだ。宰相も紅茶を口にする。そして話し始めた。


 「はい、先日、我々の精霊師達が、キュリア様とケミン様の星天空の婚約の儀の通信を受信したとの報告が有りました。そこで、王国にて婚姻の儀を行いたいと許可を頂きにまいりました。何卒我が王国にて婚姻の儀を取仕切りさせて頂きたくお願い申し上げます」


あの告白って全国放送だったのかよ・・・しかも星天空の婚約の儀って名前まで付けられてるし、めっちゃ恥ずかしいな。

俺もキュリアも顔が真赤になってしまった。


「あの、結婚式を王国で挙げるのは、良いのだけれど妻に為るのはキュリアだけじゃないのです。ここに居る婚約者達の他に四人増える予定なんです。それでまだ時期が決められないのだけれど宜しいですか?」


 「はい、全く問題ありません。国王様より、必ず我が国で婚姻の儀を挙げる許可を頂くようにと厳命を受けて全権委任迄されております。時期が決まりましたらクララウラ様から通信を頂ければ、準備を始めます。」


「解りました。結婚式の取り仕切りお願いします。まだ全ての婚約者が揃っていませんので確実な時期は言えませんが、凡そ一年後を考えています。確実な時期が決まりましたらクララより、時期を通信しますね。宜しくお願いします。」


「有難う御座います。これで私の面目も立ちます。女神様と精霊王様の結婚式ですから盛大になると思います」


「女神様は「精霊王は、やめて!」」


キュリアと俺は同時に言った。恥ずかしいなぁ


皆に笑われてしまった・・・




「今日は晩餐会の準備もしてありますので、この後ゆっくり過ごしてください。詳しいことは、ラヴォージェに聞いてください。それでは失礼します。」

俺は応接の間を後にした。




その夜、盛大な晩餐会は開かれ、次の日の昼には、使者達は帰っていった。










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